第5話 物事は持ちつ持たれつ
どうも円男です。
特に書くことも無いので続きをどうぞ。
「いやー、本当に助かりましたよ。ありがとうございます」
俺は乗っている馬車の御者をしている男にお礼を言う。
「いえいえ。そこは持ちつ持たれつ、ですよ。ナナシさん」
そう返す商人らしい格好をした小太りの男は『ビリー・オルガド』と言い、彼との邂逅は別に特筆すべき事ではないので省くが早い話、俺とレンが歩いていたところに運良くビリーさんの乗った馬車が通りがかったので、乗せていって欲しいと頼んだのだ。普通は怪しまれて逃げられたりするところだがビリーさんの言葉から分かるように、見返りとして銀で出来た雀の形をした置物(1.5kgくらい)をレンからは見えないように御者席の空いている場所に置いたら訝しげな顔もしていた彼もあら不思議、ニッコリ笑ってどうぞどうぞと乗せてくれた次第である。
「優しい奴で良かったね。普通なら無視されるところだよ」
「そうだね。四日も歩くことにならなくて良かったよ」
俺とビリーさんのやり取りを知らないレンは暢気なものだが、変なタイミングで俺の錬金術もどきがバレなくて良かったと良い方向に考えることにして、俺はゴロリと荷物の少ない荷台に寝転がった。
「ビリーさん、この速度だとどれ位でマレの村に着きそうですか?」
「何も無ければ今夜どこかで野営して明日の昼頃には到着しますよ」
「では私達は先に休ませていただきます。野営を張る場所に着いたら起こしてください。テントを張るぐらいなら手伝いますから。ああ一つ言っておきますが彼女は剣腕族でも屈指の強さを誇りますので私の荷物を漁ろうなどとは考えぬようお願いしますよ?お互いのためにもね」
こんなことを一方的に言って目を閉じる。俺も図太くなったものだ。
何故かは分からないがこちらに来てから感情の起伏が小さくなって神経が図太くなったような気がするのは間違いではないだろう。まあ考えても原因は分からないだろうし、自分の身体に何か前とは違う部分があれば全部あの白の世界のせいにしようと思いながら意識は沈んでいった。
何なんだよこの男は……いきなりマレの村まで乗せて行けと言ってきたかと思うと1kgは優にある銀の置物をポンと出しやがるし常識の無いどこかのお坊ちゃんかと思えば剣腕族の強い姉ちゃん連れて荷物を漁るなと言う。プライドの高い剣腕族が何も言わずに付き従っているところを見ると凄腕の冒険者か何かか?いやそれにしては身形が整いすぎてるし線も細すぎる。……本当に何なんだよコイツ。厄介なモン拾っちまったぜと溜め息を吐きながら空を見上げても雲一つ無い青空が広がっているだけだった。
まあいいか、この銀製の置物も売れば半金貨1枚以上はあるだろう。馬車に乗せるだけでこれだけの大金が手に入ると思えば安いもんだ。
「ナナシさん、着きましたよ。起きて下さい」
肩を揺さぶられ目を覚ますと、そこにはまるっとした男の顔がドアップで俺の視界を奪っていた。殴りそうになったのは仕方が無いはずだ。
「ああ、野営地に着きましたか?ご苦労様です。レン……剣腕族の彼女は何処です?」
ビリーさんに連れられて馬車から降りるとレンの姿は無く、まさか逃げてないよなと思いながら目の前で夕食を作るビリーさんに尋ねる。確かに俺も腹が減ったな。そういえば飯はあの銀の雀に含まれているだろうか?
「彼女なら野営地に着くなり足早に向こうの方向へ行きましたがあなたの指示ではないので?」
……マジでか。これは本当に逃げられた可能性も加味していかないと不味いな。
「ええ、そういえば見晴らしは良さそうな場所ですが一応何がいるか分からないのでこの辺りの探索を頼んでたんでした」
少し苦しい言い訳になったが筋は通っているので大丈夫だろう。もしレンが帰ってこなければ剣腕族の彼女ですら苦戦するまたは勝てない相手がいるかもしれないとでも言って早めに出発させればいいか。そんな帰ってこないこと前提の思考をしていたら後ろから声が聞こえた。
「今戻ったよ」
「おかえり、どうだった?」
「特に何も無かったよ。ついでと言っては何だけど夕飯も獲ってきた」
帰ってきたレンに信じてたよなんていう事を思いながら目配せすると、俺の考えを酌んでくれたのかまるで本当に頼んでいたかのような返答をしてくれた。どうやら彼女は夕飯を獲りに行ってくれていたらしく、その手には野ウサギだろうか?そんな感じの小動物が三匹ほどぶら下がっていた。疑問符を付けたのは何か判らないからだ。だって俺は角の生えた兎なんて知らないし。この辺り本当に前の世界と違うんだなあと暢気に考えていたが今からそれが俺の腹に入るのかと思うと少しどうしようかと思った。この世界での常食が俺にとって毒である可能性が拭えないし。まあ腹減ったから食べるけれどもね。
うん、とりあえず角付き兎は美味かったとだけ言っておく。味は何か白身魚を唐揚げにした感じの味がした。そして俺にも毒ではないという事が分かった。毒だったらどうしたとか野暮なことは聞かないで欲しい。美味くて腹が膨れた。それでいいじゃないかと俺は思うんだ。
「明日は皆が起きて朝食を食べた後出発しますがよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。ではお休みなさい」
腹が膨れたせいかここに着くまでずっと寝てたのにも拘わらず、目を閉じると俺の意識は簡単に眠りの魔力に屈した。
どうでしたでしょうか?
相変わらずの低クオリティで申し訳ありませんが……。
次はやっとこマレの村に着きます。