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第4.5話 買主は貴族

 お久しぶりです円男です。

 風邪やら早朝勤務やらでちょこっとばかり死んでました。

 この場所に入れられてどれだけ経っただろうか、一年までは数えていたんだけどね。


「おいっ!奴隷共、エサだぞ」


 今月の世話係の男が吠えている。コイツは確か『ボロゾフ』とか言ってたか?そんな名前のやつだ。口は悪いし声もでかくて五月蝿いけど世話係の中じゃ一番あたし達奴隷のことを考えてくれてるような気がするから別に嫌いではない。


 それにしても本当にここは居心地が悪い。牢屋なんだから当然か?まあいいさ、あたしの末路なんて分かってる。剣の折れた剣腕族の女なんか誰も好んで買ったりなんかしない。性処理の玩具が欲しけりゃ可愛い人族でも買えばいい、労働力が欲しけりゃ獣人の男を買えばいい、中途半端に筋肉の付いた適齢期間近の売れ残りなんて誰が買う?誰も買わないさ。結局あたしはただの穀潰(ごくつぶ)しさ。だからもう何年か経って牢屋の数が足りなくなったら殺されて終わる。そんな人生だと思ってた。


「おいお前、さっさと出ろ」


 なんだい?早くも牢屋が足りなくなったのか?


「やっとあたしもお払い箱かい?」


 その時は来たら来たでいくら覚悟してても不安になるらしい。今のあたしがそうだ。気丈に振舞ってみても心の中ではもう一人のあたしが死にたくないよと泣き叫んでる。それでも表のあたしは出て来そうになるもう一人のあたしを演技で抑えながら「ついて来い」と言って前を歩くボロゾフの後ろを追っていくしかなかった。


「旦那、申し訳ねえ。獣人はみんな売約済みで有角人種はガキしかいなかったんだ。あとはこいつくらいしか……」


 ボロゾフについて行くと、そこにはもう一人の男がいた。高そうな服とボロゾフが旦那と呼ぶところを見ると客だろうか?話が見えないがボロゾフの言葉からだと護衛でも探しているのだろう。でも残念だったね?あたしは剣の折れた剣腕族さ。今じゃその辺の村娘と変わらないよ。


「彼女は?」


 目の前の貴族らしい男はボロゾフにあたしのことを尋ねる。あたしが何かを知らないみたいだね。


「こいつがさっき言ってた剣腕族の女でさ」


 なんだ知ってたのかい。それならどうせ買われやしないだろう。そう決め付けて牢に戻ろうかと思ったのと同じくらいに少し考えていた男が口を開いた。


「別にかまいませんよ。彼女が問題なければですが」


「あ、あたしは別にかまわないよ」


 今なんと言った?構わない?それは買うということだろうか。ボロゾフが早くしろといった目でこちらを見るもんだから混乱する頭を無理やり動かして答える。そもそもあたしに拒否権など無いからね。


「だ、そうなんでどうしやす?」

 

「それならお願いするよ。名前は?」


 どうやら本当にあたしを買うらしい。とんだ物好きがいたもんだよ。何に使うつもりかね?


「レン」


 もうどうにでもなれと少しぶっきらぼうに答える。そして言ってからしまったと思ったが遅かった。普通の貴族ならここで無礼だと殺しても何らおかしくないからだ。


「そうか。よろしくレン」


 しかし男は怒るどころか笑みすら浮かべてあろうことか手を差し出した。握手、であっているよね?


 何か別の意味があっただろうかと考えながらあたしは(なら)うように手を出す。どうやら握手であっていたらしく、男はそのまま手を握り軽く上下に振るとすぐに手を解いた。 


「それじゃ水筒は渡します」


 金の代わりだろうか?男は水筒と(おぼ)しき銀で出来た物を男に三つ手渡した。


「だ、旦那?こここれは?」


 当然のことながらこれにはボロゾフも驚いたらしく慌てているようだ。聞いていた今の状況が本当なら飲料水と銀などという貴金属は元より鉄などの丈夫な金属ですらとても貴重なはず。それこそ三つなどといったらあたし達みたいな一番安い奴隷なら三、四人ほど買えてもおかしくはない。それをポンと出せるなんてドコの人間だい?見たところあたしと変わらないくらいだろうし、他にも奴隷を買うのだろうか。

 

「レンの代金だけど?いらない?」

 

 どうやらあたし一人分の代金であったらしく、本当にこんな役にも立たないあたしをどうするのか逆に申し訳なくなってしまった。


「いいいえ。大事にもらっておきます」


 一方ボロゾフは慌てながらもほくほく顔で銀で出来た水筒を受け取り、お返しとばかりにあたしを男の方へ押し出した。

 

「じゃあ行こうか」


 そう言ってまた手を差し出す男に少し不安になりながらついていった。











「それで、あなたは一体何処の貴族なんですか?」


 奴隷収容所を出てすぐ、慣れてないであろう敬語を使いながらレンが尋ねてきた。やっぱり俺は貴族に見えてたらしい。


「俺はただの平民だよ」


「そんなはずがないだ……いやないではありませんか?」


「敬語苦手なら別にいいよ」


 この人実はアホなのかもしれないなと思いながら返す。


「そんなわけにはいか、いきません」


「それじゃ敬語で喋るなって命令すればいい?」


 俺がそう言うとレンはまた百面相しながら諦めたように項垂(うなだ)れて口を開いた。


「分かったよ。あんた見かけによらず意地が悪いね?」


 見かけによらずってどう見えていたのか其処のところ詳しく話してもらおうかな。


「レンにはどう見えてたの?」


「良い所のお(ぼっ)ちゃんにしか見えないよ。貴重な銀製の物をポンと出すし、奴隷をあんまり差別していない様に見えるし、『イヴネス』かどこかからかい?」


 何やら国っぽい名詞が出てきたけど『イヴネス』という国は奴隷差別が無い?少ない?かは分からないがそんなに酷い国ではなさそうなのでその国でも目指そうかと思う。


「多分違うんじゃないかな?そういえば自己紹介をしてなかったね。記憶喪失の旅人『ナナシ』だ。改めてよろしく、レン」


「なんだ、あんた記憶が無いのかい?」


「あんまり気にしないでよ。それじゃあそのイヴネスに向かってみようか。ここからだとどれくらい掛かる?」


 凄く気まずい雰囲気になりそうだったので明るめに言って話題を変えることにする。錬金術のことはいつ言うかな?まあこれは後々だな。


「ここからなら歩いて一月(ひとつき)ってところだね。見たところ丸腰で手ぶらみたいだし『マレ』の村で荷物を整えようか」


 一ヶ月か……うん無理。


「マレの村はどれくらい?」


「この道に沿って歩いて四日ってところだね。その後は小さい町や村を経由しながらイヴネスに向かえばいいと思うよ」


「じゃあそうしよう」


 危機感とか色々足りないと思うがどうしようもないしな。行き当たりばったりでいくしかないし。


「それじゃあとりあえず。はい、レンの水筒」


 久しぶりに外に出たのかキョロキョロと周りを気にしてるレンに見えないように水の入った水筒を練成して渡す。なぜか凄く驚いてたがそこは気にしない方向で、というか俺は水筒を何個持ってるのかって話だよね?


 そんなことを思いながら未だ呆然としているレンを尻目に、俺はマレの村があるらしい方向に歩き始めた。 


 ひさしぶりの投稿なのにこのクオリティ……。

 誰か私に上手な文章が書ける何かを下さい。


 今回は次の行き先と自己紹介的な感じですね。

 次はマレの村に到着するところと、その道中にあった事でも書きます。


 どうでもいいですが国の名前は英語だったり何だったりします。誰か適当な意味の国の名前とかメッセージかなんかで送ってください。結構な確率で採用されるんで。


 ちなみに今回は『イヴネス』と『マレ』が出ましたが、これは英語の evenness(イーブンネス=平等、均等)と、ラテン語かなんかの mare(マーレ=海)からきています。合ってるかは知りませんが(笑)間違ってたら鼻で笑ってやってください。

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