第2話 見知らぬ場所
奇跡の三日連続投稿。
普通ですね、すいません。
「っは!?今のは……夢?いや―――」
男は跳ねるように飛び起きると、先ほどのことを思い出しながら言葉を紡ぎ、そして止めた。
「そうでもないみたいだな」
周りを見回しながら言う男の目には辺り一面の緑が広がっていて、夢か現か、少なくとも自分が住んでいた場所の近くにはこんな場所は無かったと一人思う。あの白い世界での一件があったからか、それほど取り乱すこともなくそこに立った。
「とりあえず、ココは何処なんだ?」
白の次は緑の世界かよと愚痴っているが状況は変わらないということに落ち着き、男は当ても無く歩き出した。
男が当てを探して数時間歩いただろうか、男は歩けども歩けども草や岩しかない景色に飽きて来たのかはたまた疲れたのか、おそらく両者だろうが男は近くにあった高さ1mはありそうな大きめの岩に腰掛けた。
「さて、どうしたもんか……」
男は疲れきったように大きく息を吐くと、岩の上に仰け反るように寝そべった。
目的地のある旅ならまだしも今回はゴールがあるのかすらわからない途方もない旅である。疲労が蓄積するのは仕方がないことではあるが、大の大人が岩の上で寝そべっている姿は多分に漏れずシュールだと思う光景だろう。極め付けには体を伸ばしたせいでスーツのズボンからはみ出たカッターシャツだ。凄くだらしがない。まあ、誰も見ていないといえばそれまでなのだが。
「あぁー、こんな硬い岩じゃなくてふかふかのベッドの上で寝てーよな」
そんなことを言いながら下の岩をぺしぺしと叩く。
「……ん?」
岩を叩きながら男は違和感を感じた。
「やわらかい?」
違和感の正体を見ようと、男は下を見る。
「なんだコレ……ベッドか?」
そこにはなぜかベッドがあった。灰色の骨組みに緑色の敷布団が敷かれたベッドの上に寝そべっていたのだ。
「……どういうことだ?」
少しパニックになりながら男は周りを見回す。しかし周りは相も変わらず緑の草原である。しかし、男の周りが多少変化していた。まず寝そべっていた岩だがなぜかベッドになっており、今それについて考えているところである。次に周りに草が無くなり茶色の地面が顔を出している。この二点だが、仮に何らかの事態で岩がベッドになったと考えると、草はこの敷布団だろうか?そうなると次は何らかの事態の何らかを考える必要があるわけだが、男はこのような事象を起こす言葉を一つ知っていた。
「錬金術……ってやつか?」
錬金術、狭く見れば科学的手段で卑金属を貴金属に変えること。広く見れば金属以外の様々な物質、果ては人間の肉体や魂をも対象としてそれを完全なる存在に練成する試みのことを指す。その他にも賢者の石や不老不死など色々掘り返せば限が無いのでこれくらいにしておく。
「まさか……な」
そう思いながらも男はベッドから下りて手を当て、そして思い浮かべる。机になれと。
「……本物だ」
この言葉からも解るように男の試みは成功した。男の目の前には先ほどのベッドではなく石でできた頑丈そうな机があった。なぜか敷布団はそのままで地面に落ちていたが。
「しかしこんな凄い能力があってもな……下手したら俺ここで野垂れ死にそうなのに……悩んでても仕方ないか、とりあえず歩こう」
一通り色々創って遊んでみた後、宝の持ち腐れもいいところだなどと思いながら、男は目的地を捜してまた歩き出した。
再び歩き出して数時間、男は手頃な大きさの岩を見つけて今度は椅子に練成して休憩していた。
「……疲れた」
想像に易いと思うが、結論から言えば男はまだ草原にいた。一応当てのない旅は終わり、一時間ほど前に見つけた街道らしき粗末ではあるが整備された道を辿って歩いているところだ。道を見つけて初めに考えたのは左か右か、どちらに行けば街に近いかだったが分かるはずもなく、勘を頼りに道を進んで数時間である。
「頑張って今日中には人のいるところに着きたいな。水飲んだら出発するか」
そう言って懐から鈍い光を放つ銀色の何かを取り出すと、蓋を開けて水を飲み始めた。それは一応水筒であるのだが、サイズと形も相まってウイスキーボトルにしか見えない。どうやって水筒と水を手に入れたか?水筒は先ほどのベッドになった岩で色々練成したときの副産物であり素材は銀である。水は試しに気体も練成対象にできるのかと試した結果である。解ったことは―――基本的に何でも練成対象になりえる(おそらく)。物理法則を結構無視する。生物は対象、結果共に不可。練成後は元となった物質の名残が入る?(要勉強)。前目にいたっては想像力によって変動がありえるため。などなどが判明した。
「よし、行くか!」
水を飲み終えた男は両手で蓋を開けた水筒を挟みながら内部に水を練成し、蓋を閉めると再び街を目指して出発した。
今回は自分の能力に気付くお話。
次で第一村人発見!となります。
錬金術に関してはwikiの冒頭部分を参考というかほぼそのまま書いたのであんまり突っ込まないでくれると嬉しいです。
あと、植物も生物じゃねーか馬鹿野郎ってのも勘弁してください。




