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第20話 貴族サマ襲来

 お久しぶりです円男です。

 遅れたのには理由があってですね?

 仕事から帰ってきたら床を這ってるLANケーブルに足引っ掛けてあべしっってなった時にルーターの親機が床でボーンなったもんですから修理に時間ががががってな訳です。

「んで、どうしてこうなった?」


 現在俺とレンは二十人程の何処かの兵士らしき奴等に囲まれ、その槍の穂先を向けられていた。流石にこの人数はレンでも無理そうだ。いや、もしかしたらレン一人なら逃げられるかもしれないが今は足手纏いの俺がいるしな。


 今の所敵対しているような感じは無く、何かを待つようにただ包囲しているだけだ。


 その何かが来るまでに一度この状況を整理しようか。











「そこの二人、止まって両手を挙げろ」


 マレの村を出発してから早くも五日。レン曰く後二日程歩けばその日の昼過ぎには次の村だか町だかが見えてくるそうだ。


 今日までは(えら)く順調に旅路を歩めていた。特に例に挙げる事も無い程順調にである。魔物の襲撃があったわけでもなく、食料が尽きて倒れそうになったわけでもなく、ただただ順調だったんだ。この全身フル装備の兵士共が邪魔しなきゃな!


「そこの男の方、早くしろ!」


 俺は小さくバレない様に溜息を吐き、渋々両手を頭の上に乗せる。だって長々と手を挙げてるのも疲れるだろう? 何時まで挙げとけばいいか分からないし抵抗の意思さえ見せなけりゃおそらく大丈夫だろう。


「それで、ただの旅人である平民を拘束して何か御用ですか?」


 槍の先を向けられて十分位経っただろうか、いい加減俺も苛々してきたので皮肉を目一杯込めて言う。だが兵士達は完全無視を貫いており、逆にこっちが空しくなってくる。


「ナナシ、どうするんだい?」


「さぁ? とりあえず話しを聞いてみようとは思ってるけどな。つーか逃がしてくれそうな雰囲気でもないし、少しの間は大人しくしてよう」


 レンもそろそろキテいるようで、米神に立った青筋ををピクピクさせながら聞いてきた。この人数では分が悪いから相手の用件が分かるまでは待機の予定だ。


「おい、もうじきパトリシア様がいらっしゃる。平伏して待て」


 は? パトリシアが誰かは知らんけど何で顔はおろか名前すら知らない人間に頭を下げないといけないのかこの世界は……。いやどうせまた貴族サマの我が儘だろう。


「レン、服を出せ」


「え? あぁ、あれだね?」


 兵士の言葉を半ば無視し、レンにバックパックの中から錬金術で直したスーツとカッターシャツを取り出してもらう。いやー直しといて良かったな。一応この世界以外の物であるから残しておきたい気持ちがあったんだよね。因みに今までは錬金術でシーツを普通のシャツに錬成して着ていた。じゃないと着替えが回らないし、下はスラックスっぽいのを三枚創ったからそれを穿()いてる。


「貴様等! 勝手に何をし……て……」


 服装を整えていると先程から煩かった兵士も途中で言葉を詰まらせている。そしてその間に俺は着替え終えた。下はそのままだが、上はパリッと……はしてないけど確りとした生地で出来たスーツである。兵士共のこっちを見る目が少しばかり変わった気がする。


「貴方達、少し騒がしいですよ? 何をしているのです」


 鈍い銀色で身体を覆った暑苦しい鉄塊共の間から、穏やかだが何所か威厳のある声が響いた。声から女だろうと思うがこの声の主がパトリシアだろうか? そう思っていると、鉄塊共が真ん中から二つに分かれ、その間から質の良さそうな服を着た妙齢の女性が歩いてきた。


「はっ、怪しい二人組を発見しましたので拘束して話を聞いておりました」


 兵士が少し焦りながらもパトリシアと思しき女性にこれまでの経過を話している―――つもりか?


「どうも、(わたくし)ナナシと申します。私は従者の彼女と共にマレの村からイヴネスに向かう所だったのですが、何故か彼等に拘束されてしまって。貴女の御命令でしょうか?」


 そう言うとパトリシアはその綺麗な顔を少しばかり歪め何度も俺に文句を言ってきた兵士を睨み付けた。ざまぁみやがれ。


「隊長さん、どういうことかしら? (わたし)は貴方にそんな事を頼んだ覚えはありませんが、何か理由がお有りかしら?」


「それは、この者共が怪しく―――――」


「少し待っていただけますか? 先程から私達の事を怪しい怪しいと申されますが何がどう怪しいのかお聞かせ願えますか? 教えていただければ私共もこのような事が無くなるでしょうし、貴方もこの方に申し訳が立つのではありませんか?」


 言い訳しようとしたようなのでそれを潰して更にプレッシャーを掛けてやる。というかコイツ隊長かよ。なんて残念な護衛隊だ。隊長がこんなんじゃ程度が知れるぞ。


「いえ……あの……よく考えてみましたらあまり怪しく無かったかもしれません」


 兜のせいで顔は見えないが隊長サマは情けない声を震わせながらそう答えた。


 ……それにしても何言ってやがんだコイツ? そんなんで許されるとでも思ってんのか? 神や仏が許しても俺が許さん。折角いい気分で旅を満喫してたのに……コイツだけは許してやらん!


「それでは貴方は怪しくも無い平民に突然大人数で槍を向け、脅迫したということですか?」


「い……いや、そんな事など無い!」


「そうですか? 私は突然槍を持った兵士達に囲まれてとても恐怖を覚えましたが、その責任は何方(どなた)が取ってくださるんでしょう? 謝罪も何も無くただ帰れですか?」


 これだけ言えばパトリシアが反応してくるだろう。見る限りでは俺の話も聞いていたし貴族サマでは無さそうだ。そして貴族サマでないからこそ、平民からの評価を気にする筈。本当に貴族サマでなかったらだが、もし貴族サマであればどうしようか? とりあえず反応見て考えるか。


「それに関しては私が責任を持ちます。この度は我が家の護衛隊がご迷惑をお掛けしました」


「貴女は?」


 平民に頭を下げれる貴族か善い人だな。とりあえず自己紹介してもらおうか。十中八九パトリシアだろうが一応な。


「私はイヴネスで侯爵をしています『ケネディ・コールマン』の娘で『パトリシア・コールマン』と言います」


 自己紹介をしているパトリシアを良く見る、少しカール掛かった淡い水色の髪を腰あたりまで伸ばしていて、少し垂れた髪より濃い群青の瞳は何か人を安心させる魅力がある。服は貴族サマが着ていそうな豪華で煌びやかな金やら真紅(しんく)の様な色をした成金趣味満載な服ではなく、白いワンピースに近いドレスを着ていて、布が肩まで在るため露出は少なく、正しく深窓の令嬢といった女性に見える。


「ご丁寧にありがとうございます。私はナナシ、剣腕族のレンと共に記憶を探す旅をしております」


 俺が礼を言いながら頭を下げると、レンも慌てた様に頭を下げる。


「貴方は記憶が無いのですか?」


「はい。それほど答えられる事も無いのであまり聞かないでいただけると嬉しいんですが……。ところでパトリシア様は何故この様な僻地(へきち)まで?」


「そうでした!? これを見て下さい」


 そう言って彼女が大事そうに布に包まれた何かを取り出しそれを俺達に見せる。


「へぇ、細かい細工だね。銀ですか?」


 おいレン、敬語が中途半端だ。俺も人のことは言えないが―――ってそうじゃない! 何でソレが此処に在るんだ!?


 彼女の手に乗っていたのは、歩くのが嫌だったが為に馬車に乗せてもらおうと創ってビリーさんに渡した銀製の雀の置物。


「イヴネスにある『ガレリア商会』の支店に持ち込まれた物らしいのですが、造形も細かく何より純銀ですし。二半金と二十二銀で買い取りました。その時に聞いたんですがこれを持ち込んだ商人は『レトニア』を通ってイヴネスに来たらしいので彼が来たであろう道を逆から辿っているところです。こちらを作られた方に一目でもお会いしたくて」


 何か知らない名前が色々出てきたのについては置いといて、何かパトリシアさん頬を若干染めてくねくねしてるんだけど正体バレたらアウトだよね。いやでも貴族を謀ったとかいって因縁付けられるのも嫌だし、どうしようか。


「そういえば貴方方はマレの村から来たそうですが何かご存じありませんか?」


「申し訳あり―――――」


「なぁ、あれってもしかしてあんたが創ったんじゃないかい?」


 考えた末とりあえずこの場を去るという結論に達したので適当に終わらせようとしたんだが、一人しかいない身内が裏切ったでござる。まじで何してくれてんだ!?


「ナナシさん? どういうことでしょう? 説明していただけますよね?」


「……はい、喜んで」


 後ろを振り返って一言言ってやろうと思ったがそれをする前に俺の肩に手が置かれた。軽く叩かれた筈の肩には今まで感じたことの無い重みを感じ、ただ首を縦に振ることしか俺には出来なかった。


 今回は新しい人が出てきました。

 他の人の小説読んでると何だこれって毎度自分で思うクオリティで申し訳ありませんがこれからも温かく見守ってやってください。

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