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第18話 あたしは甘いね

 どうも円男です。

 では第18話をどうぞ。


 店に入ると客か店員かは分からないが、俺達と同年代くらいに見える快活そうな金髪の女性とレンが話していた。


「い、いらひゃいませ!?」


 ……俺何かしたっけか?


 俺が来た事に気付いた彼女は声を上擦らせながら挨拶をしてきた。どうやら店員だという事は分かったが驚かせるような事をした記憶も無い所か初対面である。


 服も今はその辺の人が着ているのと同じである。カーニスに破られちゃったし。下半身はスーツだが、そんなに異常に驚かれるようなほどでもない。始めの頃はパリッとしてたが今は所々擦り切れて汚くなってしまっている。


「あ、あのき、貴族様。きょきょ今日はどのようなご用件であられまするでございましょうか!?」


 本人は多分精一杯の丁寧な言葉を使っているつもりなのだろうが、テンパり過ぎて何言っちゃってるのか分からない感じになっている。


 まあそれは置いておこう。やっぱり貴族サマに見えますよーってのは分かったがどれだ?何がそう見せているか俺には分からない。


「あー店員さん?俺はほら普通の服着てるし貴族サマじゃないですよー」


 俺がそう言うと店員さんは半分泣きが入ってる状態でこっちをジッと見てきた。


「で、でも潮風亭に泊まってて何度か純度の高い鉄や綺麗な宝石(・・)の置物を売ったナナシ様でしょう?」


 ナナシ様って……。それは良いとして何で俺がやったこと全部広まってんの?


「多分そうだけど、それがどうしたの?」


 そう答えると、店員さんの目からぶわっと涙が溢れ出した。え?何コレ。


「うえぇぇぇん!やっぱり貴族様だぁ。きっと平民の服着て騙すんだ。それで少しでも粗相を働いたら売られちゃうか殺されちゃうんだ!?お父さん、お母さん、先に逝く親不孝な娘を許してください。ああ貴族様、私はどうなっても構いません。でも両親とこのお店だけはどうか、どうかぁぁ」


 うわぁ、面倒な娘だコレ。未だ(かつ)て見たこと無い位残念でメンドクサイ子だコレ。どうしよう。というかこう一方的に面倒だと腹立つな。目の前で地面に頭擦り付けてる娘を見ながら思う。


「レン、俺帰っても良いかな?良いよね?」



「ちょ、ちょっと待ちなよ。この子だって悪気があってこんな事してる訳じゃないしさ。ちゃんと話せば大丈夫だよ」


 レンはそう言って店を出ようとする俺の手を掴む。もし悪気があってやってるなら貴族じゃないけど無礼者って言って()っちゃっても良いよね。


「じゃあ俺店の外にいるから。金はお前が持ってるんだし適当に必要な物買って来てくれ」


「あっ、おいナナシ!」


 後ろで名前を呼ばれた気がするがこれ以上いると呆れと怒りで頭がどうかなりそうだったから無視して足早に店を出た。


 あぁーコレも全部貴族サマが悪いんだよ。もし仮にいつか万が一思いもよらない様な事が起こって俺が権力持つようにでもなったら潰してやるから覚悟しておけよ。











「あっ、おいナナシ!」


 なんか少し怒ってたかい?そう思い原因であろう店員の彼女を見る。


「あわわわわ、貴族様を怒らしっちゃった!?うわぁぁぁんやっぱり私売られちゃうんだ殺されちゃうんだぁぁぁ」


 勘違いで叫びながら泣き崩れちゃったんだけどどうしようかね?


「ごほっ、ごほっ、エダ騒がしいぞ。どうした」


 この状況をどうしようかと考えていると店の奥からどたどたと少し慌てたような足取りで五十歳位だろうか、立派な顎鬚(あごひげ)を蓄えた中年の男性が彼女の名前と思しきものを呼びながら出てきた。咳をしているところを見ると病気にでも(かか)っているのだろうか。


「お父さぁぁぁん!私貴族様に失礼な事しちゃって売られちゃうの。うえぇぇぇん!」


「ごほっ、すまないがお嬢さん。状況を教えてもらえるかな?」


 この店の主人であろう彼はこめかみを押さえながら溜め息を一つ吐き、こちらに説明を求めてきた。あたしもあまり飲み込めていないんだけどね。


「先に聞いておきたいんだけど、ナナシの名前が広まっているのは何か理由があるのかい?」


「ああ、お嬢さんがあの方の従者でカーニスを退治してくれた剣腕族の方でしたか。ナナシさんの話が広まっている事はこの小さな村では新しい事に皆敏感なのですよ。ごほっ、噂好きのジョリーというのがいましてな」


 なるほど、噂に尾鰭(おびれ)背鰭(せびれ)が付いて歩いたって話かい。仕方がないとはいえ面倒な事をしてくれたもんだよ。


「大体分かったよ。その()は噂のナナシが来た事に(えら)く緊張しちゃったみたいでね。泣き出してしまったもんだからナナシが相手をあたしに押し付けて店を出てっちゃったんだ。それを何か勘違いしてるんじゃないかい?」


「そうですか……。それは大変なご迷惑を。私が今この様な状態ですから娘が「店番は私がやるからお父さんは寝てて!」なんて言うものですからそれに甘えた結果ですね」


「まあ家族思いの良い娘じゃないか。それでナナシも待ってるだろうからそろそろ用件を済ませたいんだけど良いかい?」


「ええ、申し訳ない。して、本日は何がお入用ですか?」


「旅に必要な道具を一式。この店にある一番良い物で頼むよ」


 あたしがそう頼むと、主人は「分かりました」と柔和な笑みを浮かべ、店の奥に戻っていった。金は沢山ある。節約するに越した事は無いけど旅に持って行く物は出来る限り良い物でないと心配だからね。そこはナナシも分かってくれるだろう。






「こちらになりますが、どうでしょうか?」


 ドサッと目の前の机に置かれた品を見る。やはり海が近いだけあって種類も豊富だ。『グリズリー』の皮で出来た毛布に、馬や牛などの干し肉。後はランタンだね。しかも鉄製の丈夫な奴じゃないか。雑貨はこの位で良いだろう。


「うん、感謝するよ。それで幾らだい?」


「それなんですが毛布が二枚で銀貨四枚と半銀貨三十五枚、干し肉が半銀貨四十二枚、鉄のランタンが銀貨十三枚になります。合わせて十八銀二十七半銀ですが今回は十八銀だけで結構です。ナナシさんにもご迷惑を掛けてしまったようですしね」


「そうかい、ならありがたく頂いておくよ」


 本当なら多めに渡しても良い状況なのだろうがあたしの金じゃないしね。と言いたい所だけどあたしも甘いね。主人の手に銀貨二十枚乗せて逃げるように店を出た。


 後ろから何か呼び止める声が聞こえた気がするがきっと気のせいだ。でもナナシになんて説明しよう。少し気分を落ち込ませながら自分の主人を探すあたしだった。


 今回は特に何も無い感じのお買い物回でした。

 次でマレの村を出るはずです。きっと(迫真)


 貨幣の価値ですが半銅貨が十円、銅貨が五百円、半銀貨が千円、銀貨が五千円、半金貨が二十万円、金貨が百万円、白金貨が一千万円といった所でしょうか。あくまで日本円換算なので五十枚で一段上がるという計算がおかしくなってますが大体こんなもんだと納得して頂ければ嬉しいです。

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