第1話 モノクロの世界
二夜連続で投稿できました。
では、二話をどうぞ。
暗い暗い闇より暗い黒の中に小さな一粒の光の玉が在った。
その玉は何をするでもなくただただ広く深い黒の中でくるくると泳いでいるだけ。
そう、何かを守るように黒の中心で儚い光の軌跡を残しながら円を描くように泳いでいるだけ。
どれ程の時間が経っただろうか……。
陽の光も無ければ、月の明かりも無いこの黒の世界で時間という概念があるのかはいささか不明ではあるが、それでもまだ光は漂う。
まるで何かを待っているかのようにただくるくるとソコを漂う。
更に時は流れた……。
一秒か一分か、一日か一年か、時間の概念が存在しないであろう黒の世界で、光は未だ廻っている。
それは何かを探しているようで、表情など存在しないはずの光がどこか焦っているようにも見える。
また時は経ち、とうとう光が明滅を始めた。
前よりも廻る速度は落ち、少しではあるが低い位置を漂っているようにも見える。
何をどう見ても消える寸前であり、その光は弱くなっていた。
しかしそれでも光は泳ぎ、漂い、廻る。
それでも黒の世界は変わらずに在った。
光の明滅する間隔も短くなり、もういつ消えてもおかしくない状態になった頃、光が止まった。
消えたわけではない、今まで動き続けていた光の玉が止まったのだ。
そして光は今まで描いていた円の中心に吸い込まれるように飛び込んだ。
次の瞬間、黒の世界を消し去るほどの光が中心から溢れ、黒の世界は白の世界へと姿を変えた。
その白の世界の中心には光の玉は無く、代わりに一人の青年が倒れていた。
年の頃は二十代前半くらいであろうか、あまり長くは見えない黒髪を額を覆う程度まで伸ばし、後ろ髪は首にかかっているくらいだ。気絶しているのか寝ているのか、目は閉じているため見えないが、鼻立ちはスッと通っており整った顔と言っていいだろう。服装は白いカッターシャツにグレーのネクタイを合わせ、黒のスーツを着ている。
そんなただのサラリーマンにしか見えない彼は、何故このような世界に来たのか……。
それはまだ誰にも分からない。
ココは……何処だ?
目を覚ました俺が最初に見たのは、何も無い白の世界だった。
そこで俺が理解できたのは前後左右、そして上下、全てが白いこの世界でただ俺だけが存在しているということだけだった。
俺はこんな所で何をしているんだ。いや、そもそもココは何処だ?
……考えていても分からないか。
こういう場合は自分の行動を遡ってみると何か解る可能性が高いと前テレビで見たような気がする。
昨日の朝俺は、普通に会社に出社して通常通り業務をこなして定時で帰ろうとしたら上司に飲みに誘われてその帰りに何かが……。
「ぐっ!?があぁぁぁ!?」
原因を思い出しそうになったその時、頭に未だかつて感じたことの無い痛みが襲ってきた。
病気のときとは比較にならない……感覚的なモノではなく、どこか物理的な痛みだ。まるで頭蓋に穴を開けて頭の中を直接ミキサーか何かでかき混ぜられているようなそんな痛み。
俺は死ぬのか……?
いや、この痛みが消えるのなら死んだほうがましかもしれない。
願わくば、これが夢であることを祈ろう。
次に目を開いたら、頭痛も治り布団の中にいることを望みながら、俺の意識はそこで切れた。
今回は、主人公がどっかに飛ばされてまたどっかに飛ばされる感じの話でした。
能力は次辺りで出せればと思います。