第14話 お礼の品物創り
どうも円男です。
今回はサーナさんとビリスさんへのお礼の品物を錬成します。説明や何やらばかりな上、間違った物もあるかも分かりませんがご了承ください。
「ここは?」
「お前さんの剣を創ったときに錬金を使った場所さ。俺が怪我した日も本当ならここでやりたかったんだけどね。そこ見てみな」
先日の場所に来た俺はレンに地面の一部を指差し見るように促した。そこにはあまり大きくはないが直系1m、深さ30cm位の穴が整地された地面に不自然に空いている。
「穴?これがどうしたんだい?」
レンは「特におかしくはない」という顔をして俺を見る。どうやら説明しないと分からないようなので説明するとしようか。
「これはお前の剣があった場所だ。性格にはその剣の素になっている土があった場所だな」
「……は?」
今度は何が何だか分からないといった様子で間の抜けた顔をしてこっちを見ている。まあ俺の説明が下手なのがいけないのだろうがどうしたものか。
「俺の錬金術は無限ではなく有限だって事だ。お前の剣を創るのに使った土はお前の剣腕としてそこにある。当然その素の土はその場から無くなるというわけだ。一応ここも人様の土地だろうから穴だらけにするのは忍びないって事。分かったか?」
「うん、まあ理解は出来てないけどなんとなく納得はしたよ。それで、今日は何を創るんだい?」
どうやら納得はしてくれたようだし説明はこれで良いか。まあ能力を使うのは俺だから納得だけしてくれれば問題は無いだろう。
「今日はビリスさん用に各種手術道具、サーナさん用に試験管類だな。あとはレンの防具」
「あんたはどんな物を使うか分かってるのかい?」
「ああ、少し触ったことがあるから多分大丈夫だ」
「そうかい?ならあたしはそこらに座ってるから用があったら呼びな」
「あいよ」
異世界のことは流石にまだ…というかこれから先も口に出す予定ではないのでその辺りを濁して言う。記憶喪失の筈なのに苦しいかと思ったがなんとか納得はしてくれたようで、今は民家の壁に寄り掛かって立っている。
さて、それじゃあ始めるか。まずは試験管の類からだな。試験管ならガラスだがガラス……何で出来てるんだっけな。一応頭の中のどこかにはあるはずだしとりあえずチャレンジだな。
俺は地面に手をつき、50cm四方のガラスのブロックになれと念じる。すると急激な頭の痛みを感じ、膝をついてしまう。
「ナナシ!?あんたまだ傷が!?」
それに気付いたレンが走り寄ってきて肩を貸してくれるが、俺はすぐに一人で立ち、大きく一つ深呼吸する。なるほどな。
「ナナシ、今日はもう止めたほうが良いんじゃないかい?」
「いや、大丈夫だ。それに今のは傷とは関係ないからな」
そう言うとレンは渋々と壁際に戻るが、俺の事を心配してか先程よりも俺寄りの位置で立っている。
それにしても痛かったな。十中八九能力の副作用だろうが。おそらくは思い出せない知識を無理やり頭から引き出したせいだろう。レンの剣の時は全く痛みも無かったしな。しかし逆に言えば知っている物なら副作用覚悟で錬金可能という事だろう。流石に知らない物は創ろうとしても無理だろうが。
しかし俺は薀蓄や雑学が好きで普通に生活していても全く必要ないような事を知るのが楽しかった人間である。ちなみにレンの剣を創ったときの金属についての知識もそこからだ。
っと、今は違うな。俺は地面にあるガラスのブロックを見ながら思う。流石に専門家ほどの知識は無いがある程度でいいのなら色々知っているからな。細かい所は能力がすっ飛ばしてくれてるようだし。何とかなりそうだ。
さて、次は成形だな。と言っても頭で念じるだけでいいのだから本当に反則じみた能力である。俺はガラスのブロックに手を置き、まずはオーソッドクスな円柱形で底の丸い試験管を十本創る。中身が空洞のためか、ブロックはあまり減っていない。それを汚さないようにダンさんには申し訳ないが俺の治療に使われて余ったシーツの上に並べる。次はY字型の試験管を三本作成する。どうやら成形は頭に思い浮かべた形に変形させるだけのため副作用はほとんど無いようだ。
副作用の痛みが無いことで気分が乗った俺は次々とブロックを成形し、シーツの上に並べていく。
「こんなもんか」
十分程だろうか?色々と思い出しながら成形をした結果、目の前にあるシーツの上には数々の実験器具が出来ていた。
とりあえず創ったものを挙げると、まずはノーマルタイプの試験管が十本、Y字型が三本、ノーマルタイプのビーカーを50・100・300・500・1000mlまで五本、コニカルビーカー(涙滴型の口がやや細く、振り混ぜやすいビーカー)を10・100・200・500mlの四本、そして丸底フラスコを大中小二つずつ、三角フラスコを大中小二つずつ、ナスフラスコ(涙滴型のフラスコ)を大小二つずつ、撹拌用にガラス棒を二十本、漏斗を三つ、最後にピペットのガラス部分を五本だ。一通り思い付く物を創ってみたがこんなもんだろう。流石にビーカーを思い浮かべたら目盛りまで付いてたのには驚いたがそういう能力としておくしかないだろう。
次はビリスさん用の物だな。次はまた素材が違うので地面の土を拝借し40cm四方の鉄のインゴットを作成する。これも特に気になるほどの副作用は無かった。初めからある程度土に含有されていたのだろうか?まあいい。次に7.2cm四方の鉄を一つ、3.2cm四方のものを一つ練成し、今度は7.2cmの物をクロム、3.2cmの物をニッケルに変える。最後にその三種類を重ねてステンレスを思い浮かべて錬成。これで一般的なオールテナイト系のステンレス鋼(クロム18%、ニッケル8%)が出来たはずである。今度はそれを成形。
まずはメス。一般的なストレートの刃を持つ物、ククリナイフの様な反りを持つ物、フック型の物、鎌の様な形の物と、見た事のある形のメスを創る。おそらく始めの二つが良く使われると思うので三十本ずつ、後の二つは十本ずつだ。次に鉗子を先の形を色々変えて十本ずつ作成した。最後はステンレスの残りで傷を縫う縫合針を曲がりの大きい物と小さい物をサイズを10パターン程に分けて創れるだけ創る。多分各サイズ三百本ずつ位あるだろう。
これだけあれば使い捨てでもある程度はもつはずである。
「大体こんな物か。レン、ちょっと来てくれ」
「なんだい?終わったかい?」
「いや、この木に少し傷を付けてくれ」
俺はこの空き地にひっそりと立つ2mほどの小さな木を指差しながら頼む。出来るかどうかは分からないがね。
「少し?どれ位だい?」
「樹液が出る位でいいよ。深さ3cm位」
「あいよ。―――――ふっ!」
レンが俺には見えない速度で腕を振ると、目の前の木には10cm程で、深さは注文通り大体3cm位の鋭い傷が付いていた。実はレンって凄いんじゃないだろうか?
いや、今は樹液だ樹液。俺は樹液に少し手を触れ、ゴムになるように念じる。ゴムの木ではないが素は同じ樹液なのでこの反則な能力なら何とかなるんじゃなかろうかと思ったわけだ。結果は何とか成功。その後、それを生ゴムから合成ゴムに錬成し、先程創ったピペットの頭に合うようにキャップとして成形する。
これで二人へのお礼は大丈夫だろう。何か技術的に危ない気がする物も数点あるが……。
まあ何とかなるだろう。最後はレンの防具を創って帰るとしよう。
二人に渡すのは何時でも出来るしな。
突っ込みたいことも沢山あるでしょうが、心の中に仕舞っておいていただけると私は嬉しいです。
次はレンの防具創りですが、同じような話の送りになるかもしれませんがご了承ください。