第13話 起床とお礼と
どうも円男です。私にしては速く投稿できたのではないでしょうか?
すいません。最初に三日に一話とか言ってた自分を殴り殺したいです。
では続きをどうぞ。
「ここは何処だ?ああ、潮風亭か」
失血によって気を失った俺が目を覚ますと、見覚えのある部屋にいた。あのデカい犬にやられた筈なんだがと思い肩を見ると傷は包帯で巻かれていて、血も滲んでないところを見ると縫合なり何なりされて治療されているのだろう。包帯のせいでどうなっているかは見えないが。
それにしても体が重い……。何だこの休み明けで会社に行かないといけない時の様な倦怠感は?
というか何で俺は潮風亭にいるんだ?あの土のドームは必死に密度を高くして鉄並みには硬くしたつもりだったから俺が自分で崩さなきゃ出れないと思っていたんだけどな。とりあえず今は現状把握だな。気絶してたせいで色々分からんことが多すぎる。まあダンさんに聞けば大丈夫だろう。
そう思い、動きたくないとごねている気がする身体を無理やり起こしてダンさんの所に向かおうとすると部屋の扉が勢いよくノックも無しに開いた。
「おはようございます!」
「お、おはよう」
予想は出来ていたが案の定メルナちゃんだった。彼女はベッドの上で上半身を起こして挨拶を返した俺を見てその大きなクリクリとした目を二、三度瞬かせると、その目を更に見開き廊下に飛び出していった。
「お父さん!お兄さん起きたよ!」
「こらメルナ!朝から何を騒いで…本当か?」
「うん、おはようって言ったら起きてておはようって」
そんなやり取りが聞こえた後、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえ、ダンさんとメルナちゃんが部屋に入ってきた。
「ナナシさん大丈夫ですか?」
「ええ、お蔭様で。というか色々と状況が分からないんですが説明をお願いできますか?」
俺がそう頼むとダンさんは起こった事の詳細を話してくれた。
あのデカい犬の事、その犬をレンが倒した事、レンが血だらけの俺を背負ってきた事、傷が結構深くて危ない状況だった事、サーナさんとビリスさんというこの村の医者が助けてくれた事、俺が二日間気絶していた事等を話してくれた。ただの金策のために色んな人に借りが出来ちゃったな。
どうやって借りを返していこうかと思っていると再び部屋の扉が勢いよく開かれた。
「ナナシ!」
「レン、騒がしいぞ」
扉を壊さん限りの勢いで入ってきたレンを苦笑しながら迎える。するとぽろぽろ涙を流したかと思うと突然抱きついてきた。
「おいちょっと待て!俺は怪我人だぞぁあいたたたた!」
「良かった!起きて本当に良かった!」
美女と言ってもいいような女性に泣きながら抱きつかれるという状況が嬉しくない訳ではないが物事にはTPOというものがあって今はOがよろしくないんだ。俺怪我人だし、布で巻かれているとはいえ剣腕がごつごつ当たって痛いし……ああ誰か助けて。
「きゃあぁぁ!?ムンバルクさん怪我人に何しているんですか!?」
そろそろヤバイかな等と自分の痛みを客観的に見始めた頃、白衣を着た女性が悲鳴を上げながらレンを引き剥がしてくれた。ありがとうございます。本当に。
「あなたがサーナさんですか?それともビリスさん?」
白衣を着ているから医者というのは安直かと思ったがとりあえず名前を尋ねる。名前の感じからしてサーナさんだとは思うが…ビリスは男性名っぽいしな。
「大丈夫でしたか?申し遅れましたが私は『サーナ・クラティオ』と言います。化膿止めを塗りますので包帯を解いてもよろしいですか?」
どうやらサーナさんで合っていたようだ。包帯を解きながら彼女を見る。二十代後半くらいだろうか?大人の余裕というかそんな感じの雰囲気を纏っている。縁の太い眼鏡のせいもあるかもしれないが。そして着ている服は清潔で医者って感じだ。
「お世話になってしまったようで、ありがとうございました」
「私は特に何もしていませんよ。ほとんどビリスさんがやってくれましたからね。私は術後の管理と化膿止めの塗布位しかしていませんし」
ビリスさんがこの傷の縫合をしてくれたらしい。結構しっかり縫ってあるけど何で縫ってあるんだろ?糸ってよりは何かの毛だろうか?あまり強くはなさそうだ。そう考えていて気付いた。
「サーナさんとビリスさんはどんな医療をなさっているんですか?」
「えっ?私は主に薬学関係ですね。薬の調合は自分でしています。ビリスさんは大きな傷の処置ですね切ったり縫合したり。唐突にどうしたんですか?」
「いえ、色々とお世話になったので何か手助けできればと思いまして」
俺が思いついたのは手術道具の作成だ。流石に医療の知識は無いので能力を使って少しでも良い物を創って返せればと思ったからだ。当然治療費も払うがね。
「もしかしてあなたも医療を?」
「申し訳ないですがそっちは門外漢なんで道具のほうですがどうでしょう?薬の入れ物とか色々と用意できると思いますんで」
「あなたは商人だったのですか?てっきり貴族の御子息か何かだと思っていましたが」
「まあその様なものです。詮索はあまりしないで頂けると嬉しいのですが」
「では、道具のほう用意して頂けるのならありがたいです。医療器具は何かと値が張るものが多くて……」
そう言うとサーナさんはハッとして話を逸らしてくれた。前の世界じゃ分からないがここでは医療器具はそれなりに高価なようだ。
「とりあえずはこのまま様子を見て下さい。もし違和感や痛みなどがあればすぐ診療所へ来て下さいね」
「分かりました。重ね重ねありがとうございます」
薬を塗り終え、包帯を巻きなおした彼女はでは、と言って帰っていった。それに続くようにダンさんとメルナちゃんも出て行った。メルナちゃんは出て行ったというより「お姉ちゃんと遊ぶ!」とか言ってたせいでダンさんに引き摺られていったんだが。
「さてまずはレン、心配掛けた」
俺は今まで黙って椅子に座っていたレンに向き直り頭を下げ謝罪する。
「いいよ別に。でも次から何処かに行くときは付いてくからね」
付いてくるのか。まあレンには既に能力の事は話してあるから問題はないな。
「そうか、なら今から少し出掛けるぞ」
「アンタ馬鹿かい!?今日起きたばかりだろう!傷が治るまではジッとしてな!」
「大丈夫だって。村からは出ないしすぐそこまでだから」
凄い剣幕で怒るレンに言い訳するが駄目か?まあ怒られるのは当然だが。体調は寝起きでだるいだけだしそれも収まってきたのに。
「何かあったらすぐ戻るからいいだろ?」
「~~~!もういい!そのかわりあたしも付いてくからね?」
何かを言おうとして諦めたのか、少し怒りながらも渋々外に出してくれるようだ。
あの犬(カーニスというらしい)のせいで出来なかった分とサーナさん達へのお礼と創るモノが沢山あるなーなんてこんな大怪我をしたにも拘らず能天気に考えてる俺は結構真性のアホかもしれないな。
そんな事を思いながら「もう大丈夫なんですか!?」と焦っているダンさんを尻目に、俺達は潮風亭を出てレンの剣を創った場所に向かった。
ナナシ君おはよう回です。
次はやっとこさ色々錬金できそうです。
錬金術メインのはずなのに創ったのが水筒と置物とインゴットと剣一本てアホかと。
サーナさんのフルネームが出ました。
クラティオ=curatio(ラテン語で治療・世話等の意)
因みに調子に乗ってラテン語とか使っちゃってますが読み方が分からないのでそれっぽい読み方で使用したりバラして使ったりしているので突っ込みはあまりしないようお願いします。