第11話 剣腕の一閃
どうも円男です。皆さんGWはどうお過ごしですか?
私は大概寝てました。
「失礼します!ナナシさんは帰っておられますか!?」
ナナシが出て行って二時間程、あたしは特にやることも無く久々のベッドで身体を休めていた。するとこの宿屋の亭主…確かダンさんだったか?が血相を変えて部屋に入ってきた。宿屋の亭主が声もかけずに客の部屋に入るなんて余程のことがあったのだろう。とりあえず落ち着いてもらって話を聞くことにした。
「一体何があったんだ?あとそれにはナナシが関係しているのかい?」
「はぁ、はぁ……すみません。まだ分かりませんが、村の外に『カーニス』が現れたそうです。今は村の警護をしてくれている若い男達が相手しているらしいのですが、ナナシさんが出掛けたのを思い出して……レンさん!?」
ダンさんの話を聞いている途中であたしは部屋を出て走っていた。ナナシが帰っていないという事は巻き込まれているかもしれないのだ。
カーニスというのは人食い犬とも呼ばれる魔物で、多少戦える人間が二人もいれば倒せる程度の強さでしかないが、動きは素早く爪と牙はとても鋭い。少なくとも丸腰で倒せるモノではないのは確かだ。
「すいません。黒い服を着た貴族風の若い男を見ませんでしたか?」
村の入り口に方から逃げて来たのか、こちらに走ってくる女性に聞く。
「その方なら少し前に会ったよ。門の方に歩いていったと思うんだけどね?ちょっとあんた、今はカーニスがいるから危ないよ!」
「大丈夫です。ありがとうございました」
村の門に着くと、鎧を着てカーニスと戦う三人の若い男がいた。そのカーニスは2mを超えていて、普通のモノより大分大きい。周りに群れがいないのを見ると一体だけのようだ。しかし大きな体躯をしていてもその素早さは損なわれておらず、力が強くなっているようで三人の男は手を持て余していた。それでも三人もいればといった感じでカーニスもそれなりに傷ついているようだった。
「あんたら少し退きな!」
あたしがそう言うと男達は驚いたようにこちらを見るが、右手の包帯を取って剣腕を出すとカーニスを警戒しながら離れた。あたしは自分とカーニスを隔てるものが無くなったと同時に走り出した。カーニスはあたしを迎え撃とうとこちらに跳んで爪を振り下ろすが、所詮は凶暴な犬一匹ナナシ特製の剣で力が戻ったあたしの敵じゃない。遅くすら見えるその爪を剣腕の一振りで腕ごと切り落とし、返しの一太刀で首を落とした。
「あんたら、黒い服着た貴族風の男見なかったかい?」
何か話しかけようとしたのかさっきまで戦っていた男の一人がこちらに寄ってきたが、あたしはその前に質問をぶつけた。
「いや、俺は見ていないが…お前らは見たか?」
「知らないです」
「俺もだ。見てない」
「そうかい、ならカーニスはどっちから来たか分かるかい?」
「それなら多分あっちだ」
見てはいないそうだからカーニスが来た方向を教えてもらう。どうやら海沿いの方から来たようだ。あとはナナシが逃げ切ってどこかに隠れてくれているのを祈るしかない。
「分かった。ありがとう」
あたしは少し嫌な予感がしつつも、男が指差したほうに走った。
「あれは……?」
ナナシを探し始めて十分程、周りからは見えないような位置に不自然なほど綺麗な半球状の土の塊を見つけた。
近付くとそれには幾つか小さな穴が開いていて、何かが引っ掻いた様な傷が何十と付いている上、少し赤黒い染みが出来ている。そしてその地面付近には血痕があり、見る限りでは結構な量の血が飛び散ったようだ。カーニスの血だろうか?あの能力もあるしね。
おそらくナナシが作った物だろうと当たりをつけ、小さな穴に口を近づけて呼びかけてみる。
「ナナシ、カーニスはもういないよ。だから出てきな」
しかし返事は無い。
あたしもおかしく思い、小さな穴に耳をつけて中の音を聞く。すると中からは弱弱しい呼吸音が聴こえるだけだった。あたしは急いで剣腕で半球の上部を切り落とす。岩並みに硬かったがナナシの剣が良い物だからかすんなりと斬ることが出来た。
半球の中には案の定ナナシがいたが、下の地面は赤黒く染まっていて、ナナシ自身も意識は無い。そして黒い服のせいで判り辛いが左肩から胸にかけて染みが広がっている。
「ナナシ!ナナシ!?」
呼んでも反応は無く、弱く呼吸を繰り返しているだけだった。
「ちっ…この村、医者はいるんだろうね!?」
あたしはナナシを引きずり出し、なるべくナナシに負担をかけないように、それでも急いで潮風亭に向かった。
ナナシ君ピンチ回です。
戦闘?何それ美味しいの?って程度の文章しか書けませんがよろしくです。
今回は魔物としてカーニスを出しました。
カーニス=canis(ラテン語で犬)よりです。