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第10話 油断は怪我の元

 どうも円男です。例によってお久しぶりです。

 では続きをどうぞ。

「申し訳ありません」


 ベッドの上に座る俺の目の前で頭を下げているのはダンさんである。そしてその隣で頭に大きなたんこぶを作っているのは娘のメルナちゃんである。


「ほら、メルナも謝りなさい!」


「ご、ごめんなさいぃぃ」


 目尻に涙を溜めながら謝る姿に罪悪感を覚えつつも、今回の被害者であるレンを見る。レンもこちらを見て頷いたので後は任せることにする。


「別にそんな大袈裟にしなくても良いよ。まだ少し痛いけど……ははっ」


「申し訳ございません。メルナにもよく言い聞かせます。では失礼しました」


「失礼しましたぁ」


 何故この様な事になったかは朝のことである。






「おはようございます!」という大きな声で目を覚ました俺が見たのは「ごふぅっ」と声を上げ、腹の上にボディプレスを食らって悶えているレンと、プレスした張本人のメルナちゃんだった。


 そしてメルナちゃんを探しに来たダンさんが悶えているレンとそれをしたメルナちゃんを発見し、カツカツと歩み寄ったかと思うと何も言わずに拳骨を一発。そしてダンさんが謝罪する。という流れで冒頭に戻る。


 俺が思うにメルナちゃんは明るくて良い子だけど宿屋の手伝いをしている関係上、友達が少ないんじゃないかと思う。ダンさんの奥さんも見ていないので……これは他人が踏み込む話じゃないか。だから友達感覚で遊んでくれたレンに懐いているのだろう。まあ朝一ボディプレスはやり過ぎだと思うが。


 しかしこれも俺達が首を突っ込む問題じゃないからな。今楽しいのと別れるのが辛いの、どちらが良いかは分からない。見ている限りレンも子供が好きなようだから任せるか、一応まだ一週間くらいはこの村に滞在するつもりだからな。


 とりあえずはここに滞在している間にある程度の金を確保するのが第一。錬金術のボーダーラインを見極めることが第二。あとは旅支度を充実させるのが第三ってところか。金が無いことにはイヴネスに辿り着いたところで何も出来ないし、何より貴族が(はば)()かしてるって事は金と地位が物を言う世界という事だろう。地位も何も無い俺はとりあえず金を持ち、それで対抗しなければならない。本当は波風立てずに生活したいんだけどね。レンが戦う気満々だし、何より俺がレンのような奴隷をあまり見たくないというのもある。自己満足だとは分かっている。全員を助けることなんて出来ない事も分かってる。それでも俺は救いたいと思う。今までの俺は、理不尽な物言いに頭を下げて、褒めたくない物を褒めて、どっちつかずで妥協と惰性で生きていた。けど今は世界を変えることが出来るくらい大きな力がある!だから手の届く範囲で、不幸な人を助けたいと思う。


 そしてそのためには俺の能力を最大限に活用しなければならないが、どこまで出来るのかすらまだ不明である。あとは等価交換の定義。


 最後は旅の装備ではあるが、キャンプセットのノリでいけるだろうか?そこはレンと相談して決めよう。


 今日は金策でもして、夕方からレンの防具でも創ろうかな。あとは俺の武器と防具もだな。


 とりあえずはダンさんに頼んで朝飯食おう。腹減った。






「ご馳走様でした」

「ご馳走様でした」


 朝飯を頼むとダンさんはすぐ部屋に持って来てくれた。朝飯はシンプルにパンとスープ、野菜スティックとハムだった。昨日の夕飯よりパンが少し固かったが、レン曰くこれでも大分良いパンらしい。硬いといってもフランスパン位だ。一番固いパンはカリカリらしく、おそらくラスクの様な物だと思う。


「レン、お前は今日どうするんだ?」


「え?どこか行くのかい?なら付いてくよ」


「いや別に良いぞ?ただちょっと金稼ぎに行って来るだけだから。のんびりしてろよ」


 俺はレンの返答も聞かず、部屋を出た。






 昨日レンの剣を創った場所は一応建物の間だからあまりやるのは拙いだろうと思った俺は、村の外に出ることにした。今までの旅が順調過ぎたせいだろうか?この時の俺には危機管理能力が欠けていた。


 マレの村はぐるりと柵で囲われており、海側は堤防のように石で出来ている。草原側は木で出来た柵が申し訳程度に立っている。そこで今日は石で周りから見つかり辛い海側でやろうと決め、外に出るため入り口の門に向かった。


「これは貴族様、おはようございます」


「おはようございます。良い天気ですね」


 門に向かう途中、昨日武器屋と雑貨屋の場所を教えてくれたおばちゃんに会ったので、普通に挨拶をして通り過ぎる。


 宿から十分ほど歩き、門の前まで来た。なかなか遠かったんだね。少し疲れたため、持ってきた水筒に水を錬成し飲みながら門の外に出た。


「この辺りでいいか」


 石壁の周りを歩き、問題なさそうな場所を発見したのでここでやることにする。


 今日は何をどれだけ創ろうかと考えていると、何か首の後ろを何かが這い回るような嫌な感じがして振り向いた10mほど後方。そこには今にも飛び掛らんとする体長2mを超える大きな犬の魔物が(よだれ)を垂らし、鋭い爪で地面に立ち、その赤い双眸(そうぼう)は俺を捉えていた。


 逃げる?駄目だ……足が(すく)んで動かない。諦めるか?駄目だ!今日俺はやると決めたばかりだ。助けを呼ぶ?駄目だ間に合わない。どうする?どうする?どうする?刹那の中で頭を働かせ、思考する。出た結論は―――とりあえず身を守る!


 俺は地面に手を付き、ドームを想像。それとほぼ同時に魔物が飛び上がりその鋭利な爪を振り下ろす。「ぐぅっ」爪が肩に当たり焼けるような痛みが襲う。魔物はそのまま噛み付こうとするが、いきなり動いた地面に驚き跳び下がる。その地面が変形し、人一人囲えるだけの小さなドームになった。痛みを我慢しそこに小さな空気穴をいくつか開けて、あいつらが何処かに行くまで(こも)る。さあ、ここからは根競べだ。


 今まで一度も出てこなかったモンスター、錬金術、護衛と順調に行き過ぎた旅路は俺の危機管理能力を低下させ、この様な事態になったのだろう。いや、そもそもレンを連れて来ればよかったのか?


 まあいい。結局は俺の認識の甘さだな。カッターシャツを少し破いて包帯代わりにして止血する。


 結構血が出てたけど大丈夫か?いや、死ななきゃ安いだな。

 今回はナナシ君の決意ともう一度異世界というのを再認識する話でした。

 彼、どうなるんでしょうね?

 ちなみに、石のドームですがミスるとなんと *いしのなかにいる* ってなります。

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