第0話 プロローグ
どうも初めまして「円男」と言います。
まだまだ至らぬところが多くありますが、長く温かい目で見ながらアドバイスなどをいただけると嬉しいです。
某日某所、唸るようなエンジン音と共に銀色の車体が闇を切り裂きながら路地裏から現れた。
中に乗るのは若いカップルだろうか身を寄せ合いお互いを見ながら楽しそうに喋っている。
そう、車を運転しているのにも関わらずにお互いを見ているのだ。しかもエンジンが唸るほどのスピードを出しているのに……。
そんなことをしていれば何が起こるかなど小学生でも分かるだろうに……。
「きゃータッくんすごーい!」
助手席に乗る女が運転している男を褒める。
類は友を呼ぶとはこの事か……調子に乗った頭の悪い男を褒めたらどうなるかなど想像に易いと思うが……。
「そうだろ!ならもっとスピード出してやるよ!」
当然こうなる。
馬鹿な男は法定速度など優に超えているにも関わらずそこから更にアクセルを踏み込む。スピードは100km/hを超え、突然上がった回転数によりエンジンが更に唸り周りの音を遮断する。
調子が有頂天にまでなった男は気付かない。100mほど先に横断歩道があり、信号は赤だということに……。
「どうだ!凄いだろ!」
「タッくん前ー!」
得意げに隣の女を見ていた男は、女の突然の悲鳴に釣られるようにブレーキを限界まで踏み込んだ。
しかし車は急に止まれない……。
バゴンッと何か重いモノにぶつかったような音と共にボンネットは拉げ、その隙間からは煙が立ち上り、車内にはエアバックが広がった。
猛スピードで移動していた鉄の塊がそう易々と止まれるわけもなく前にあったモノを轢き飛ばした後、近くの街灯の支柱にぶつかりその活動を停止させた。
「あぁ……うあぁぁぁぁ……」
「……ぁ……ぅ……ぁ」
隣の女は事故の勢いでぼさぼさになった髪を直すわけでもなく、ただただやってしまった事の重大さに涙し、男は現実を受け止められないのか焦点の合わない目でひび割れて何も見えないはずのフロントの先を呆然と見ているだけだった。
先ほどの出来事から数時間、事故の音を聞いた誰かが通報したのだろう、現場には数台のパトカーとマスコミを含む多数の野次馬が集まっていた。
「早く降りろ!」
警官に怒鳴られ、腕を引っ張られながら車から降りた男は焦点も合い、しっかり前を見ているが腰が抜けているのか降りたその場でへたり込んでしまった。
「お巡りさん……俺……」
「まったく、スピード違反と器物破損、それに信号無視か。免許は取り消しだな。君、見たところ若いだろう?免許とってはしゃぐのもいいがどうせこうなるんだ。これに懲りたらもう悪さはしないことだ」
男は驚愕した。カメラのフラッシュやマスコミのマイクが鬱陶しいがそんな場合ではない。
スピード違反?確実に違反していただろう。信号無視?おそらくしただろう。だが器物破損?そんなはずはない、何故なら男は見たのだ。
ヘッドライトに照らされ、驚愕の表情を浮かべる人間の姿を……。
見間違いだろうか?いや、あの表情は違った。あの表情は人間だ。見間違えのはずがない。
「お巡りさん、俺の罪はそれだけですか?その、人を轢いたりは……」
「人なんか轢いてたら君は手錠嵌めて既にパトカーに乗って警察署に向かってるよ」
「そう……ですか……」
そうか、あれは驚いたせいで見た幻。最悪の事態を頭が勝手に勘違いしてただけだ。そう自分に言い聞かせて、未だに泣きじゃくる女の元に歩いていった。
ところがそうではない。
確かに男の車は一人の青年を轢き飛ばし、その命の灯火を消していた。
ならその青年の死体は何処へ消えた?
さぁ?それこそ、神のみぞ知るってものではないのだろうか?
こんな始まり方でしたがどうでしたか?
言わずもがな轢き殺された青年が主人公です。
ではまた次にあいましょう。