The Chess 番外編 キングはクイーンの1/3
プロミーは一つスターチス王に尋ねた。それはずっと旅の間思っていたことだった。
「スターチス王様は私のようにロッド様がお好きなのですか?」
その質問は空気を読まず、周りにも気にせず、ただ正直なものだった。スターチス王は苦笑したようだった。エーデルが代わりに答えた。
「スターチス王は長い間ロッドを見守ってきました。その気持ちはかけがえのないものです。ロッドと接する時は、王の気持ちも大切にしてあげて下さい、プロミー」
エーデルの優しく諭すような言葉に、プロミーは納得することにした。
「はい。分かりました。エーデル女王様」
「ありがとう、エーデル。プロミーの前で良い言葉を返してくれて」
夜の王の私室でスターチス王はエーデルに礼を言った。その言葉は照れているようだった。
「付き合いが長いのですよ。隠さなくても大丈夫です」
「私の心はお見通しですね」
エーデルの穏やかな表情を見て、スターチス王は言った。不安と安心が入り混ざった複雑な心境だった。エーデルはスターチス王の碧い眼を見た。夢の少女と同じ瞳の色だった。
「あなたが誰に恋をしていても、あなたはあなたです。私はあなたの全てを知っても愛おしく思います」
「私のことを許してくれるのですね」
エーデルは明るく言った。
「私の王はあなただけですよ。ロッドもたぶん同じ事を言うのでしょうね。それでいいですよ」
「エーデル。隣に座ってもいいですか?」
「ええ、いいですよ」
スターチス王は遠慮気味にエーデルに尋ね、エーデルは肯った。スターチス王は語った。
「これからはプロミーの夢は見ません。アリストロメリア王がワースを残したのと同じです。プロミーは私から離れて自由です。アーサ様が旅の共になりますが……」
「青年王も二人の邪魔はしないでしょうね」
スターチス王はエーデルを見つめた。
「エーデルは強いですね。無理をさせてすみません」
「私は独占欲が弱い方のようですね。でもあなたがチェスの間眠っていた時は、少しは夢の中で会う時間を私にも分けて欲しいと思いましたよ」
「今埋め合わせをさせて下さい」
スターチス王はそう言うとエーデルの手を取り、口付けをした。エーデルはその手を取って、両の手で包んで唇に寄せた。
「これでお互い気にしないことにしましょう」
エーデルはさっぱりと言った。
「それでいいのですか……?」
スターチス王は確かめるように尋ねた。エーデルは昔のように意地悪を言った。
「あなたは強い方に惹かれるのですね」
「エーデル……、すみません」
「でも私以外の方と誓いを立てないことも知っていますよ」
エーデルはにこりと笑った。
「私はあなたの気持ちの邪魔はしません。一緒に眺められるだけの時間を共にしました。だからその気持ちを育てていても、そっとしまって大切にしていても、あなたの隣にいます」
「ではエーデルの気持ちに甘えさせて下さい」
スターチス王は真剣な眼差しでエーデルを見た。
「これは私一人の心のこととしてきました。大切な気持ちです。しかしエーデルへの気持ちを邪魔するものではありません。ただこの縁を大事にしたいのです」
エーデルはスターチス王の告白ににこにこと頷いた。
「そうでしょう。分かってますよ」
スターチス王は続けた。
「私の心はただ見守ることができればそれでいいのです」
王の温かい心はエーデルに伝わり、エーデルはその気持ちを愛らしく思った。エーデルは言った。
「では私もそのあなたの気持ちを見守っていましょう」
スターチス王は笑った。エーデルはやっとスターチス王の表情が和らいだ、と思った。
「スターチス王はお強いですね」
エーデルはぽっと言葉が出た。
「芯が強くて、温かくて、私や騎士や町の人たちを魅了してしまいます」
スターチス王が笑って返した。
「でもキングはクイーンの1/3ですからね」
「まぁ!お褒めの言葉ととっておきますね」
「ええ、もちろんです」




