善意が肉欲に支配される時
発狂した犬達がうるさい。
夏の暑さで糞と尿の蒸れた臭いが堪らん。
ここは山奥の元牧場。悪質ブリーダーの爺さんがいるウワサは本当だったのか。
チワワからハウンドまで牙剥き出しで「ここから出せ」「肉を食わせろ」と言わんばかりに檻に噛みつき吠えている。
恐らくはワクチンなど打っていない30匹に届くかという数の狂犬達を爺さん1人で見ているとは……。
面倒を見切れなかったり死なせてしまったら、ここにある大きな焼却炉を使って処分するのだろう。
だが俺を驚かせたのは犬よりもコイツだ。
「……」
黒い犬と同じ檻にいる『かをり』と腹に名前を彫られた裸の若い女。
爺さん。人間まで飼育してるってのかよ。
……人でなしだな。
「こっちへ!」
「くぅぅん」
俺はかをりの腕をつかみ、素早くかをりだけを檻から引っ張り出した。
その勢いで抱きしめてしまったが、かをりは嫌では無さそうだ。
「くぅぅん。くぅぅん」
「……おい。顔を舐めるな」
こうやって愛想を振り向かないと爺さんに殴られていたのだろうな。
可哀想に。すぐに車に乗せて病院に……と行きたいが、かをりはあまりに臭すぎた。
新車。しかも自慢の高級車が糞尿臭くなるのだけは避けたい。
俺はかをりをホースの水。もとい暑さでぬるま湯になった液体と石鹸で洗ってやった。
「くぅぅん。キャッキャッ」
なんだ。綺麗になって嬉しいのか?可愛い奴だな。
「……可愛いな」
全身の汚れを落としたかをりは可愛かった。
「……おぅ。やめろって」
かをりがヘッヘッヘと息荒く俺の股間をまさぐり出した。
やっぱり『こういう教育』をしてやがったんだ、ジジイめっ!
湧いてきたのは悪質ブリーダーへの怒り。ではなく嫉妬だ。
こんな可愛い女を?許せない!
……
……
「あおおおおん!」
『事』を終えた俺はかをりを檻に戻した。
何をしているんだ俺は?檻に戻してどうする?
「きゅう?くるるん?」
かをりが俺を潤んだ瞳で見ている。、見たかジジイ。かをりはもう俺にべた惚れだ。
美味い食事。綺麗な水。ジジイのフニャフニャ棒じゃ得られない快感。
「ウーッ!ガウガウがッ!」
「うりゅーん!」
「お前!?何をしているっ!?かをり!かをり!?」
黒く大きな犬がかをりに後ろから覆い被さり腰を振っている。
かをりの表情はとろけ。先ほどより甘い声を出している。
「やめろっ!やめろって!」
「ワッオオオォン!」
「くっ!キュウウウウ!」
俺は怖くて何も出来なかった。
「くぅるあっー!んなにしてるぅっ!?」
しまった。長居し過ぎたせいでジジイが帰ってきてしまった。
右手に錆びた鎌。左手に拡声器。
この地獄のような状況を作った張本人。まともな人間なはずがない。
「んだっと!ぶっ殺すぞ!」
本当に殺されてしまう。何か、何か言わないと。
「こ……この子買います」
俺はかをりを指差した。
「あんっ?客か?」
「あれ?」
俺は何を?
……
冬になった。
妊娠していたかをりは元気な男の子を産んでくれた。
少しベタだが子供にはジョンとポチと名付けた。
かをりは結構いいママをしている。
少しだけ人間の言葉も覚えてくれたしね。
「ジョンポチ、カワイイカワイイ」
「キャンキャンっ!」
「キュゥン!」
ジョンとポチはかをりにべったりだ。
でも一人目の子供が欲しいから彼らが寝ている間にかをりと子作りをしよう。
「パパお仕事行ってくるよ。餌はいつもの時間に機械から出てくるからね」
かをりと息子達は檻の中から見送ってくれた。




