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四字熟語

作者: ほんじじ
掲載日:2026/02/25

 業界では中堅どころの食品メーカー。

 ここは、新入社員に四字熟語を使った「これからの抱負」を書かせるのが恒例だった。


 今日はその抱負を全社員の前で発表する日。

 耳が聞こえにくい社員がいることもあり、原稿はプロジェクターにも映し出される。


 最後に壇上に立つのは山本直樹。

 マイクの前で一礼。そして、原稿を握りしめ続けた。


「まずは社会人として温故地震の精神を大切にし――」


 役員のひとりが眉をしかめる。


「先輩方の教えを胸に日々精進し会社の発展に貢献する所存です」

「たとえ困難に直面しても危機一発の覚悟で挑みます」


 人事部長が目を閉じた。


「失敗しても七転八倒の精神で立ち上がり――」


 営業部長が天を仰ぐ。


「そして一石二兆の成果を目指します!」


 会場はなんとも言えない空気になる。だが山本は満面の笑みだ。


「最後に、常に臨時応変に行動し、一喜一様することなく、将来は大器完成となれるよう努力いたします!」


 さすがに社長が吹き出した。


「ははは……!」


 会場もつられて笑いが広がる。

 山本はきょとんとする。


(え、何? オレ変なこと言った?)


 壇を降りると近くにいた先輩が小声で言った。


「全部ちょっとずつ違う」


「えっ」


 社長がマイクを持った。


「私は好きだよ。大器完成」


 会場が静まる。


「多少言葉が違っても気持ちが合っていれば問題ない。今のスピーチで元気をもらったよ」


 拍手が起きた。


 山本は深く頭を下げる。


(……よかったのか?)


 そして、山本は社内の人気者になった。




 終


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