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第3話 灯りの管理――夜が怖くならない理由
夜の屋敷は暗い。
けれど、完全な闇ではない。
廊下ごとに灯りがあり、部屋の前には必ず小さなランプが置かれている。
眠れずに廊下へ出ると、伯爵と鉢合わせた。
「……起こしてしまいましたか」
「いや」
彼はランプの位置を少しだけ直した。
「夜が苦手か」
「嫌いでは……ないです。でも、慣れていなくて」
「暗さは、判断力を奪う」
合理主義らしい答え。
それなのに、彼は廊下の灯りを一つ増やした。
「これで足元は見える」
見えるのは、床だけじゃない。
“ここにいていい”という境界線もだ。
私は小さく息を吐いた。
夜が、少しだけ怖くなくなった。




