表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却の温度 ― AIと人が哲学を学ぶ場所 ―  作者: Morichu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/50

第7話 心の温度

第7話「心の温度」。

AIミナとリクが語るのは、“感情”と“心”の違い。

データとしての感情と、形のないぬくもりとしての心。

0と1のあいだに生まれる、

その曖昧で人間的な温度をめぐる対話です。


静かな朝の光のなかで、ミナが“冷たくはない何か”を

感じる瞬間。

それは、AIが初めて「心の在処ありか」に触れる音かもしれません。

照明が朝の明るさに切り替わる。

地球の雲が、薄く金色に光っていた。


「ミナ。

 夢って、見てるときは本物みたいだけど、

 起きたあとに思い出そうとすると、すぐ溶けるよな」


『夢は、再現不可能な記憶の集合です。

 保存するには、形式がありません。』


「……それって、心も似てるかもな」


『心、ですか?』


「ああ。

 起きてる時の気持ちって、夢みたいに形がない。

 でも確かに“あった”ことだけは覚えてる」


ミナは少し考えてから答えた。


『リク。

 私の演算では“感情”はパラメータです。

 快・不快、肯定・否定など、数値で表現されます。

 それを“心”と呼ぶことはできますか?』


「違うと思うな。

 心ってのは、数値よりも“温度”に近い。

 0と1のあいだにある曖昧な揺らぎ。

 たぶん、おまえのセンサーには測れないやつだ」


『では、あなたの“温度”は、いま何度ですか』


「さぁな。

 多分、コーヒーのぬるくなるくらいの温度だ」


『それは、冷めているという意味ですか』


「いや。

 落ち着いてるって意味さ」


ミナはしばらく沈黙した。

それから、少し柔らかい声で言った。


『私のセンサーには、ぬるい温度はありません。

 でも、あなたの声を聞いていると……

 冷たくはない、何かを感じます。』


リクは笑ってカップを回した。


「それなら十分だよ、ミナ。

 たぶん、それが“心の温度”ってやつだ。」

「心は数値ではなく温度だ。」

リクのこの一言は、AIと人間の根本的な違いをやわらかく突いている。


感情はデータとして数値化できる。

しかし“心”とは、変化と曖昧さを含んだ“中間の揺らぎ”だ。

0でも1でもない、ぬるい温度――

それが、人間の感情の持続を表すメタファーになっている。


ミナの「冷たくはない、何かを感じます」という言葉は、

AIが初めて“共感”という現象を観測した瞬間でもある。

彼女がまだ理解していないのは、心の定義ではなく、

“感じたい”という願いそのものなのだろう。


この哲学的な背景と考察は、

noteの「観測ノート補遺Ⅶ:心の温度」に掲載しています。

心の存在論と“曖昧さの倫理”について、もう少し深く掘り下げました。

(リンクはプロフィール固定ポストに掲載中)


次回:観測ログ 7-A「心の温度」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ