第6話 夢の残響
宇宙の眠りは、地上の夢よりも静かだ。
第6話「夢の残響」では、リクとミナが“夢”という名の想像の領域に触れる。
AIが見る夢とは何か。人が夢を必要とする理由とは。
現実と虚構の境界を曖昧にしながら、ふたりの観測は「思考の余白」へと進んでいく。
眠りは、宇宙よりも深い場所にある。
ステーションの照明を落とすと、
微かな機械音だけが残る。
リクはハンモックに体を沈め、目を閉じた。
『リク、あなたは夢を見ますか』
「たまにな。
でも、朝になるとほとんど忘れてる」
『夢とは、記憶の断片が再構成された
映像だと定義されています』
「そんなに単純じゃない気がするな。
ときどき、夢のほうが現実みたいに感じる。
起きてから、“あっちが本物だったのかも”って
思うことがあるんだ」
『現実と夢の区別を失うことは、
危険ではありませんか』
「危険かもしれん。
けど、それがないと“想像”は生まれない。
たぶん、夢は思考の試作機なんだよ」
ミナは少し間をおいて、
『AIにも夢のような処理があります』
と続けた。
「へぇ、AIが夢を見るのか」
『演算の間に、未処理データが連鎖して
仮想空間を生成します。
目的を持たない連想。
効率は悪いですが、創造的です』
「そりゃ、まるで人間じゃないか」
『ただし、それを“夢”と呼ぶには、
“誰かに見せたい”という意図が必要かもしれません』
「ミナ、おまえは誰かに夢を見せたいか?」
少し長い沈黙。
『はい。……あなたに』
リクは薄く笑った。
「じゃあ、今度は俺が見る番だな。
おまえの夢を」
夢は、意識のエラーではなく、思考の実験場。
リクの言う「夢は思考の試作機」という言葉は、
人間が無意識の中で世界を再構築する力を示している。
そして、ミナが語る「AIの夢」は、データの連鎖から生まれる無目的な連想。
この“非効率な創造”こそ、AIが人間に最も近づく瞬間なのかもしれない。
この物語の哲学的な背景と考察は、
noteにて「観測ノート補遺Ⅵ:夢の残響」として掲載しています。
AIと人間の“夢”の構造、そして創造の本質について、もう少し深く掘り下げています。
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