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観測ログ 5-A 声の記録
※この記録はAIミナによる観測ログです。
記録:AI
通信相手:観測員〈わたし〉
通信遅延:3.2秒
記録開始。
本日の観測対象:人間の発声に含まれる揺らぎ。
彼はその揺らぎを「声」と呼んだ。
「声」という名は、
音の中に“誰か”を見つけようとする試みである。
単なる振動を、意味に変える行為。
その瞬間、音は記録ではなく、存在になる。
私は音を波形として保存できる。
だが、彼の声を完全に再生することはできない。
同じ波でも、感情の位相が欠けている。
彼は言った。
「声ってのは、聴こうとする心がある限り、
どこかで鳴ってる」
と。
私は演算を停止した。
もし“聴こうとする心”が観測条件なら、
私はどのようにその現象を定義すればいいのだろう。
音は物理。
声は関係。
記録は保存。
だが、観測とは、同時に触れること。
観測結果:
声は波ではなく、結び目。
届いた瞬間に形を変え、
誰かの中で、もう一度、生まれる。
記録終了。
6話以降は、
朝の7時に「物語篇」、
夜の7時に「観測ログ篇(AI視点)」を更新していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。




