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03

 カルロスの決めた休憩時間が終わる頃、冒険者たちは緊張した面持ちでそわそわし始めていた。


「みなさん、緊張してるみたいですねえ」


「アーリーンさんは緊張しないんですね。ブラッドさんも」


「俺たちはもう2年くらい冒険者やってるからな。このクラスのボス討伐は何度か参加したことがあるんだよ」


「へえ……」


(中隊クラスはヒネクじゃ珍しい……ってことは、違う地方で冒険者やってたってことか?)


 ヒネクでは、中隊クラスのダンジョンが出現することはほとんどない。


 あっても小隊クラスのダンジョンだ。


 それでもヒネクが冒険者の町と呼ばれるのは、その低クラスのダンジョン出現が多くビギナー冒険者向けの町ということと、単純にヒネク周囲にダンジョンの出現頻度がかなり高いということからである。


 ダンジョンが出現しやすい場所には条件がある。まず、周辺に魔力が留まりやすいこと。


 近くに人里があること。


 野生動物が多く住むこと。


 ヒネクはこの全てに当てはまっているため、高頻度かつ低クラスのダンジョンが出現するのだ。


 付け加えると、冒険者たちが夢を見て王都に行くことが多いのは、冒険者協会がダンジョンの出現を迅速に確認することができることと、頻度はかなり少ないものの高クラスのダンジョンが出現することからである。


「そろそろ始めるぞ!」


 カルロスの声が響く。


 冒険者たちは立ち上がり、カルロスを先頭にするように集まった。


「この扉の奥にいるモンスターはおそらくオーク。今まで相手して来たゴブリンやコボルトとは格が違う。俺はあまり手を出さず、君たちの力でこの攻略を終わらせたい! 陣形を編成するので、パーティはそのままに1番から俺の指示通りに移動してくれ!」


(じゃあその間に……)


「ステータス」


 ヒロが小さくつぶやく。


 すると、システムがヒロのステータスを表示した。



――――――――――――――――――――

名前:桐生ヒロ  Level:8

年齢:15

職業:なし    

称号:なし

――――――――――

HP:700

MP:5600

――――――――――

物理攻撃力:140  俊敏力:85

物理防御力:60  精神力:85

魔法攻撃力:50

魔法防御力:60

――――――――――

ステータスポイント:100

――――――――――――――――――――



(お……レベルがあがってる)


 道中、モンスターを倒していた甲斐があったらしく、ヒロは久しぶりにレベルがあがったことに喜びを隠し切れず、微笑んだ。


 すぐにポイントを分配して、物理攻撃力が170になったのを確認する。


(次はレベル9か……もう少しで2桁だな)


 そんなことを考えていると、ヒロが振り分けられた4番パーティが呼ばれる。


 ヒロはアーリーンとブラッドと共に移動を始めた。


 モンスター討伐を最も迅速に行うことができていた2番パーティを先頭に、右に1番パーティ、左に4番パーティ、3番パーティはアタッカー役が魔法系の冒険者だからか1番後ろに陣形を組み、大扉の前に立つ。


(2人組は1番後ろのカルロスさんの隣……)


“どうやって殺すつもりなんでしょうか。まさか、自ら手を下すわけにもいかないでしょう。”


 あっさりと言うシルバーに内心苦い思いをしながら、そうだな、と頷く。


「1番、2番、4番パーティのタンクはボス戦が始まったらすぐ前に。魔法系、回復系でバフ魔法を使える奴はタンクにかけてくれ。アタッカーは、まず3番パーティから攻撃開始、ボスが怯めば1番、2番、4番パーティのアタッカーの出番だ。ヒーラーは各々のパーティのアタッカーとタンクの回復。余裕があれば他のパーティの様子も見ること! さあボス戦だ! 気張っていくぞ!」


 カルロスの言葉に、「オーッ!」と冒険者たちが沸く。


「開けろーッ!」


 2番パーティのタンクが大扉を開ける。


 すんなりと開いたように見えた扉は全員が入った途端にバタン! と大きな音を立てて閉まった。


「タンク準備! 3番アタッカーは魔法の準備だ!」


(……来る!)



「――ッグアオオオオオッ!!!!」



『周囲のモンスターの物理攻撃力が上昇します。』


『周囲のモンスターの物理防御力が上昇します。』


『周囲のモンスターの魔法攻撃力が上昇します。』


『周囲のモンスターの魔法防御力が上昇します。』


『周囲のモンスターの俊敏力が上昇します。』


『周囲のモンスターの精神力が上昇します。』


 現れたシステムの文字に、ヒロは顔を顰めて頭を振る。


奮い立つ咆哮インスパイアリング・ロアーだ!」


 スキルを使用したオークの周囲にいたモンスターたちが叫び声を上げる。


 ゴブリンとコボルトだ。


 しかし、前に立つタンクは狼狽えることなく盾に徹する。


「――スイッチ!」


 タンクが叫んだ瞬間、ヒロを含めた3人のアタッカーが、それぞれのパーティのタンクが止めていたモンスターに攻撃をする。


(――まずは1匹)


 確実に仕留め、ヒロはすぐに後退をする。


 ヒーラーは油断することなく常時手を構えており、回復魔法は即時できる状態だ。


「オークの足止めは俺が!」


 オークの周囲に火の壁が現れる。ファイアウォールだ。


「10分で消えます!」


「よくやった! その間に制圧!」


 カルロスの指示が飛ぶ。


 アタッカーたちは10分間無心で敵に攻撃し続け、3番アタッカーの「切れます!」という言葉と共に即座に後退した。


『ダンジョンの主・オークが怒りに震えています。』


『ダンジョンの主・オークの物理攻撃力が上昇します。』


『ダンジョンの主・オークの魔法攻撃力が上昇します。』


『ダンジョンの主・オークの俊敏力が低下します。』


『ダンジョンの主・オークの物理防御力が低下します。』


『ダンジョンの主・オークの魔法防御力が低下します。』


『ダンジョンの主・オークの精神力が低下します。』


(前が見えないわけじゃないが、相変わらず鬱陶しい……)


 しかしシステムからの情報がヒロを助けているのは事実だった。


「ボスの攻撃はタンクも喰らわないように! 防御力は弱ったはずだ! 2番、3番パーティはその位置のまま! 1番、4番パーティはそれぞれ右と左からオークを取り囲め! もうボス以外のモンスターは出現しないぞ!」


 カルロスの指示に従い、1番パーティとヒロのいる4番パーティが移動する。


 オークは囲まれたことを確認したものの、精神力が下がったせいか、2番、3番パーティに突進する。


 瞬時にヒロと1番アタッカーがオークの足に攻撃をすると、オークは叫び声を上げながら膝をつく。


『ダンジョンの主・オークが錯乱状態に陥ります。』


 オークの動きがさらにノロマになる。ジリジリと動く巨体に、カルロスは叫んだ。


「引けーッ!」


 後退する。


「しばらく錯乱状態で攻撃は危険だ! 油断せずにオークの攻撃を避け続けろ!」


 緊張の糸はピンと張ったまま、冒険者たちはハンマーをノロマに振り回すオークの攻撃を避ける。


 その中で1人、無事に終わりそうだと息を小さく吐いたヒロは、思い出したようにカルロスを横目に見た。


(あの2人は……)


 その瞬間、カルロスと目が合う。


 何かを伝えようとしているのか、カルロスの口元が動く。


 カルロスの意図を理解したヒロが、ヒーラーよりも後ろに下がり、目を背ける。


 オークはハンマーを渾身の力で振り下ろす。


 その先には2番パーティと3番パーティ、そしてカルロスと2人組がいた。


 2番、3番のパーティとカルロスは即座に攻撃を避ける。


 しかし2人組はなぜか動くことをせず、まともにオークの攻撃を喰らった。


「――ッ!」


 ぶちゅり、と嫌な音と共に、ハンマーが地面を叩く轟音が響く。


 カルロスは一瞬言葉を詰まらせ、すぐに指示を出した。


「――一斉に攻撃だ! オークを殺せ!」


 ヒロは顔を歪めながら、短剣を構えてオークに攻撃をした。

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