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 追想行進華 —庭園の足跡—  作者: 玉袋 河利守
2章”貴方が選んだ形、拾い上げた物は
49/54

48”白の意味


 

 「おいおい、アレって‥‥」

 「この国にと‥‥なんで。」

 「目を合わせるな!粛清させるぞ!」


 「??。」


 黒く萎れた前髪、そのカーテンの隙間から黒い眼差しを向けて城に向かい歩く男。風が吹くたびに足首までの長さを誇る白きコートを靡かせながら、声が聞こえた方角に目を向けるが、目を逸らされてしまう。


 このコートも、そしてドレスシャツも全てあの日ぶりである。締まり切った硬い格好。今からレストランにでも行くかのような服装。その上に長いコートがあるお陰で、その印象を調和させてくれる。


 スーツのイメージを持っていた。しかしながら、着れば前の身軽な格好よりも動きやすく快適。言わば、戦場にすら持ち込める程のスーツ。火に燃えず、星が降ったあの日でも傷一つすら付かなかった驚く程の耐久性。


 難点としては、血がよく目立ってしまう事。それだけである。


 城の前までやってくる敦紫。自身の顔は知っている筈なのに、此方に見向きもせず敬礼だけを行うと門を開く。呼吸困難を引き起こす程、息が上がっていた門番達。


 「‥あれって戦鋼番糸だよな?」

 「、帝国の犬が何しに来やがったんだ。」


 先に帰って行ったオーラン達を探す為、城に入り飾られた壁画やら花瓶を手入れする飯使いに声掛ける。オーランは何処に行った?と、但し返答は返って来ず震えながら明日の方向に指を向けるだけ。口頭ではなく。指だけの誘導に疑問を受けるが、刺した指の先は大間だと分かり感謝を伝えて歩き出す。後ろでは声をかけた女性に人が群がる。


 「‥‥‥‥。」

 「貴方!?なにをしたの!」

 「‥まさかあの人、戦鋼番糸の人間だったのか‥」


 何故こうも人の接し方が変わったのか、疑問を浮かべる物ではあるがオーランに聞きたい事が山程ある敦紫。ラーガとフーガが戦った男の事も、皆の接し方が変わってしまった事も。ドクレスの容態も確認しなければいけない。


 ドクレスの今の状態は危険である。何せ、敦紫本人、経験してるのだから。


 「‥‥‥。(コンコン。)」


 ようやく辿り着いた。大間に繋がる扉をそっと触れて、音を鳴らす。そんな時


 「おぉーーい!!敦紫!!」

 「敦紫様ぁぁ!!」


 大半の人間の見る目が変わってしまった国でも、変わらず目の色を変えぬ者もいた。錆びて刃こぼれした剣が、不思議にも浮き此方に近づいてくる。そして、その剣よりも遥かに早く爆速で手を振りながら走ってくる女性。


 この国に何かあっては困ると言う事なので、大陸兵器であるペンドラゴラムをこの国に置いていき、虫除けの役割を果たしていた。そして、前方で猛烈な勢いで腕を振りながら走ってくるのはリリー。


 それは、凄まじい勢い。立ち尽くす白いコートに包まれた敦紫と杖を背負うリリーの距離はまだ離れていると言うのに、その身を宙に投げ出し、ヘッドスライディングの如く敦紫の胸元に飛び込んでくる。


 拒む理由は何処にも見当たらないが、身体を触れ合うのは此方が気を遣ってしまう。なので、走ってくる彼女そして飛んでくる武器に己の身体を向けて、肩を脱力し片足を一本後ろへと動かした。


 「敦紫さまァァァ!!」

 「敦紫ィィィ!!」


   バン!!!


 「‥‥あらら‥」


 音を鳴らした扉は、返答し開く。丁度開いた所にリリーの顔面はぶつかりブレーキが掛かる。それでも尚、扉などでは止まらぬ大陸兵器は扉をぶち破り、剣先を向けて敦紫の身体に向かう。


 「‥‥、(パチィン!!)」


 飛んできたペンドラゴラムを華麗に避けると、下げていた片足を上げて、身体を素通りするペンドラゴラムの刀身を容赦なく蹴りあげた。


 「あらら、僕はすぐ壊すね。二箇所の破損だよ。」

 「蹴り上げる必要はねぇだろ!?。あ、抜けねぇ」

 「容赦ないなぁ~敦紫は。」

 「容赦してたらこの先死んじゃうよ。」

 

 穴が空いた扉からは、マルクワが顔を出し


 「コラァ!!リリー、声が聞こえぞ!!そうなると思ったんだ。早く中にはいれぇぇ!」

 「‥‥いやぁ!!敦紫様ぁぁ!!」


 鼻血を出すリリーの首根っこを掴み中へと連れて行かれてしまう。嫌がる彼女、宛ら監獄にでも連れて行かれるのかと、そんな悲鳴をあげながら扉の中に消えて行った。


 「マルも容赦ないねぇ」

 「だね。」

 「で、抜いてくんね?」

 「いや。」

 「え?。」



  ———————-



 「クァ!!デェラァ!!ぐぬぬぬぬーー!!」


 外では踏ん張った音が盛大に聞こえてくる。はてなを浮かべながら、済ました顔でこの部屋に入ってくる敦紫に外で何か起きたのか?、と聞くが何もないそう答える。


 中に入ると、オーランとリリーを除き、驚いた表情と強張る表情をとった者たち。その全ての視線が敦紫に向けられている物だと分かった。先程から、妙な視線に陰口その全てが自分に対して、此処に来た頃はそもそも見向きもされなかった事が多い。なのに何故、今日に限ってこんなにも目立ってしまうのか。


 山程の疑問が生まれる中、一人の男のため息で謎は解明されてゆく。


 「はぁぁぁ。此処は集会所ではないのだぞ。何故、マルクワ君とリリー君がいるのだ。一般市民はそもそも入って来れない場所だ。」

 「良いんじゃん。そんな硬い事言わずに、僕の先生だよ?。靴を手にした僕に、歩き方を教えてくれる先生だ。部外者じゃない筈。」

 「‥‥はぁぁぁ。兎も角騒ぐのはやめてくれ。‥‥え?」


 隣では、ギチギチにロープで締め上げられたリリーが横に倒れている。その上でマルクワは胡座を描いてロープを持ち笑顔で「大丈夫です!」と答えると、またまたオーランのため息は深く長く吐き出される。


 「‥‥で、‥‥敦紫君は‥」

 「待ってください!!」


 オーランの会話を文字通り断ち切り、敦紫に向けて輝く剣を向けるヘレン。護衛として一緒に帰ったヘレンではあるが、ドクレスの容態も気になりこの国に留まることに。


 城の外を出れば、軽蔑した目で見てくる者に怖がる者が全て。城の中に入れば相変わらずと言って接し方が変わらない人達。しかしながら、一人だけ違った。外にいる連中とも違いこの城の中でも該当しない類の物。


 予想だにもしない光景。鼻先掠める距離に剣先。しっかりと研ぎ澄まされた剣先は、敦紫の喉元へ。この国で彼女だけが、真っ直ぐに殺意を放ち纏い向けてきた。


 その目は、怒りそのもの。止まる事はない。


 「ヘレン君?。何しているんだい?君とて、目に余る行為だ。この国で、この国の者である敦紫君だ。この国の王である私が‥絶対に許さないよ。‥‥悪い事は言わない—-


 「黙りなさいオーラン。」


 「あ‥はい。」


 その怒りに満ち溢れた目は、威厳を放つオーランに多大なるダメージを作る。王である物が縮こまってしまった。


 「敦紫様‥‥何故、貴方がその服を?」

 「貰っただけさ。‥‥あとさ‥」

 「貰った?。奪った訳ではなく?。手順を飛ばして手に入れれる物では決して有りません。正直に答えてください。」

 「嘘偽りない。貰ったよ。‥‥あとね。剣を向けたまま話さないでくれる?気分が悪い。」


 「此方も気分が悪いです。嘘吐きとお話しするのは‥‥」


 「ふぅぅ。君は何も知らないだろう。出しゃ張るな。」


 頑固なまでに動かそうとしない剣。震えなく真っ直ぐに敦紫の喉元に近づく。脅してでもなんでない。必ず、と言っていい、彼女は今目の前にいる男を殺そうとしている。周りで見ていた物たちは、この暗雲差し込める状況に止めようと動き出す。


 「‥‥、脱いでくれませんか?。そして正直に答えてくれませんか?。傷つけたくはありません。」


 「‥‥いやと答えたら?。」


 「‥‥」


 見てきたからわかる。短期間と言え天傘 敦紫の性格。何かしらのすれ違いはあったかもしれない。そう思い一度折れるような出来た大人ではない。此処で戦いが起きて仕舞えば止めれる人間なんていない。ドクレスも魂が抜けた状態。唯一止めれるかもしれない存在は廊下の天井に突き刺さり抜けない状態。


 言葉で止めれるこの瞬間しか、猶予はない。


 「いやと言うなら‥‥此処で殺しますよ。」


 「‥脅しばっかり。君も襲人と変わらないじゃないか。」


 「!?。クワと一緒にするなぁ!!」


 開けてはいけぬ、叩いてはいけぬ扉の返上は異常なまでの怒り。ヘレンの目は見開き声を荒げながら、喉に向けてその剣を突き刺す。その刹那、敦紫の手には小さな詠唱が描かれると、フワリと髪が上がり隠れていた黒く輝く目が現れる。


 この一体に浮く魔胞子は彼に集まる。喉に刺さる直前、彼もまた彼女の額に向けて魔法を放つ準備を整えた。同じ速さ、避けることなどできない時間と確実な距離。ぶつかり合えば、勝敗の要因は生きているか否か。


 剣先、喉にあたり、一滴、血が流れる。

 手先、額の前では焦げる程の熱さ、一滴、汗が流れる。

 そんな二人の足元には‥‥、小さな小さな生き物。‥生き物?


 「え??」

 「?。‥‥なんで此処に。」


 光る二人の攻一点。その真下には、大きくキョロっとした目を持つ小さな生き物。そんな生き物が二人の攻撃を見て頭を傾げている。


 「‥‥‥?。」

 「‥‥鹿?。‥にしては‥」


 頭を傾げる可愛げな動物。耳がありその横際には小さな角が生えてある。毛並みに鼻立ちにその全てが皆の知る鹿と該当する。ただ、それにしては身体が小さい、手に収まる程の小ささ。二人を見つめる可愛い動物のせいで二人の攻撃は、一瞬止まると


 「はーーい!!落ち着いてくれたまえ二人とも!ヘレン様も話せば分かる。敦紫君も少しは大人になってくれ。城が滅茶苦茶になる。」


 「退いてください。オーラン。」


 それでも退かぬ、ヘレン・クロリス。

 その傍ら、天傘 敦紫は


 「‥‥‥そうだね。オーランの言う通りだ。僕はヘレンさんの様に子供じゃないから。此処ではやめておくよ。」

 「‥ぐぬぬ。ふん!!」


 不貞腐れる。それはまるで子供の様に。二人の真ん中で両手を広げて話すオーランは、二人を落ち着かせる為長い長いテーブルに座らせようとするが、ヘレンはやはりゆう事を聞かない。呆れながらもオーランと敦紫は着席し、その他の者達も敦紫達についてゆく。そして、その場所で話が始まろうとする中、座らぬ者が約2名


 「‥‥‥‥。」

 「ヘレン•クロリス様。どうも、こんにちは。」

 「‥貴方は?」

 「私は、この国の孤児院で先生をしています。リリーです。」

 「‥‥それで、何かご様子ですか?」

 「‥‥いえ、ただ。私は‥貴方が嫌いです。‥それでは」

 「‥‥‥ご勝手に。」


 小さな小さな火花をあげていた。


 

  ———————-



 生まれていた疑問が、オーランのため息から始まり解明されてゆく。用意された紅茶を飲みながら横目に、柱に凭れるヘレンを眺める。彼女の顔は‥‥ご立腹の様だ。


 「はぁぁ、さぁ。何故、君がそれを着ているのかな?。」

 「‥貰ったよ。さっきも言ったけど。奪ってなんかいないさ。そんな襲人みたいな事しないさ。」

 「コラコラ。余計な事を喋らないでくれ!、とりあえず貰ったんだね。誰に?。」

 「‥ケイジュにだけど。」

 「呼び捨て!?」


 ラーガのお別れの後、しっかりと渡してくれた。初期の頃血まみれになって没収されたかと思ったが、丁寧に洗ってくれてまた僕に渡してくれた。着てもいい、そう僕は解釈している。フーガに関しては、この服について何も咎めたりしなかった。


 「一度喧嘩したラーガには怒られたけどね。」

 「ら、ラーガ!?‥‥え、あのカサード•ラーガ様のことですか!?」

 

 座って水を飲むマルクワは立ち上がり声を上げる。代百具マニアの彼ではあるが、指標はしっかりと存在してある。夢の様な存在、憧れの存在がラーガとゆう男。魔法や剣が生き生きとするこの世界で、拳一つで戦場を走る物も数多く存在する。その全てが、ラーガに憧れを持ってその道を進む者が多数。マルクワもその一人である。


 「‥喧嘩?ラーガ様と?。で、なんで生きているんですか!?」

 「殺すと言う選択をしなかったからじゃないかな?」

 「‥‥?。」


 何はともあれ、ラーガにも許可は得ている。そう僕は感じ取った。だからこの羽衣を羽織っているのだ。着て良い物、着てはダメな物なんて僕が決める。君達が決めることじゃない。


 そんな中、謎が一つ解けた。僕が今羽織っている物は、戦鋼番糸を象徴とする礼装。そしてセンテインピードを住処とする主人の色を直食した礼装。

  

 そもそも戦鋼番糸とはなんなのか。遥か昔、この世界に国などは存在しなかった時代。そんな昔から名前などなくこの大陸の中心には一つの建造物があった。それが今のセンテインピード。そして、そのセンテインピードには廊下で突き刺さる物体と同じ代百具が保管されている。


 この大陸を崩壊へと誘うそんな武器が代百具(フェンネル)。それらを保有して、秩序乱すものを即刻、粛清する存在。それが戦鋼番糸。国の外で人を襲う存在、襲人だけに留まらず、この大陸の生き物達が全て該当される。


 一見此処まで聞けば、何も怖がる必要はない。ただ、悪い事をしなければ良いだけの話。戦鋼番糸に所属する人間の匙加減で善悪を決めるような頭の可笑しい連中でもない。


 生きていれば備わる善悪を見極める事が出来ればないも問題はない。


 「‥‥、君含め、彼ら自体、変わり者は多いが問題はないのだ。だが、入隊の仕方がねぇ。どうも皆の心に触れるんだ。」


 何度も話に出てきた武力国家、ルガルド帝国。そこには、王国騎士になる為、屈強な者たちが行き着く場所。そして、皆が足を運ぶ場所が、羽流掌ノ(アテネ)と言う剣と魔法、その他諸々戦うための技術を学ぶ学校が存在する。入学の年齢は自由、約4年満期で修了試験を行い合格すれば、晴れて王国騎士として剣を振れる資格がもらえる。


 毎年数百人と合格者が出ている。皆、母国や親しみのある国にその卒業証書として与えられる武器を手に持ち旅立つ者も居るが、止まる者もいた。


 「‥戦鋼番糸に入隊できる資格も‥‥ルガルド帝国で取れる事が出来るんだ。合格すれば、晴れて敦紫君の様なコートを羽織る事が出来る。」


 そもそも、何故みんな王国騎士になりたいとのか。正義感が強い、育った国を守りたい。そんな綺麗な動機を持つ者も居るが、一つの要因として国から出る騎士給金。この国でお金を稼ぐ通りは沢山ある。自分のリゲイトを活かし商売する者や芸として人前に立つ者。はたまた、リゲイトでは行かせぬ技術を用いて働く者。それが大半。


 しかし、騎士になれば前者に挙げたお金稼ぎよりも、沢山貰える。数で表すと十倍は軽く超えている。だからこそ、騎士給金を目指し、家族を持つ男達、はたまた汚い親は年齢制限がないのだから、若く動ける内に子供を帝国に行かせる。


 生きている間に使えない程の金貨の山、それを貰えるのなら、当然地獄の様な訓練が待っている。その過酷さゆへ、途中退場する者も多い。退場したからと言って、罰則があるわけでもない。だが、途中で辞めてきたそう言い帰ってきた者たちは、中途半端だど馬鹿にされている。


 「‥、お金に目が眩んだ獣か、正義感の表れかどっちかだね。‥‥どっちもごめんだよ。僕は。すごいねドクレスもあのお子ちゃまも。」

 「コラ!一々余計な事を言わないでくれ!。」


 そんな苦しい試練を約4年乗り越えて、ドレクスやヘレンの様になる。彼らの様な金では変えれない志がある者だが、大半はお金目当て。


 さて、王国騎士として名を売っていけと、資格を手に入れた。ならば、後は帰るまで。‥‥なのだが、修了試験に合格した者はある選択を設けられる。


 「‥。戦鋼番糸に入らないかと。‥‥、王国騎士としての肩書きは無くなり、富もなくなる。力で自由を意味し、大陸全土を見渡す目とならないか‥と。‥‥敦紫君ならどうする?」

 「‥はは、断るよ。面倒くさい。」

 「そうだね。みんな断るんだ。」


 そんな選択を設けられたからと言って、富が手に入る間際、断る以外の選択肢などない。だが、力ある者、正義感が強い者達は、その選択を選ぶ。初からそれしか眼中になかったかの様に。


 「突如入隊したラーガ様の影響は大きかったのだろう。彼は偉大な人間だったよ。」


 戦鋼番糸の道を選んだ。今までの過酷な試練で得た経験も知恵も捨て、富も捨て、その道を進む。


 ただ、その道を選んだだけ、ゴールはまだまだ先にある。


 「‥‥殺し合いさ。‥最後に生き残った者が‥戦鋼番糸として歓迎される。選んだ奴も、殺し合いを承諾した奴も、全員頭が可笑しいよ。」


 正義ある者も、強さを知る者も、若くして儚く散ってゆく。だからこそ現代では、王国騎士ともなる人間の貧弱ぶりにはため息が出る。


 富に目が眩んだ者は、景色が変わる。振る剣に鈍りや濁りが出る。そんな者たちを国の守り神として迎えるのは嫌だったオーランは、これまで王国騎士団と言う物を作らなかった。


 そして、そんな試験があると噂が周り、戦鋼番糸のトレードマークである白いコートを見かけると、殺し合いをして生き残った人間として、怖がられる。躊躇もなく何百人もの命を奪ったと軽蔑した目で見られる。

 

 「‥‥毎回毎回あるのかい?。このコートを羽織る試験。」

 「いや、数回程度さ。確かフーガ君もそうだったよ。基本的には、そのコロシアムを生き残った者が羽織るんだそのコートは。」

 「‥‥へぇ。」


 戦鋼番糸として、この白き礼装とコートを身につければ、皆に憧れる様な肩書きでもなく、お金も貰えず、人々とから軽蔑した目で見られる。その全ての代わりに『自由』を手にする事が出来る。


 「‥、どの国も無断で侵入オッケー。そもそも襲人すら喧嘩売ってこないから、呑気に大陸を歩き回れる。召集もない、先輩後輩の上下関係もない。一つだけ縛りがあるとするならば、戦鋼番糸の長であるケイジュ様のルールを守ることぐらいかな?。」


 誰の味方もしない。

 秩序乱す物は、誰であろうと即刻削除。

 それが、一個人の人間でも、大国であっても。全て。


 「それなら、匙加減ってことじゃないの?。」

 「‥違うってケイジュ様は言っているからねぇ。反論しても意味ないよ。‥頑固お爺ちゃんだから。」

 

 怖がられる理由もある程度理解出来た。ヘレン様が言っていた順序を飛ばして羽織れる物でもない事は理解した。この服を着ていれば自由は確証させる。僕にとっては好都合だ。でも、


 「‥、そんな戦鋼番糸ともあろうお方が、二人がかりで裁けなかった人間がいるのかい?」

 「‥‥、そうだね。上には上が居るんだ。」


 騎士としての資格を取るため、地獄を生き延びた者たち。それに加えて、強者ばかりが集まり、ただ一人生き残った者が戦鋼番糸として自由を獲得できる。力を意味として歩く、それが彼らの業務内容だ。


 その世界に来て、一番焦ったのはフーガとラーガの 達だった。強かった。‥歯止めが無ければ僕は死んでいた。ラーガのリゲイトも、フーガのリゲイトも厄介そのもの。そう簡単にやられる筈がない。そんな彼らが何故。


 「‥、聞くかい?ラーガ様とフーガ」君が太刀打ちできなかった人物の事。」

 「‥‥、いいや、仇取るつもりもないし、噂されるスイレの勇者様でもないんでしょ?僕には知る必要はないよ。」

 「あるよ。十分に。知っておいても。今日、ケイジュ様から聞いたんだ。」

 「え?。」


 「‥‥、名を。アスター”アニス。君と同じ『皇種』の力を持ち‥、半年前、スイレ王国の国王に『転移』の助言をした人間。‥‥」


 「‥‥え、」


 「彼が‥‥。異世界人を呼んだ。張本人。」


 

 

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