46”届かぬ声すらも書き換えて
本来ならば今日『大異本棚』に案内される筈だった。この大陸の行末を記された書物『花言葉の書』を確認する為に。解読不可能な文字も、元いた世界の僕ならもしかして読めるのではないかと。リズル•ゴールド王国を手がけた建国者ガリス”エンパテリオンとゆう人物が描いた書物。
それは国の遺産ともされ重要な物。認知すらされていない機密な情報。噂が直ぐに出回るこのトロイアス大陸では、細心の注意を払わなければいけない。それに加えて、最近、その遺産とも言える花言葉の書を何者かに盗まれる不祥事。
この事を知ってしまったドクレスと共に、装備を固めて王城の広間で、この国の王オーランと待ち合わせをしていた。早朝にも関わらず、慌ただしい雰囲気に頭を傾げるドクレスと僕、少し時間を遅れて走ってきたのはマリーさん。息を荒げて、自分が着るお召し物を持って執事と共に僕らの横を素通りする。
女の子だから、服装を決めるのも大変なのだろう。そう思っていたのだが、ようやくオーランがやってきた。だが、いつも着ている国王の雰囲気をたっぷりと出した服装でも、動きやすい軽装でもない。黒い靴、黒い上下に身を包んだ礼装でやってきた。
そして、聞いてしまう。元いた世界も、此方の世界でもあり得る話。戦場や魔獣に襲人、命が消えてしまう要因が五万と有るこの世界では、悲しくも予想できてしまう話。
先日、戦鋼番糸カサード”ラーガが死んでしまった。
その事を伝えられた。すごく仲が良かった訳ではない。僕はそうなんだ、と、返すことが出来て呑み込む事だけは嘘でも出来た。でも、ドクレスは違う。ラーガは、彼の師匠。全てを教えてもらった師、超えるべき壁であり、家族に近い存在。
冗談だ!!っと、仮にも一国の王の胸ぐらを掴み冷静さが欠けていた。当然だ。当たり前だ。ドクレスの力も軒並み外れた力。召使の者が多く集まり落ち着かせようとするが、止まらぬ悲しみの揺動を止める事は出来そうに無かった。
僕が止めれば直ぐに襲え込めただろう。でも、止めなかった。いや、止めれなかった。僕も気持ちを抑えるので精一杯だった。偉そうな奴ではあった。でも、歩き方を教えるなんて言って勝手に死ぬなと、あの白いコートを羽織る許可もまだラーガには貰えていない。‥‥いつも突然だ。突然やって来るんだ。
そう思うと、押さえていた彼の事を思い出してしまう。
ドクレスの様に僕も何も言えていない。と、
現実はいつか受け止めなければ行けない。僕もそうやって生きている。少しだけ落ち着いたドクの肩を叩き、オーランと同じく礼装を借りることになった。知る者同士、最後ぐらいは花を添えてあげたい。
着替えている最中も、ドクの身体は大きく、入る寸法の服を探すのに難儀して「筋トレしすぎだよ」と和ませる会話も彼には聞かない。話すら届いていない。
ようやく着替えが終わり、早急に馬車へと乗り込むと物凄い速度でセンテインピードへ向かった。残念ながら僕はオーランやマリーさんを守らなければ行けない。王国騎士であるドクレスには動く気力が無いとゆう事なので、僕は馬車の中には入らず、馬車の上に乗り移動するとゆう少し可笑しな絵で向かった。
運が良かったのか、一人も襲人は襲って来なかった。とゆうよりも見かけなかった。僕が服を奪ってしまったあの人達に服を返そうと、住処を探すがそれすら見当たらなかった。
無事、僕が最初に降り立ったこの森に入る事が出来、センテインピードの門の前までついた。人の数は物凄く、馬車を止める。
「‥まさか、こんな形で此処に戻って来るなんて‥‥」
「だね。まさか、ラーガ君が‥‥とりあえず、ドクレス君を頼むよ。」
「うん。ドクもだけど、‥‥。」
予想するまでも無かった。戦鋼番糸を知らしめる白いコートすら羽織らず、門の端っこで座り込むフーガの姿。ラーガが相棒と言っていた男。僕やドクレス以上にくる物がある筈、声をかければ逆効果だ。今はそっとしておく状態、先に門を潜っていったオーランとマリーさんを追う様に僕たちもこの門を潜ろうとすると、
「‥‥異端者か?‥‥はは、久しぶりだね。」
「‥あぁ、久しぶり。」
「一つ‥‥聞いてもいいか?。交えたお前に聞いていいか?、」
「うん。僕で良かったらなんでも良いよ。」
「俺は‥‥‥弱かったか?。‥‥呆れる程‥弱かったか?。‥‥、ラーガの隣には相応しく無かったか?‥」
何故、そんな事を聞くのかはその時の自分は分からなかった。だから「どうだろう?‥でも楽しかったよ」と答えてしまった。答えになっていないだろう、と、鼻で笑われてしまった。
「‥、後で話に来るよ。先ずは、顔見てくれね。」
「あぁ、最後は許可ぐらい取ってこい。」
センテインピード、久々に見たけれど、初期の頃僕とラーガ達がやらかして、歪ませた塔はすっかり治っている。でも、何故か最初に見た頃の高さがない。この世界の光景に目が慣れて、そう思うだけなのか。それにしては、最初に見た高さと半分程違った。
門を潜り、中に入ると沢山の参列者達、知らぬ顔ばかりで物珍しいそうに歩く僕の顔を見る者達ばかり、一番前の席では、懐かしのケイジュさんが座っており僕とラーガ達の喧嘩を止めた女性まで座っていた。色々とあり過ぎて名前は覚えていないが
「どうも。お久しぶりですね。」
「そんな日にち経っておらんじゃろうが。」
「貴方もこの前は‥‥」
「‥‥‥‥。」
ケイジュは相変わらず、しかし白い髪をした女性には嫌われているのか、無視されてしまう。
「ほれ敦紫、今度は汚すんじゃないぞ。洗濯するのワシなんじゃからな。」
「‥‥‥あぁ、そうだね。」
白い百合の花を持ち、僕はラーガの眠る場所までやって来る。白い棺の中に、目を瞑ったラーガの姿、百合の花に埋め尽くされたこの棺を見れば、どれだけ慕われていたか愛されていたか一目瞭然だった。隣で百合の花を添えるドクの顔はぐちゃぐちゃになりながら、語りかけていた。
「‥ラーガ。‥僕の事覚えているかい?‥‥君たちのコートを無断で羽織った無礼者。‥歩き方を知らなかった馬鹿者。覚えてる?‥‥」
そっと、百合の花を添える。死んだ者の身体は恐ろしく冷たい、肌で実感し心で味わう。
「‥僕さ、ずっと借り物ばかりでね。コートとこのスーツ着ても良いかな?‥‥、」
百合を添えた片袖、よく顔を確認できた。何故だか少しだけ微笑ましい表情、悔いがあり、やり残した事がある人間では到底出せない、表情。
「‥、君が許してくれたと選択して、その顔を見てこっちで勝手に羽織らせてもらうよ。駄目ならダメで向こうに行って、また星でも降らしてくれたら良い。‥‥君の、君だけの概念は素晴らしかった。‥‥ふぅ
さようなら。‥‥歩き方を教えてくれた者よ。
泣き叫ぶドクレスの背中を摩りながら、僕はこの場内から出て行こうとする。ケイジュから貰った服は持って帰って良いとゆう事なので、また来ます、とお辞儀をして出て行こうとする。物凄い人の量に体制を変えながら出口に向かうと、小さな小さな子供に笑顔で手を振られた。子供だからか、皆と同じ様な服を着ていなかった。笠の様な物を被っていた。
身に覚えはない。一度、接点が有れば忘れないのだけど、相手が子供であれ、無視をするのは失礼に値する。僕も笑顔で手を振りえすと、何かにぶつかって動きが止まってしまった。
「‥すいません。‥‥、人が多くて怪我は無いですか?」
「‥‥ない、安心しろ。‥‥やはり生きたか。それは、ケイジュからか?」
「あ、はい。そうですが‥‥」
ぶつかった相手は、また知らない相手、艶のある白色の髪の毛に眼鏡をかけた男。身長も低くお世辞にも普通と言えない肥えた腹。
「そうか。なら、下手な真似は慎む事だ。歓迎する‥‥若種よ。」
「あ、はぁ。」
テクテクと音が聞こえてきそうな歩幅、その男もまた白いコートを羽織っているので先輩なのだろう。あまり、興味を惹く点はなかった。だから、会話はせずお辞儀だけ済ませると、ふむ、と言い捨てケイジュの元へと歩いてゆく。
変わった人間が多いなと思う中、不意に振り返ると、絨毯の上で大量にいた人達が一斉に道を開ける異常な景色。驚く僕の耳からは、「エピス!!」とあの眼鏡をかけた男に声をかける先程の少年の姿。
何処ぞのお偉い子供達なのかと、どちらにせよ僕には関係のない事、向けた首の向きを戻して下を向くドクレスを連れてこのセンテインピードから出ていった。
僕が出た頃には、マリーさんとオーランも全て終えていたのか馬車の前で待ってくれていた。門の前で魂が抜けたフーガと話さないと行けない事があるので、少々持って捉えないかと聞いてみるが、ヘレンさんもこの場所に来ていたみたいで護衛は任せろとの事。
僕は甘えて、ヘレンさんに護衛を任せて馬車で国に帰ってゆく皆んなに手を振るうと、フーガの隣に座った。
「‥どうだった。許可は貰えたか?」
「うん。多分。」
「‥‥どうすれば、どう言った感情になれば、死に際、笑えるんだ?」
最後の最後までフーガはラーガの背中ばかりを見ていた。衝撃的な光景は、その脳裏に焼き付いている。彼の口から語らずとも何が起きてそうなったのか、事実を知っても僕も分かりはしない。
何故、死に際笑っていたのか?。など本人ではない僕は当然分からない。
「‥名前、なんだったけ?」
「‥天傘 敦紫。」
「敦紫君も、基本戦いの最中は笑ってるでしょ。‥それと同じなのかと思ってね。」
確かに気味の悪い笑顔をやめろと、ドクに言われた事があった。しかしそれは戦いの中であって、死に際ではない。ラーガは殺された。話を聞くと、この大陸でも恐れられる存在に、そんな相手に身体を貫かれて死んでいった。
僕も、殺される瞬間に笑えるだろうか?。僕は死を快楽とは思っていない。どちらかと言えばまだ死ねない理由が沢山ある。ただ、どうしようもない時は抵抗はしないさ、死んだら‥彼に会えるんだもん。悔いも残らないさ‥‥あ、そうか。
「‥‥、僕は殺されたそうになるその瞬間、笑わない。‥‥真顔だと思うよ。」
「そうか‥‥君でもか‥、良く分からない男だったよ。」
「でも‥‥。自分から死んだなら‥笑顔かも‥‥死因が誰かに殺されたとしても、ね。」
「え?。」
全ては伝えなかった。どうせこの気持ちも限定的。彼を失った僕だから、会いたくて会いたくて仕方がなかったら、いつでも倒せる相手であっても、語らず雰囲気でお願いすると思う。これは単なる憶測だ、ラーガは何を思って何を選んで死んでいったのかなんて、分からないし聞かない。
棺て眠る彼は、安らかな顔だったから。
顔を見れて、勝手に許可を取れて、僕の心には折り合いがしっかりとついた。この世界で歩く為の靴の履き方を教えてくれたのだから、見っともない歩き方はできない。彼と同じくラーガも見てくれていると思うし。死んだから全てが無くなるとは‥僕は思わないんだ。
「‥僕ね、君の様に相棒みたいな子を死なせてしまったんだ。」
「‥‥‥。」
「‥後悔ばかりだった。彼に会いたいって必死になって死のうとした。でもね、ある時、僕の声が届いた時があったんだ。この世界にあるありとあらゆる奇跡の術を持ってしても説明できない様な事が、‥
一つ‥‥君に質問だ。」
「なんだい?。」
「君に定義を聞く。君の知る君だけのラーガは消えたかな?」
こんな使い方、無理に決まっている。
「‥、はは、どうだろうな。何処かで私のふとしない所で見守ってくれている。‥そう信じるよ。」
「そう。」
これは、優しさに該当するのだろうか?。人の定義を変えれる事はできるのだろうか。この力を説明した時は、そんな事は言っていなかった。ただ、望めば望むほど、種であると思えば思う程、力の形は変わってゆくと言っていた。
「‥人として死んだ事に変わりはない。人として出会える事はもうないかもしれない。それが、この世界の『死』。でも、言葉は話せなくとも、形が見えなくとも、何処にいるかは分からなくとも、ラーガにとってこの世界へ想いがあれば見てくれている。それがこの世界の『死別』。」
「難しい事ゆうね。いいよ。それで少しは元気を貰えたよ。」
「これは‥‥僕が決めた事だ。‥、僕が個人が‥‥大概だ。」
他の種を持った連中は、何か勘違いしている。その力を使い国を脅かす様な事は馬鹿だと思っている。偶然でも手に入れた力、皆が怯える様な力を僕は否定しよう。
「そう。祈るかい?」
「‥‥あぁ、祈っているよ。君のその定義を。」
「ふふ、祈るも何も。元々そのつもりだよ。」
【概念】|戯ぎへ届けよ偽りの真実《テクスチャン’レガシー》
額に指を教えててそう唱えた。そう唱えただけ、何か輝きが溢れる様なことも、風景が変わる様な事もない。何も起きる筈がない。でも、これが僕にとっての、力の使い方であり、優しさである。
引きずっては歩いていけない。死なず、目的を果たす為歩いて行くのなら、しっかりと背負い生きなければならない。それは、この世界に来て僕が学んだ事。それを教える様に種の力をあたかも使った様に見せて、伝えた。
「‥何したんだ。」
「何も、していないさ。君の考えを君の大概を僕が承諾したまで‥‥。」
「??。」
「気にしたくて良いよ。」
僕はそう言い残すと、動きにくい礼装を脱ぎ、白一択のシャツとボトムスを着る。そして、戦鋼番糸の白きコートを羽織りこのセンテインピードを後にした。
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「ほらぁ!傷を手当てしてまだ時間も経っていないのに、下手のことして!傷口開いているじゃないですか!」
「それぐらい、なんてこのないですから。ほっといて下さい。」
「駄目!!脱げぇ!」
「え、こわ。」
舗装された道の外、長く変えた雑草に座って仕舞えば大人ですら確認が出来なくなってしまう。そしてその奥手には、一本の樹木と何故か不思議にも咲く長い茎を手にしたお花達。
樹木の陰で、丁度いい気温であるこの場所で服を脱がされて手当てされるアニスの姿。
「‥‥、手当するときは、器用になるんですね。」
「当たり前じゃないですか。それが私の‥ってデカ。え?。ずる。」
リズルの国へ向かう途中であったアニス、しかしながら色々と起きたもので来た道を戻ってきてしまう。ヒヨドリの森を超えて気がつけば、あのスイレ王国が見えて来るところまでやってきてしまった。
ふと通りかかる惑わしの森で、傷を手当てすると言い結朱華はアニスの背中を押して入ろうとするが、アニスとは違い結朱華は只の人間、逸れて迷うのが見えている。
手当てをすると聞かぬ彼女ではあるので、傷口が開いたアニスは彼女を担ぎ、ふと見かけたこの大地には珍しく一本だけ生えた木で身を休める事になった。
「‥、結朱華さん。ついでにこれを巻くの手伝ってくれませんか?」
「え?。態々?‥‥まぁ、良いですけど苦しくないですか?隠す必要あります?‥‥まさか‥‥そんな過去が!?」
「一人で会話を進めないでください。はぁぁ、貴方が想像する様な事ではありませんから、」
古く刻まれた傷跡が無数にあるこの身体に長く長く伸ばして何重にも巻いてゆく。力強く引っ張り最後は硬くしめる。いつもは一人でやっていた全て、傷の手当てすら無知である自分で行なっていた身体は、痕が残る身体。
太陽が真上に登り、この木一本では完璧に遮る事ができなくなってしまった。樹冠の隙間からは忽ち光の柱が結朱華の目を刺激すると目を細めてしまう。そんな細めた目で、痕となる箇所を優しく撫でている。
「‥‥、綺麗な身体がこんなに‥‥。」
「何故、肩を持ったのですか。‥何故、傷を癒すのですか?‥‥、」
「?。友達だからですよ?。当然じゃないですか。」
「友達?。何を馬鹿な。」
「だって、口喧嘩したんですから‥」
馬鹿だと豪語するアニス、加えて喉から出そうになるある言葉を止める為、必死になり会話をする様になる。思い出しては行けない事、気づいては行けない事、お母様との約束、その約束が自分が歩いてきた道を否定してしまう。
彼女の側によると、漏れてしまう。弱い自分から出てしまう言葉。だから、言わぬ様、バレぬ様、隠し、語る。
「‥‥私は、一人で十分なんです。‥‥、誰にも見られぬ所で、その矢を光らし—-
「あ、もう話長いので大丈夫です。」
「へ?」
服を着るアニスの目の前で、着ていたズボンをあげに挙げて光った人差し指をアニスに向けた。
「と言う事で!一言物申ーす!!」
「‥‥それ大丈夫なんですか?、もう知りませんからね私。」
「何がですか?、そんな事より!此処で全て話して頂きますよ!私はカウンセリングも担当している身、貴方の様な人は!吐き出すのが大切です!!」
馬鹿馬鹿しいと思った。話し何が変わるのかと。‥お母様は戻ってこない。費やした時間は戻ってこない。何を今更と鼻で笑いました。それなのに彼女の前になると何故か身体が言う事を聞かなくなる。鼻で笑った私の口元は機敏に動き出す。
「私には大切で大好きなお母様がいた。偉大な人間であった。孤独に矢を放ち平和を脅かす芽だけを撃ち抜く姿は私を魅了さした。そんなお母様に私は全てを教えて貰った。」
「‥‥かっこいいママだったんだね。」
偉大なお母様の元で育った。考えも、行動も全て幼き頃に見せられたまま、私の身体は動いている。大自然に囲まれた小さな家で私は育った。身体の大きな父親とお天馬なお母様に私は言葉遣いと愛を教わった。戦う技術は必要ないと言われ、戦闘面での知識は何も教えては貰えなかった。
そんな時、私に可愛い可愛い弟が出来たのだ。私も変わらない餓鬼ではあったが、そんな私ですら優しく触らないと壊れてしまうのでないかと、お母様の腕の中で泣くカミラ。恐る恐る手を頭の上に乗せて優しく撫でると、何とも素晴らしい笑顔をくれたのだ。そんなカミラをみて私はその笑顔を守りたいそう思った。
守りたいからと言う理由で私はお父様とお母様に頭を下げたのだ。断られる、そう思っていたが、難なく頭を縦に振ってくれる両親。そこからは速かった。ずっと隣で見てきたお母様の弓の扱い、そして才能があったのか魔胞子の視力量も直ぐにお父様を抜かしたのだ。
「アニスちゃんはすーごく強い!弓の扱いももしかしたら私以上になるかもよぉ。」
「ほんとに!?」
「うん!!でもね。まだ、アニスちゃんの目で、その弓を使い矢を放つ事はしては駄目。しっかりと目を使わなくちゃいけないの。」
当時は訳が分からなかった。見た物に狙いを定めれば百発百中。それなのに、目を鍛える?子供の私には分からなかった。
絶え間のない平和を謳歌するひと時、誰にも邪魔されぬこの森で私は弓矢でもなく魔法でもなく別の事について教えて貰っていた。これがまた中々の難しさ、お母様が王国騎士団になる前、ある国で教わった趣味の様な物を私に受け継いでくれた。
それが出来たからと言って何も変わらない。しかし、想い出が蘇るそんな魔法を教えて貰っていた。
楽しく、幸せな時間。だがそんな時間も少しづつ少しづつ人間の手によって壊されていった。




