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 追想行進華 —庭園の足跡—  作者: 玉袋 河利守
2章”貴方が選んだ形、拾い上げた物は
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39”勝手が悪い因果であると


 

 翔とカミラが皿を求めて、惑わしの森に向かう。


   ———同時刻。



 「はぁ、はぁ、‥‥何の真似だ。」

 「何の真似?。勝手な事はしていない、私に貸して頂きたいだけなのです。」


 また何処かで、足並みを揃える者。


 「はぁ、はぁ、貸せるわけないだろ。」

 「‥‥。聞き分けが悪いですね。何も隠れて盗もうなんて思っておりません、そんな勝手な生き物ではございません。」


 息を荒げる1人の男。膝をつき片手には鞘から抜いた刀を杖代わりにして体制を保つ。此処は、名前の無い森。自然に生えて塊となった場所では無く、ある物を守る為植えられたであろう木。意味を設けてしまった自然。


 そんな森で、不穏な空気が立ち込めていた。


 「‥にしても、戦鋼番糸(せんこうばんし)ともあろう方がこのザマとは。」

 「黙れ!!」

 「おぉ、威勢はあのガキ並。ですがそんな力じゃ『秩序』も守れないですよぉ。この国には貴方よりも強い人間が五万と居ますから。」

 「知った様な口で!はぁ、はぁ、どれだけ挑発しても、渡す訳には行かない。」

 「えぇ、事実ですから。貴方なんかよりも遥かな距離を歩いた。知った様な口は何方でしょうか?」

 

 少しの会話をした時間。それは極限状態の中での休息の時間。膝を突き白いコートを靡かせるのは、フーガ。戦鋼番糸であり、センテインピードの門番を務める者。そしてフーガの目の前に立つ男の名は、


 「何が、目的だ。アニス!」

 「ふふ、初対面で呼び捨てですか?勝手過ぎますねぇ。礼儀からお勉強しては?」


 今日も変わらず、1人を除き誰も利用する事がない門の前で、警備を行っていたフーガ。いつもの様に欠伸を描き、平和を謳歌していた最中、センテインピードを囲う森の一箇所で途轍もない力を感じとる。


 これは、あの女性が持つリゲイトの力や凛道 翔が見える物とは違い、ただの勘。恐る恐る腰に遣わせる刀に手を置き、自身の勘が叫ぶ場所まで足を運ぶが、そこには何も無かった。気のせいかと、警戒心を解いた時背後から声が聞こえ振り向くと、黒一端、正装に包まれたアニスが笑みをこぼし立っていたのだ。


 噂は常々聞いている。アスター”アニスの悪行に、悍ましい程の精度を持つ弓の精度に、そして『皇種』の力に。顔を見るのは初めて、しかし名を聞かなくとも身体が知らせてくる。これがアスター”アニスだと。


 言葉を交わす事なく、刀を抜き攻撃を仕掛ける。『秩序』を乱した者には容赦のない粛清を下す。それが戦鋼番糸だったのだが、一つも攻撃を当てる事出来ず、カウンターまで喰らってしまう。


 「‥はぁぁ、私は物理は得意じゃないんですよ。そんな私の拳でこのザマではね。」

 「はぁ、驕るなよ。」


 2人の会話は動きを止めて行なっていた。ならばそれはフーガにとって回復の時間となっていた。少しだけ落ち着けた。そして息を整えて目にも止まらぬスピードで納刀、続いてフーガの術である『天歩』を使い瞬き一つでアニスの懐に潜り込む。


 そして、残像をつけて抜刀。この行動までに経った時間は実に3秒。だが、視界には映り込む。


 抜刀し鞘から火花が上がる刹那、フーガの前方、アニスは構えを終えて何処から出したのか知らぬ禍々しい黒色の弓を持ち、矢を引っ張り後は手を離すまでの動作を終える。この状況でアニスの顔は笑顔のままである。


 「《《単調》》、《《単調》》。単なる素振りなら他でやってください。」


 全身全霊の抜刀術、幾度となくこの技で輩を落ち滅ぼしてきた。だが、相手が悪かった。フーガの刃が届く前に至近距離から膨大な魔胞子(バーベ)を帯びた矢が飛んでくる。それも顔目掛けて。この抜刀の動作を止める事も避ける事も、この早過ぎる世界では不可能。


 フーガの人生、最後の景色はアスター”アニスの滑稽を纏った笑顔で終わる。そして、今アニスの手から矢が飛び立つ。


 「ん?」


 矢が動いた瞬間、アニスは声を漏らす。


 2人が動く速度の世界に、二人の者では無い手が真ん中に、その手はフーガに近づく黒き矢を鷲掴みにする。止まった矢だけ、フーガの動く刃は遅れてアニスの首元に接近する。アニスはその刃を目で追い「ふん。」と言いながら目を瞑り身体を後ろに落とし避ける。


 標的に当たらなかった刃は円を描きて、全身全霊の刃は止まる事を知らず、アニスの矢を鷲掴みした者に向かって命を喰らおうとする。しかし、それすらもう片方の手で鷲掴みすると、事無くを終える。


 「あれ?これはこれは久しいお方。元気でしたか?バランスの取れない‥‥!?」


 パリィン!!と、音を立ててアニスの目の前で動きを止めた矢が、握り潰される。黒く輝くガラスの様な破片とその音により一瞬我を忘れた。そして、弾けた矢の破片が舞っているその先から硬い硬い拳が突き破り、アニスの頭部目掛け命中する。


 センテインピードを囲う森の一箇所から、音と振動、そして煙が上がった。


 「喧嘩を吹っ掛けるのが大好きな奴だ。」


 空気が火傷する様な拳、それが顔面に命中した。その拍子に光の速度で吹き飛んだアニス。辺りに生える木を何本かへし折り、盛大に砂埃が舞う。普通であれば死んで当然の事。だが。


 「‥、変わらず容赦のないお方だ。そのちっぽけな人間が先に刃を向けてきたのですよ?、だから私は身を守る為、身体が動いただけ。」

 「ふん。お前はそんなに喋る奴だったか?それに、先ほどお前は、魔法を密かに放とうとしただろ?。止める為に殴った。」


 チラリと流れる鼻血をハンカチで拭き取り、何も無かったかのように歩いてくる。


 「貴方の拳、鈍りましたか?ラーガさん。そんな物では私を殺せない。私を止める事は出来ない。」

 「殺す?その様な選択など生きてきて一度も載せた事はない。そして私は花を理由なく踏み付ける快楽殺人鬼ではない。生き方に反するが、相棒を助ける為の選択を行った。」

 「‥‥‥新しい相棒ですか?。‥チィ、まぁ良い。予想外でしたね。まさかまさか、貴方が戦鋼番糸に居るとは。どうしましょ。」


 少しだけ肌けたシャツのボタンを上まで絞める。懐から出した片眼鏡を掛けて、顔色を変えると、ラーガとフーガに背を向けて歩き出し口を開ける。


 「どれだけ人数が増えようと変わらないそう思っていましたが、貴方が居るとなれば話は違う。‥‥そうですね。またお会いしましょう。」


   「何処へ行くとゆうのだ。アスターよ。」


 「!?。」


 声が聞こえ、足を置くこの地がうねり出し、真っ直ぐに歩く事ができなくなるアニス。その地の波は強さを増し高くなってゆくと、立つ事すら不可能。何かにしがみつかないと、転んでしまう。それだけ今まで歩いてきた地面とは掛け離れた物。


 水面に重く大きな物を真上から落とせば、水柱が立ち水面を押し除けてゆく。押し除けた水が元に戻ろうとすると波が響く。


 まさにその現象が、海や川や水たまりではなく、地面で起きている事に焦りを見せるアニス。刀を抱きしめるフーガに至っては波が押し寄せてくるたびに身体が浮いてしまっている。そして、それはこの場所だけではなくこの森が上がり下がりと繰り返す事で、強大な範囲だと気づく。


 逃げる為の足の踏み場は何処にも見当たらない。溺れる寸前。この水面と化した地面に皆落ちてゆく。


 そんな地が海面と化した場所をただ一人歩く者。体制を崩し尻をつくアニスの元にゆっくりと近づくと大柄な男。


 名を戦鋼番糸 統括書官『不落』カサンド”ラーガ。


  『闇属性系統魔法:常闇に潜みし弓矢(まなびえらんだや)


 近づいてくるラーガに向けて、黒き弓矢を発現させては矢を引き標準を合わせる。漆黒の弓矢が出現した時、辺り一体に魔胞子が集まり、空気が淀み視認できてしまう。


 「‥ふん。精度は抜群だったか??」

 「えぇ、ご周知の通りです。脳天を撃ち抜かれたくなければ、その術を辞めてくれませんか?酔います。官僚さん。」

 「辞めぬと言ったら?」

 「‥、こうするだけです。」


 直後、矢から手を離すアニス。すかさずラーガは軽く拳を振りかぶり、地を叩くと先ほど起きた地波が更に大きくなる。矢を放ったと同時に津波に襲われて転んでしまうと、漆黒の弓を手元から落としてしまう。


 しかし、矢の軌道は寸分の狂いも無い。


 拳を叩けつけて地を泣かすラーガは、矢が放たれたのにも関わらず真っ直ぐと歩いてくる。飛んでくる漆黒の矢から目を離さず、なんと目を瞑る。


 「?。諦めたのですか?それもそうですね~、私の矢ですから——、はぁ!?」


 矢の軌道は寸分の狂いも無かった。無かった筈、今まで放った矢は命中してきた。邪魔はあれど、狂いは無かった。自信、それは絶対と言える程の正確さを誇っていた。それなのに、放った矢は誰かに曲げられるかの様に中心を捉えず、左へ徐々に曲がりラーガの耳元を素通りする。


 「!?。私にリゲイトを仕掛けたか?」

 「‥何を言っているんだ。私は何もしていない。これが今のお前だ。」

 「嘘をつけ!!外すわけがないだろう!!私は‥‥私は‥」

 「大事な弓を手放し、的をも射ぬけ無い。あの時は私の前で落とす事も外す事も無かった。」

 「‥鬱陶しい。運が良いだけで説教を‥‥」

 「運?、その様な言葉をお前から聞く事になるとは‥、今のお前を見たら『母親』はどう思うだろうな?」


 「‥‥‥。黙れ、黙れ、‥‥、」


 座りこむアニスの口元は何かを唱える為に動く。小声であった為にラーガには届かず。言葉を交わした直後、何を唱えたのか、何を仕掛けたのかがはっきりわかった。


 「ふん。‥‥私の声は届かぬか‥」

 「あれ?」


 歩くラーガは足を止め、座り込むフーガは言葉を漏らす。先ほどまで歩くこの地面はひたすらに波が立っていた。アニスやフーガでは立つ事さへ不可能。ラーガただ一人だけこの荒波を歩く事が出来た。しかし、今はフーガもアニスも立つ事が出来る。


 アニスが何かを口ずさんだ瞬間。ピタッと地面は泣き止んだのだ。もう一度波を起こそうと、ラーガは拳を叩きつけるもビクともしない。


 そして、あの男が両手を広げて笑みを溢す。


 「‥。今ので全て理解しました。全てを初めからやり直しましょう。私の事を知る人間も過去を知る人間も、もうこの世には一人としていらない。」

 「‥‥‥。」

 「ふふ、貴方のお得意の地を泣かす事はもう出来ませんよ。」


  【支配】:|我、立する大地は箱庭に《チェインルーラー》



 「変わった変わった。と、ほざいていますが。当然でしょう。時間が経てば変わって行きます。知っていますか?私が座っている席を?」

 「‥‥、」


 「私は、八器統殱(はっきとうせん)第八項。【支配】のアスター”アニス。分かりますか?頭が高いんですよ。」


 「馬鹿者。知っているに決まっているだろう。」


 言い放ったラーガは拳を振りかぶり地に叩き付ける。


 戦鋼番糸戦闘武術『地悲』は地を揺らめかす。ラーガの拳は地を泣かす。これが本来の術。


 応用を効かせると足を踏み込んだだけで、波を起こす事が可能。敦紫と対峙した時にはその応用技を使ったまで、本来の力を発揮する為には拳を叩きつけなければ行けない。


 そう、拳を叩きつければまた同じ様に波を起こす事が出来る。しかし、今はそれすら出来ない。それもこれも全てアニスの『支配』の力。彼が立つ中心から範囲を定めた場所は鎖をかけられ、他の者の関与は出来ない。


 根本を折らなければ、書き換える事も、潰す事も出来ない。範囲も、力も、意のままに。本人がその気になれば大陸すらも脅かす。それこそが『皇種(おうばい)』の力。


 「‥‥ふん!!」


 拳を地に叩きつけるが音は鳴らず。『皇種』には他の策通ずることは無い。


 「ふふふ、意味ないですよ。右利きさん。」

 「‥‥‥。」

 「八器統戦である私に歯向かわない事。それが長生きの秘訣です。」


 地を地と呼べる場所。皆が無理をしなくとも歩く事が出来る様になった場所で、一人の男が立ち上がり鞘を前に出すと杖代わりにしていた刀を払う。


 「‥‥、忘れないでよ。僕の事。」


 刀が鞘に接触する。刃先が鞘の先端に入った時の頃、アニスの周りには空間を切り付けた斬撃がいたる所から顔を出す。


 「なんですか?。」

 「リゲイト:『動的待機(スイッチ)』”On‥‥‥。?。」


 刃には手袋をした手が一つ。動かそうともビクともしない。


 「はぁぁ、貴方さっきから何ですか?手品なら他でやって下さいよ。あと、その刀は〝代百具”ですか?」

 「‥離せぇ!!‥う!なぜ、なぜ!離れないんだぁ!」

 「‥会話ぐらいしましょうよ。後その刀には何も感じない。‥‥そうですね。調子に乗るお侍さんには‥」


 掴んだ手に力を込めて、鞘に入りきれずにいた刀を曲げてゆくと、パリィと音を立てて折れてしまう。フーガの目の前では光り輝く破片が、視界に映り込む。遠くの方で待機していた斬撃は砂の様にサラサラと溶け風に乗り消滅。


 フーガの手には何も無く。今まで培ってきた剣術は、刀を折られた音ともに消え去る。絶望にも似た感情へと誘い下を向くと、握り拳一つ。気づいても気付かなくとも、避ける事はせず、腹がへこみ減り込んで行く瞬間を眺めた。


 「フーガ!!」


 ラーガの声と共にフーガはこの場所から吹き飛ばされてしまう。生える樹木に打つかり口からは血飛沫を上げる。そして、気がつけば自身の体は大の字になり、手を動かそうとも動かせない。その両手には矢が刺さっていた。


 「ふふ、貴方は私の良く知る侍に似ている。ただ、似ているだけ。あの侍なら今頃私は真っ二つですから。‥‥励んで下さい。‥‥ここから先、貴方が生き延びれたらの話ですが‥」


 アニスがフーガを殴りつけた後、己の拳からフーガの身体が離れている事を確認し、誰も目では追えぬ速度で弓矢を出現させては、2本の矢を木にへばりつくフーガの両手に射抜いたのだ。


 「ふふ、綺麗な的の完成です。殺す事は簡単、どうですか?私の頼み聞いてくれませんか?」

 「ラー、ガ。逃げろ。早くこの事を‥‥エピス様に‥‥」

 「‥、聞いてます?『代百具』を貸してくれませんか?」

 「渡す‥‥訳、ない‥‥だろ。‥‥はぁはぁ、ラーガ‥早く、エピス様を」

 

 「いや、呼ばん。そんな選択肢など設けていない。」


 血を流し、的となるフーガ。必死な叫びに命を顧みず、打開策となるロータリー”エピスに要請をかける事をラーガに促すも、思ってもいない返答が返ってきた為、「え?」と口をポカンと開けて固まってしまった。


 すると、


 「‥おい。アスターよ。私も全て理解した。力を感じ取り言葉を聞いて行動を見て。」

 「全てを理解した?。貴方が?いつまで経っても冗談が下手ですね。」


 ラーガの声と足音が聞こえてきた。


 「振り返れ、歩いてきた道を。何が見えて何が残った。何を経験し、何を得た。」

 「‥‥?」

 「最期。‥私も振り返ってみる事にする。」



 後ろから歩いてくるラーガの足音に気が付き、振り向くと視界一杯にラーガの拳が広がっていた。反応できない速度ではない、易々とラーガの攻撃に対し腕を交わせ防御する。身代わりとなった腕は少々痛むが、その程度。


 「貴方も単調ですね。まぁ、器用な人間ではない事は十分に知っていますが‥‥。」

 「全てを把握した。よって、お前を此処で秤に載せる。」

 「‥ふふ、さて何と何を載せるのか‥‥‥??。」

 

 右足が前、左足が後ろ、後方にある左足を少し蹴り上げて腰を回すと、力一杯にアニスの額に目掛けて拳を放つ。これは先ほどと同じ技。然程スピードも無くアニスは目で追えてしまう単調な突き。


 「(強行突破か?頭が悪いですね。)」


 先ほどと違う点を挙げるとするならば、振り返ってからの不意の攻撃ではない事。今回は攻撃の準備から発生までを見届けた為、余裕を持って防御の構えを取る事が出来た。


 そして、またラーガの拳は交わせるアニスの腕に当たった。


 「グファォ!?」


 攻撃を防御した。それは何故?、目的地を定めて突かれた攻撃から身を守る為に。しかし、避けるでは無く当たっているのは事実。盾や鎧で受けた訳ではなくこの腕で受け止めた。ならば痛みはある。声が出てしまうのも仕方がない。アニスの細い腕でラーガの拳を受けたのなら尚更なのだが‥


 「‥ぐふぅ、はぁはぁ。‥‥息が‥‥、」


 腕で防御した。何を防御したのか?。それは頭に向けて振るわれた殺意の攻撃。その攻撃をこの両腕で受け止めた。しかし、息ができない。痛い。受け止めた両腕でが?違う。横腹が痛い。破裂する程、イタイ。


 「はぁ、はぁ。」

 「嫌なら、私に掛けてみろ。もう一度だ。」


 よろけながらも立ち上がるアニス、その直後歯を見せ目を光らせて、腰を捻り左腕を後方へ持ってゆくと、力を貯めた拳と腰を回した遠心力を糧に、速度をつけてフックを繰り出す。それもまた目的地は、先ほど刺激された横腹と同じ場所。


 すかさずアニスは横腹へ魔胞子を凝縮させ、その上から両手を重ねて受け切る。パチィン!!と高い音が鳴る物の痛みは先ほどよりもなかった。


 「はぁ、はぁ。(何が‥したいのだ?コイツは)」

 「休憩する時間はない筈だ。」

 「!?」


 同じ事、また横腹目掛け再度フックを繰り出すラーガ。アニスもまた反射速度は化け物じみた物。ラーガの攻撃を予測し先にその手を腹の横に置き、準備を整える。


  しかし‥


 「ぐはぁ!!」


 殴られてしまった。腹を?違う。体制も、足の位置も、呼吸も、視線も、まるっきり変わったラーガの拳に顔を殴られた。

 


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