4”歩き方のチュートリアル
「貴様が、着ていい物ではない。今、そのコートを脱ぎ捨てるなら、私たちも攻撃はしない。これが最後のチャンスだ。」
「‥‥。仕方ないじゃないか。この場所にはこの服しかなかったんだから‥‥裸でオーランさんの所にはいけない。」
白い靴、白いズボンに白いシャツ、全てが真っ白。その上からは、また同じ色のコートを羽織う僕。そして、目の前に立ち、拳を構える男の名は、ラーガ”。僕の腕を手当してくれた人物ではあるが、雲に突き刺さり、聳え立つ石の塔の真下で、今一度、歪み合っている。
「‥‥。それが、貴様の選択なのだな。死んでも文句は言えまい。」
「僕も嫌だよ。汚れが目立つ色だし。でも、裸だと怒られるからね。」
僕がこの世界にやって来て、1日が立った。少しの休む時間があった物の、理解などは追いつかず日を跨いでしまった。
「先日は、裸で歩き回っていたではないか。」
「それは、まぁ、ね。天国だと思ったから。」
僕は、海に落ちた。先に上で待つ親友に会う為に、僕は海に落ちて死んだ。でも、死ねず、僕は今この違った世界に飛ばされてしまう。言葉も分からない、息もしにくい、身体が重たい、そんな僕には合わない世界。ここはトロイアス大陸。此処は、異世界。
生きた星とは違った住人。環境も変われば適応出来ずに死ぬ。僕も時間が経てばその運命を辿っていたかもしれない。そんな時、助けてくれたのが、オーラン”そして、マリー”とゆう人物。彼らは、ここよりも遠方にある国から態々僕を助けに来てくれた。何故、赤の他人である僕をそこまでして助けてくれたのか。
「ふん。天国?冗談が言えるほどの余裕があるのか?」
「冗談?。僕は、生きて来て一度も言った事ないさ、こっちが言いたいくらいだ。」
今日から約半年前、僕と同じ、別の世界からこの世界にやって来た人間がいた。でも、僕とは違った点があった。それは、迷い込む形でやって来た僕とは違い、この世界の人間に呼ばれて、やって来たとゆう事。
先日の話をしっかりと聞いていれば、不可解な点だ。そもそも、世界とまた違った世界を繋げ、人間を呼び出す行為、転移。その行為自体、この大陸の者たちは出来ないし、古くからの書物にはその様なヒントがあるが、触れては来なかった。
でも、出来てしまった。この塔から東に真っ直ぐと進めばある国、スイレ王国。その王国の権力者が、転移の方法を知り、異世界人を呼んだのだ。
出来ない。裏を返せば、やらない。とゆうことになる。人間とは進歩する生き物、目新しい物があれば研究するのが性である。にも関わらず、転移を触れては来なかった。それが正解だったのだ。
呼び出された異世界人は、この世界に対応する事が出来なくなり、転移した9日後暴走してしまう。誰も止めれぬ力で暴れ、一夜にしてスイレ王国は、火の海となった。
それと、僕の何が関係あるのか。その詳しい話は、我が王国で話をするとの事なので、僕は迎えを待っている途中なのだが、何故かラーガ”に決闘を申し込まれてしまった。
「それで‥‥君1人かい?先日の時と同じ様に2人で来ても良いんだよ?」
「なぁ!?、舐めた真似を」
「いいよ、ラーガ”。左手でも剣は振れる。」
頭に血管が噴き出るラーガを、宥める様に肩を叩き出て来たのは、フーガ”。僕がこの世界来て、初めて出会った人間。僕の腕を斬り落とそうとした者。
「僕にも用事があるんだ。速い所、終わらせよう。」
「チィ、調子に乗りやがって‥‥」
「落ち着いてラーガ”、後悔させてあげよう。私たちに喧嘩を売ったことを。」
(喧嘩‥‥売ってないんだけど‥‥)
今から僕は、この2人と戦う事になってしまった。前日の話もあり、オーランさんが住む国に僕は行かないとかいけない。でも、僕はこの世界に来た瞬間に、服を脱ぎ捨ててしまった為、着る服が無かったのだ。その時、ケイジュ”と名乗る老人からこの服を貰ったのだが、それが彼等の尺に触ってしまった。
無駄な争いは、したくない。無駄な争いは。でも、裸で行くわけにはいかないのだ。
今、天より高く聳えつ塔の下、戦いが始まる。ラーガ”は、鼻息を漏らし、拳を鳴らすと構えをとる。ラーガ”とは反対に、冷静に、その眼差しは鋭いモノへと変わると、長く光る剣を鞘から抜き構えをとるフーガ”。そして、その前で立つ同じコートを羽織る敦紫は、少し跳ねて呼吸を整えると、包帯が巻かれた左腕を眺める。
「‥‥。包帯を巻いてくれて、ありがとう。君達は、悪い人間じゃないと思うんだ。そのまま、そのままで、いてほしい。見えぬ未来を予想して、途中で諦める様な人間には、成らないでね。」
「ふん、減らず口が、その余裕、彼の方の拳を追い続ける者、ラーガ”が折ってやろう。」
「同じく、彼の方の剣を追い続ける者、フーガ”いざ尋常に。参る。」
少なからず僕には分かる。君たちが本気だって事。戦いは避けたいと言ったが、嘘だ。こうやって、競い合う事が僕は何より大好きだ。勝ち負けではない、‥僕は、嬉しいよ。だから、そのまま。放棄せず歩んできてほしい。
「さぁ、何処からでも、どうぞ。」
この戦い、先手を打ったのは‥
「‥戦鋼番系:戦闘武術-『地悲』」
「!?。」
今、踏み締める地が、揺らいだ。先手を打ったのは、ラーガ”彼は大きく足を上げて強く地を踏んだ瞬間、地は水面が如く、円を描き、波の様にうねりを起こす。高低差が出るほどのうねりは、敦紫の体制を崩してしまう。
「戦鋼番糸:戦闘剣術-『天歩』」
初めて見る光景に、敦紫の視界は波を打つ、地面の方に。そして、転ばない様にと、重心を落としこみ膝をつく。が、その頃にはもう、フーガ”が振り下ろす剣の刃先が、敦紫の頭上間近であった。
(へぇ。足音しなかった。すごいね。)
敦紫にとっては、フーガ”が繰り出す攻撃が分かっていたかの様に、目で追い軽々と避けてしまう。だが、それは相手2人も同じ事。
「お前なら避けるだろう。そう思っていたぞ。」
地の荒波は無くなり、立ち上がろうとする敦紫の背後には、また声が、そして敦紫の顔が隠れてしまうほどの大きな拳が、避けれぬ距離で急接近する。
(‥うん。予想する。それが戦いだ。互いのどちらかの予想が外れれば死、それも戦い。僕なんかよりも君たちが一枚上手だったみたいだ。でも、今の僕なら軌道修正出来る。)
この世界に来て、一つ分かった事があった。それは自分自身の五感。僕自身が理解できる程ハッキリと跳ね上がっている。耳を澄ませば、この戦いの最中でもハッキリと鳥の囀りが聞こえてくる。聴力だけではなく、視力も、2人の動きがスローに見えるほど、研ぎ澄まされている。
(2人の動きが、集中すればゆっくりに感じる。避けない方が、今の僕には難しいよ。)
「あれ?」
「ふん。私の前で、二度はない。」
敦紫は、避けようとするも、何かによってその動作が出来ない。回避とゆう思考になれば、身体が縛り付けられる様に動かなかった。ともなれば敦紫の残った選択肢はただ一つ、ラーガ”の繰り出す攻撃を受けるのみ。
動けぬ敦紫の額には、大きな拳が、ゆっくりと痛みもなく優しく、触れた瞬間。
「戦鋼番糸:戦闘武術-『噴波』」
敦紫の身体は、破裂音と共に吹き飛び、敦紫の身体は宙を舞う。辛うじて、尻餅をつかず綺麗に着地を収めるも、強烈な一撃が彼の顔に当たった為、鼻血が出ていた。
「‥‥‥‥‥‥。」
「余所見は‥‥駄目だよ。」
敦紫に休息の時間などなかった。音もしない擦り足で、近寄り背後をとったフーガ”の刃は、敦紫の背中を両断しようとするも、此方は難なく避ける事ができた。それでも、猛威は終わらない。
「貴様は、避けた。では、次はない。」
大きな巨漢が、拳を振りかぶる映像が視界一杯に広がる。今の研ぎ澄まされた視力と、これだけ分かりやすい動作をすれば、安易に避ける事が可能なのだが‥また、敦紫の身体は、ビクとも動かず、空に響く程の音が上がった。
「‥‥‥‥‥」
「‥どうだ?異世界人。これが、力の差。この世界にはこの世界なりの戦い方がある。貴様の体がどれだけこの環境に適応しようと、超えれぬ壁がある。」
流れる血、止めようにも止まらぬ鼻血を手で触れ確認する。 痛みが押し返す頬を触れて、実感する。
「‥‥。」
「私の攻撃は、避けれぬ。避けたのだから。」
リゲイト:二者選択
ラーガ”とは違い鈍い動きのフーガ”の斬撃は、目で追い、そして余裕を持って避ける事が出来る。だが、ラーガ”の攻撃は、目で追えてもどれだけの余裕があっても、避ける事が出来ない。
「不思議か?これが、この世界の常識だ。よく理解し、よく噛み砕け。今、貴様が何を考えているかは、分かる。何故、避けれないのか?。だろ?答えは簡単だ。一度、避けたから、だ。」
リゲイト。それは、この世界に住まう者たちが皆平等に持っているモノ。己を表現する、特別な賜物。種類は様々だ、家事や建築、操縦に勉学、芸能に芸術。このリゲイトとゆう力は、対=物として真価を発揮する事が多い。そんな中で、ごく稀に、対=者として、扱う者も存在する。
「こうなった以上。君は、ラーガ”の拳は避けれない。分かるかい?全弾必中。‥‥なに、残念がる事はない、これがこの大陸の秩序を保つ戦鋼番糸に喧嘩を売ったとゆうことだ。」
この大陸には、物騒な者達が蔓延るそれらを鎮圧し、十の国が歪みあわぬ様に秩序を保つ。この大陸の中心に立つ塔は、『戦鋼番系』。言わば、背にはなにも存在しない警察。
「‥‥‥。『天歩』」
優しげな顔に、怖さを感じない声色で、敦紫の元へ急接近するフーガ”は、首を狙い振り払う。それを感覚的に避けると、またラーガ”の慈悲なき拳が鳩尾に命中する。
「‥。私のリゲイトは、二者選択我が定めた行動に2つの選択を与えるとゆうモノ。回避か否か。お前自身が落とした一つの選択で天秤が傾けば、それ以上は動かない。覆らない。」
ラーガ”のリゲイト『二者選択』。これは相手に二つの問いを与える。発動条件は目が合えば可能、至ってシンプル。そして、二つの選択肢が敦紫に向けらる。この状態では、自由に行動が可能だが、その二つの選択肢からどちらかの行動をとってしまった場合、天秤が傾くシステム。
そうなれば、移した行動が出来なくなり、もう一つの選択肢をラーガ”が行わなければ終わらない。そう言ったリゲイト。
これは相手の行動で戦況が大いに変わるモノ。
敦紫の行動が行う事で成立するこのリゲイトは、十分な対応力に経験、それ相応の力に知識、その全てが必要になってくる。これを知り、改めて実感する。
「‥‥‥。ふ、」
敦紫は、甘く見ていたのだ。
「多少の力量があれど、覆らない知識と技術。さぁ、どうする?このままでは、オーラン様がくれた衣を台無しにし、朽ち果てる事になるぞ‥‥。今ならまだ‥‥ん?なんだ?」
足先から頭の天辺に流れる様に、小刻みに震えが回った。
「なんだ?。どうゆう事だ‥‥」
「あれ‥‥やばいよ。‥‥とゆうよりも可笑しいよ。」
ラーガ”フーガ”共に、同じ感覚に陥る。お互いに解釈できぬ状況に戸惑いを見せてしまう。
「ふ、ふふふ。ふふふふふ」
どちらかと言えばこの2人が優勢であった。だからおかしかった。目の前で、仮初の戦鋼番糸のコートを羽織う男は、不気味な声を漏らし笑っている。甘く見ていた。それはどちらなのかと。両者共に、別々の星で生きてきた者たちならば互いに、相手の底など見えない。
不気味な笑い声を混ぜながら、敦紫は口を開ける。
「ふふ、つま先に?踵に?何処に力を入れば‥‥」
「ん?」
「戦鋼番糸‥‥戦闘武術‥‥‥。『地悲』。」
「!?!?」
敦紫は、片足をあげて強く地を踏み鳴らす。すると、地面は浮き上がり波を起こす。ラーガ”の武術をこの男は見様見真似で再現したのだ。一波、二波、ラーガ”達の身体が浮き上がる程度の物ではあるが‥
「これ、ラーガの‥‥」
「あぁ、小さな波‥‥完璧ではない。だが、正真正銘、私の術だ。‥‥どうすれば‥‥どう生きれば‥命が掛かった試合中に‥真似をしようと思える‥‥。貴様は‥‥一体どの様な星で生きてきたのだ。‥。」
「案外‥‥難しい。‥‥練習しておくよ。」
その驚いた行動に臆す事なく、二人は攻め続ける。ラーガ”のリゲイトが発動中であれば、どちらかの攻撃は確実に当たる。ならば答えは同じ、フーガ”の太刀筋の甘い攻撃は、感覚的に避け、ラーガ”の拳を真正面から受け止める。
二人の洗礼された動きは、無駄がなかった。敦紫に休憩など与えなかった。斬撃を避けた彼の顔に、体に、ラーガ”の渾身の一撃を放ち続ける。そんな最中でも、敦紫は笑っていた。それを見ずに、聞かずに、二人は攻撃し続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ、可笑しい。」
「大丈夫?幾ら何でも頑丈過ぎるもんね。」
「はぁ、はぁ、違う。違うのだ。」
何故、なに一つ抵抗してこないのか?諦めたのかと、ならば、白旗を振ればいい。ラーガ”本人も殺す事が目的ではない。死にたいのかと、なに一つ読めない。この男の全てが。
「‥‥あ、あー。なるほど。」
笑い続ける男の真っ白のシャツも今では、顔中から流れる血により赤く染まる。この戦い、避けて、喰らって、それを繰り返し続けた敦紫の美しかった顔は、見るも無惨に傷だらけである。一言も、話さなかった。ただ、何かを待ち続けた素ぶり。彼の放った言葉により、全てが明らかになる。
「こう、するのか。‥‥『天歩』。」
それは、一歩。優しく、優しくこの地を足で撫でる様に、踏み弾く。その瞬間、残像をつけて瞬く間に二人の元へと急接近する。
目の前で起きた行動と、あり得ぬ状況に、ラーガ”の思考は、停止してしまい反応に遅れてしまう。我に帰った時にはすでに遅く。自身の間合いには、星の違う異端者が、ラーガ”の太い首を鷲掴みにした。だが、その行動に遅れを取らなかったフーガ”は、この剣で最も速度を乗せて、必要な動作の少ない、突きを敦紫に向けて放つ。
「なに!?」
「避けるならば!!」
敵をあろう事か、無意識に自身間合いに招き入れてしまった為、感覚的に殺す事だけを目的とした突きを放つ。それは、とてもではないが目で見て避けれる速度だが、それすら避けられてしまう。だが、ラーガ”のリゲイトが発動中、避けたのならばと、ラーガ”もまた殺意を纏わせた拳を放つ。
「‥‥。」
「‥‥ん?」
塔の周りを隠す様に生きる森に、住まう動物達は皆驚き飛び逃げてしまうほどの音が全体に流れる。ラーガ”の攻撃は当たった。確実に。肉が己の拳に感触が伝わる。今も確認すらできる。敦紫の額に当たる拳。流れる血は尋常ではない物。
それなのに、敦紫は、吹き飛ばされていない。動じない。
「避けれないのなら、避けないよ。」
「!?。ぐはぁ!!」
ラーガ”の首を掴んだまま、敦紫は、握り拳を作りしたから上へ抉る様に、ラーガ”の腹を殴る。巨漢な身体が浮くほどの威力。その衝撃で、腹を抑え膝をついてしまい、ようやく敦紫の掴みから逃れる事ができた。
「自分の手札を、敵に晒さない方がいい。直ぐに解決策を出すでしょ?。それじゃあ面白くない。なにも解らないのが良いんだ。どうゆう原理なのか、それすら考えて、試して、答えを探す。人は簡単に死なない。だから歩き続ける。ヒントなんか要らないんだ。」
「大丈夫!?。ラーガ”」
「ヒントなんか与えてくれたお陰で、僕は考える事が無くなってね。だから、君達のすごい術がどんな原理なのかを今まで考えていたんだ。‥どうかな?うまく行けたかな?」
非対称。白と黒。血まみれになる顔で白い歯を見せて、とびっきりの笑顔を見せた。その表情に汗を流しフーガ”は、言葉を漏らしてしまう。
「‥狂ってる‥‥。」
敦紫自身。ラーガ”の織りなすリゲイトは、開始早々に開拓積み。何も難しい事ではない、ただ、避けれないのなら避けないだけ。面白みもなく出てしまった解決策。本当ならば型をつけるところであったが、二人の不思議な術に、目をやられこの間ずっと、その事だけを模索していた。
殴られても、殴られても、殴られても。どうすれば、真似できるだろう、と。
「さぁ、ここからだよ。次は、どう動く?何を考える?ふふふふ、どう僕を困らす?、どう、殺す?」
「‥‥‥。」
狂っていた。その言葉に尽きる。何故血だらけになり笑っているのか?、どうすれば、それだけ楽しそうに出来るのか?ラーガ”フーガ”共に、プツンと糸が切れた様に動かなくなってしまう。敵を前にし、脱帽してしまう。相手の底を知らぬ事など互いに同じ事である。だか、それも限度がある。
今までに見たこともない種。際限のない狂人。
クスクスと笑う敦紫は、二人のとった行動に現実へと引き戻される。動かなくなってしまった二人。その光景を確認し、ため息を吐く。
「‥‥なんだ。君たちも同じか‥‥。見える筈ない未来を予想したのかい?‥‥はぁぁ、終わりにしよう。無駄な戦いは、‥止そう。このコートは借りるだけ、オーランさんの国に行ったら、服でも貰うよ。」
もぬけの殻となる二人に冷たく、鋭い眼差しを向けては振り返り、この場を離れようとする。歩くおぼつかない足並み、我に帰り高揚感は消え、痛みに、気怠さに襲われる。そして、その顔は何処か寂しそうな顔色を浮かべていた。
「まぁ、でも少しだけ知れた。‥‥天国で彼に逢えた時は、‥‥見せてみようかな‥‥‥。!?。」
敦紫は、足を止めた。止めざるおえなかった。背後には、気力を失った死んだ同然の二人しかいない。それなのにこれまでにない程の圧力を感じる。そして、声が聞こえてくる。
「‥‥知れた?馬鹿か貴様は。何を知った?私のリゲイトか?それとも私たちの術か?お前は、思い込みが激しいタイプだな。なに一つ、理解などしていない。ここがどうゆう場所なのか。私達が何なのか。この世界の戦い方がどう言ったものなのか。見えない未来を予想して絶望しているのは、貴様ではないのか?。」
「‥‥‥‥。ふふふ、」
「何が、歩き続けるだ。この世界に来て、たった一回の日を跨いだだけのひよっこが、舐めた事を口にするのも大概にしろ。何も知らぬ貴様に、私が、この世界で歩く為の、靴の履き方を教えてやる。今、この場で、意を唱える。答えよ。
——代百具よ。」