33”疎遠
揺れる。視界に映る全てのものが、風に乗り踊る。誰でも飛び超える事が出来る白い柵がぐるっと一周。その柵に囲まれるのは、色鮮やかなお花達。庭園と言った所だろう。柵の外では、綺麗にそして逞しく聳え立つ木がまたまた、この場所を隠す様な覆う。
飛び越える事が出来る柵ではあるが、その先には足の踏み場が見当たらない程に花がぎゅうぎゅうに引き詰められている。そもそも、庭園は風景を嗜む物。ならば、入らなくても良い。外で眺めれば良い事。しかし、この庭園の前ん中には、一本小さな木が立ち、作り出した木陰の場所は土だけ。
「‥‥、へぇ‥‥。此処が祖園ね。強い力が流れれば開くのか‥。確かに美しい‥‥そして、あの子が好きそうな場所だ。」
そんな庭園を柵の外側から花を嗜む女性が一人。柵を跨ぎ中に入ろうとするが、空中でその脚を止める。
「‥、やっぱり。私では入れないみたいだ。‥予想通りだね。‥‥‥、見た所、私が一番乗り‥‥ん?。」
足を元に戻して、目に入ってしまった。柵の中には満遍なく咲く彩どりの花畑。その中心には一本の木が作り出す薄暗い木陰。そこには土のみ。乾いた土のみ。それなのに‥‥、
「見えているよ‥‥。やっぱり早い段階で来ていたんだね。存在が消えたと思ったけど‥もう、君は辿り着いていたみたいだ。」
中心に生えた木の間反対には、なんと一輪の萎れた花。色も、形も、どんな花なのかも分からないほど萎んでいる。
「‥、なんとも悲しい花だ。さて、」
この世界に咲く花達は、太陽から降り注ぐ養分を元にその芽を咲かす。養分を受け取り咲かすのではなく、養分を受け取るためにその花弁を広げる。お花にとって必要な物が3つ存在するが
「‥ふふ。と言う事はお前も来ている事になる。不器用な説明も程々にしなよ?」
‥‥‥‥‥。
「バレたく無いのであれば、はしゃぎ過ぎない事だ。さて、祖園。‥私達が生まれたこの地。私達が目指すべき場所。‥‥長い長い時間、長い長い道のりだった筈。しかし、追いついてしまった。‥‥この世界に僕の追い求める物が遂に無くなってしまった。」
‥‥‥‥。
「予想通りだったと言うか。お母さんと言う偉大な人物に至った者たちは、未来がお見通しらしい。恐ろしいよ。さぁ、お別れだ。最後に彼の子の忘れ物を渡して終わりにしよう。この世界とは。」
‥‥。好奇心で、動いたのなら最後まで面倒を見たらどうだ?。
「あら?やっぱり見ていたんだね。覗き見は良くないよ~。久々だね、疎遠になっていた友人とまたこうして言葉を交わすと、こんな感情になるのか。あんまり良いものではなかったね。それで面倒?誰の?彼の子の?もう、必要ないさ。」
ふん。何が友人だ。無茶苦茶な事ばかりしやがって。まぁ、良い。‥出たら分かる。ではさらばだ。腐れ縁よ。
「‥、お前にだけは言われたくないよ。そうだ。お前の——」
‥‥‥‥。
「‥‥居なくなったのかな?。私に構っている暇は無さそうだ。と言う事でこの場所では僕が続きを行おう。」
私しか居ないこの祖園。私達の始まりとも言える場所。他の物達が夢募らせるこの場所ではあるが、私にとっては夢の様な空間でも、面白味がある様な場所でも無かった。私には只、見定めた遠い目的地だっただけ。
等々、この世界に私が見定める目的地は無くなってしまった見たいだ。終わりとは実に残酷。分かってくれる様な人間など居ないと思ったが、あの人間だけは私に似ていた。しかし、遅かった。実に遅かった。
もう少し出会いが早ければ、良き友人になっていたかもしれない。‥だが、私と出会っていれば今の様な性格にはならなかった。何せ、彼の子と出会えていないのだから。
この祖園は、私達の場所でない。彼の憩いの場所。彼にとっての安息の地。私がこの場所でやる事などありはしない。
借りた身体の事もある。長いは禁物だ、綺麗な女性の身体に障ってしまう。彼方では見なくてはいけない人がいるのだ。もう、この場所でのんびりする暇などない。この祖園からの出方も検討が付いている。抜け出せたなら、違和感がない様に気を失い倒れていた、と装う。
「こんな感じで良いのだろうか?。‥‥まぁ、良いか。」
案の定、祖園からすぐに出る事が出来た。詳しく話せば、追い出された、の方が理に適っている。最初は驚いてしまったよ。まさかこの場所にあるとは、なんて。
「灯台下暗し‥と言った所だろうか。」
祖園から出た跡は、この人間がいた場所まで足を運び抜ければ良い。この人間の近くにいた者たちを探す為、この街道を歩いていたのだが、人に迷惑を掛ける同志諸君の跡がしっかりと残っておりすぐに元の場所に戻す事が出来た。‥‥元に戻し、直ぐに帰ろうとした。
「‥‥、ふむ。してやられた見たいだ。」
私が足を止めて視線を向けた先には、顔馴染みの青年が倒れ地面は真っ赤になっていた。流れる血は、私の足元まで到達してしまう程。時間は経ってはいない。が見るからに腹部をバッサリと切られ致命傷である状態。死んでいてもおかしくはない。
「やれやれ、容赦がないなぁ。エピス君は‥‥」
四肢を半分に切るつもりで、刃を振るったのだろう。傷跡を確認すれば、よく分かる。しかし、切れなかった。エピスの通す『意味』を捻じ伏せた。今までの歴史上、この世にそんな人間など存在しないかった。意味を超える、意志を持ちいて、魔胞子を盾にし最悪な状況を回避出来たのか。
「早いねぇ。この場所まで辿り着くの。」
「なぁ!?無事だったのか。見当たらないから心配したんだ」
「はい。私も同じく眠ってましたから。」
「あぁ、そうか。それよりも敦紫殿が!!早く処置を!!お前らも!何をボッーとしているのだ!!王城にいる医師を呼んでこぉぉい!!」
正真正銘、この者は人間。やはり、君を見ていると興味が湧く。此方の世界には無い彼方の世界だけが用いる意味を通り越す賜物か、単なる器用に過ぎない体質なのか。
この世界に興味は失せてしまったが、彼方の世界にはまだまだ私の好ましい目的があるのだろう。
「ドクレス様も何か布を探してきてください。私は怪我をして走れないので手元にあるハンカチで出血を抑えておきます!!」
「あ、あぁ!!任せろ!!」
「ペン君も同じく!!」
「‥‥、はい!!」
色々と見られては都合が悪い。近くにいた大柄な男と、私の玩具は退場してもらう。此処にはなんとも不思議な生き物ばかり集まってくる。それもこれも、あの場所のせいなのか。
「‥、君は‥本当に、偶然に恵まれている。」
血塗れになる彼を突いてみる。残念ながら意識はない。しかし、生きている。どれだけの生命力なのか、恐ろしいよ。私は、ポケットからある物を取り出す。この世界の人間であれば喉から手が出る程欲しい代物、存在すら確認されていない危険な物を。
「‥‥、貴方は。誰ですか??。」
「ん?あぁ、君か。」
そういえば君を無視していた。君は色々と見てきただろう。なら、私の事もそして、私が持っているこの禁忌の薬も黙ってくれるだろう。
「一体、何をするつもりですか。」
「ふふふ。なに、怖がる必要はないよ。君たちの様な可笑しな種族と同じ力を使うまで」
「‥‥??。」
私はポケットから取り出した燃える様な真っ赤な液体が入った瓶を、音を出て開ける。
さて、
こんな所で、君はうたた寝している暇はあるかな?
そんな所で、じっとしていては距離が段々と離れていくよ?
もう少しだとは思うんだ。私に見せてくれないか?
私はそう言う職種の人間だから見逃す訳には行かないんだ。
微かに感じる種の力。
同胞であるからして、同じ類の変態であるからして、
君に一度だけチャンスを与える。
私は君の肩を持とう。この世界で孤独なのであれば君の友人を呼んであげようではないか。
さぁ、彼の足跡が書き換える前に目を開けてくれ。天傘”敦紫君。




