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 追想行進華 —庭園の足跡—  作者: 玉袋 河利守
2章”貴方が選んだ形、拾い上げた物は
25/37

24”揺らぐ世界でも真っ直ぐに(上)


 

 「分かったよ。」


 その言葉を、名前を呼んでくれた者に述べた。同時に、翔を包み込む霧は、外で起きる現象と同じ様に晴れて行く。そして、嘘偽りない、つぶらな瞳を向けるピュシスの小さな頭に手を乗せ、くしゃくしゃと髪の毛が乱れる程に頭を撫でた。普通であれば、「やめて」の一言が飛んできても可笑しくはない行為、ではあるが


 「えへへ。」


 頭の上に乗る自分よりも遥かに大きなその手を、また上から小さな両手を乗せて、満遍な笑みを浮かべている。


 中心。その場所で3人を囲んでいた繭の様なものも、優しげな風に様変わりし、散り散りと成りて、何処かへ羽ばたいて行った。

 

 「‥‥‥‥‥。」


 テーブルはひっくり返り、グラスは粉々に割れ、このお店を彩る筈であった窓硝子や、棚に並べられた豊富な種類のお酒達は、見事に落ち、床で混ざり合っている。


 そして、1人、立ち上がるルドルスは何気に、割れた窓へ行き外の状態を確認しようとする。


 安らかなる光が、この暗き酒場を暖かく照らすように全ての窓から陽の光が差し込む事で、外の状況を少なからず確認できた。


 一変した世界、外では自由に鳥達が飛び回り、耳をすませば風の摩擦音などは聞こえず、聞こえるのは鳥の囀りのみ。ふと、窓から風が流れるも心地よく先ほど起きた現象は夢なのではないかと思ってしまう。


 そんな光景に、只、眺めてしまうルドルス。


 翔は、一度その行為に手を止めてはピュシスの後ろにいるシキミの姿を見ると、ただ蹲り体全体が震えていた。その腕で顔を覆い、この床を見てはこの現状を把握できてないのであろう。翔はそんなシキミに手を伸ばし口を開けようとする。


 「んん!、‥‥もう怒ってない?」


 小さな手がまた彼の手を止めるも


 「あぁ、大丈夫だよ。」


 そっとその座る腰を上げては、蹲るシキミのところまで足音も立てず歩み寄る。翔が近づく事がわかったのかシキミの「ごめんなさい。」の言葉だけが、この空気と共に漏れる。


 翔は蹲る彼に何度も名を呼び、声をかけるも帰ってくるのは自身への誤りの言葉。「おい。」と何度も何度も声をかけてはシキミの肩を揺するも気付かない。


 翔が、今彼の場所に近づいてきたからと誤りの言葉を述べ始めたのではなかった。嵐が始まった後も終わった後もずっと、この体制で謝り続けた。


 はぁ、と吐くため息は形が見えるではないかと大きなもの。翔は一度この広い酒場を見渡し何かを探す仕草を取る。だが、この場には生き残っておらず‥‥そして。



 「‥‥‥‥‥おいおいおいおい‥‥おい!!なんだこれ!!」



 全てがひっくり返り、魂が抜けたように腰を落とすルドルスと、この木の床に寝そべる死んでいるかもしれないスポーキが目に入る。



 「泥棒か!?って!窓ガラスも粉々じゃねぇか!!おいおい‥‥大丈夫か!?スポーキ!!」



 「多分生きてるから大丈夫だよ。翔‥くん」



 あたふたとする彼に声をかけたのはルドルスであった。


 「覚えて‥‥いないのかい?」


 「‥‥あぁ?何のことだ。」


 「はは、そんな所だろうと思ったよ‥‥後で説明するから今は‥‥‥」


 ルドルスは、目をある所に向けて彼に伝える。焦っていた翔も冷静さを取り戻し、先ずは、目先の事に集中する。


 翔は倒れ泡を吹くスポーキの奥に、大きな厨房がありその中へと入って行く。残念ながらこの中も、ありとあらゆる物が散乱している。彼がこの床を踏み締める度にバキバキと音を鳴らし、水溜まりすら出来ている。溢れたお酒、そして弾けた窓硝子の破片が上手く混ざり合い、輝きを見せる足元。


 ふと、そんな美しげな現象に立ち止まり、眺めていると、この水溜りは鏡の様に、彼の顔を写し出す。


 「えぇ?あれ。何だこれ?‥‥あぁ‥‥気のせいか‥‥」


 作り出された鏡には自分の顔が映し出されており、何ら変わらない顔つき。生きてきて、何度も見てきた筈だが、一つだけ目を疑ってしまう。

 

 (‥一瞬だけ。‥‥‥髪色が‥‥。)


 一瞬の出来事、目を擦りもう一度覗き込むも自身の顔すら映らない。ただそこには色が混じった酒と割れた窓ガラスの破片が、そこにあるだけ。今一度見ようと、輝きすらなく彼は頭を傾げたまま厨房に居座る大きな樽の前までやってくる。


 その樽の蛇口を捻ると、勢いのある水が手に収まりきらないほどの量が出てくる。あたりを見渡せどこの水達を綺麗に収めることのできるコップは無い。その自身の両手をコップの役割を果たすように水を受ける。


 指の隙間から水滴はこぼれ落ちながらも、彼は水を手に持ちシキミの場所まで帰ってくると、散々溢さぬよう頑張って持ってきた水を、


 腕に力を込め、精一杯にその水をこの酒場の天井の近くまで投げた。


 同然その水は形を保ちきれず、翔が手から逃がした直後、彼らの上空では弾ける形となり蹲るシキミの真上に散り散りとなる。


 小さな、優しげな雨をシキミの頭上で作り出す。


 高く上がった水のカケラたちは窓から差し込む光と調和し光り輝くと、細かく小さくなった水たちは一つ一つが存在を一際放つ。それは雨となりてシキミに降り注ぐ。


 「‥‥‥‥‥。え。‥‥‥‥」


 シキミは首元に冷たい感触が走ると、首を触るため手を動かすそして気がつく。手をどければ、光が差し込む事と風を感じない事が、冷静さを取り戻していく。彼は目で確認するため顔を上げる。


 「あれ‥‥。」


 「ふぅー。ようやく顔あげてくれた‥。大丈夫か?シキミ。」


 顔を上げると自分が知る翔が仁王立ちになりこちらをじっと見つめては喋りかける。彼の返答にゆっくりと頷くと翔はスッとしゃがみ込む。


 「!?ごめんなさい!!」


 だから。っと頭を押さえては謝るシキミの顔を見て自身の手に少し力を込めてデコピンをする。


 「いたぁい!!」


 「はぁ。だから何で俺に謝るんだ?恨んでる相手なんだろ俺は?頭を下げるなら横にいるピーちゃんに謝ってほしいなぁ。」


 「え?‥‥」


 そうだ。と彼は横にいる血を流す彼女の顔を見る。邪魔をされたからと言って、関係のないものを吹き飛ばし怪我をさせてしまった。シキミは我に帰るとピュシスに向かって今日一番の声をあげ「ごめんなさい!!!」と誠意を見せた。残念ながら、ほっぺを膨らませ彼女はご立腹のご様子。


 「私の翔お兄ちゃんを虐めないなら許してあげる!!」


 指を刺してはシキミに負けじとその意志を表現するピュシス。「え?、」とシキミそして同じ身長になる様にしゃがむ翔も、その声を上げ少し驚いてしまう。ヘタレ込むルドルスはげらげらと壁にもたれながら笑っていた。


 「いやいや。ピーちゃんそれはまた別の話かも‥‥」


 「お兄ちゃんは黙ってて!!」


 「はい。すいません。」


 子供ではなく、1人の女性には敵わぬと、今一度、その心に身に締めた今日この頃。何故か、翔も、シキミと同じ様に、正座をして説教されてしまう。そして、ヨタヨタと歩きながらその小さな2人と大人である翔の掛け合いに横入りする1人の男。


 「ふぅー。イテテ、僕まで怪我しちゃったよ。ピーちゃん少しだけ待ってくれるかな?僕がある事を話すとこのシキミ君もこのお兄ちゃんに手を出さなくなるから。」


 「ほんと?」


 「あぁ、本当さ。スイレ王国騎士団長の名に賭けても嘘じゃない、そう言い切るよ。だから、先ずは君のお父さんが生きているか確認してきてくれるかな。」



 頭を縦に振ると、テクテクと歩き無惨にも倒れ込む店主の元へと向かうのであった。そして残されたシキミとその他二名は倒れてしまったテーブルと、二つの椅子を元通りに治す。その場所だけでも復旧作業を終えると皆席に座る事に



 「さて。シキミくん。君には一つ伝えておかなければならない事があるんだ。幼い君には少しばかり難しいと思うが頑張って聞いてみて」


 

 座り落ち着く翔はその言葉を聞き目を見開く。



 「おい!言うのか?本当の事‥‥。」



 「あぁ。そうだよ。何故翔君がここまで頑なに言わないのか知らないけど。ここはスイレ王国‥‥偉いさんなんだ僕は。だから、この真実を話す権限も僕は持っている。君はこの国の人じゃないから、手出しは出来ないよ。」



 はぁ。とため息をかけテーブルに肘をつけ、手で顎を支えながら窓から少しばかり見える空を眺める。



 シキミくん。君には言わなくちゃいけない事があるんだ。君には知っていて欲しい。君にはこの真実を知る義務があるんだ。——————



 

  —————————————————————



 外では‥‥



 形は全くもって別物になってしまった。しかし、空も、この場も環境は元通りになる。空高く自身らを見つめる大空を、また、眺めては笑みが溢れてしまう青年が1人。


 一人一人とこの国の民たちは、外の状況を見ようとぞろぞろと出てくる。それはこの教会だけでなく、元々建物の中にいた人間も、最初に避難させた人間も、次々と太陽に照らされたいと、この国の人間たちの全てが外に足を赴く。


 「‥‥やっぱり君はいるんだね。そこに‥‥ありがとう‥。頼り樹。‥‥僕もまた、あの樹を目指して歩いていこうと思う。‥‥あの樹が咲く、元の世界に戻る為、歩いて行くよ。」


 咳払いをしながら、黄昏る敦紫に視線を向けさせる。


 「はぁ。敦紫殿は本当に何をしているのやら‥‥何故あの様な状況に外を出ようとしたのだ?」


 「ただ、外に出て確かめたい事があっただけだよ。」


 ため息を吐くドクレス、2人の掛け合いの中、1人の女性がこちらに向かってくるも二人に声をかけるや否や倒れそうになる、すかさずドクレスは倒れ込む彼女の元に行き、地面にぶつかる前に腕で抱える事に成功した。


 「‥‥‥ふむ。疲れてしまったのだろう。リズルの国に出てからずっと魔力探知をしていたのだからな。勤務中ではあるが今日はゆっくりと休むと良い。」


 気が抜けてしまったのか、ドクレスの腕の中で目を閉じ、眠りについてしまったこの女性は、リリー。


 「‥‥いつ、リリーさんは来ていたんだい?。」


 「うん?、ずっとだ。」


 「??。」


 「それよりも、‥‥」


 リリーを抱き抱えるドクレスは辺りを見渡す。事の現状は、宛らあの日の事件の時の様に元通りになってしまった。この国に来た時の焦げた匂いの残香は、風に乗って消えてしまったのだろう。それだけならよかったのだが、道も家も大半が薙ぎ倒され跡形も無くなっている。


 「そうだね。また、一からだね。骨が折れる作業にはなると思うけど、手伝うよ。」


 「あぁ、すまないな。敦紫殿にもやらなくては行けないことがあるとゆうのに足を止めてしまって‥‥」


 「いいや。急ぐ必要はないからね。どれだけゆっくりなペースでも空から彼は見てくれているからね。とゆうよりも‥‥。」



 今回のことで数多くの疑問と、新たな定義が生まれた。



 (なぜ?‥‥だろう。)


 「ねぇ。なんで皆さん外に居たんだろう?」


 「?。外の方がよっぽど安全だろう?」


 (馬鹿を言っちゃいけない。外が安全?そんなわけがない。)


 「それはなぜなのかな?」


 「あれだけの風だろう?家ごと押しつぶされてしまうではないか‥‥‥」


 「そうなんだね。‥‥世界が違えば、何もかも違うね。」


 此処で、仮説を立てた事が本当になる。この大陸には、雨が降る事はあっても、自然災害と言うものは起きた事が無かった。歴史の見聞では、その様な事実があった事も確かだが、御伽話の中の話であろうと、片付けられていた。


 嵐と言う言葉を知っているのもごく僅か。


 一度も、起きた事がなかったのだから、研究対象にはならない。ならば、対処方法すら知らない。


 自然が猛威を振るわぬ世界。何が危険すら分からない。


 魔法が存在しない我々の世界。どの様な事が起きる分からない。


 世界が、異なれば、全てが違う。


 敦紫はドクレスに疑問に思ったことをあらかた聞く事にした。この世界来て間もない彼だ、知らないのが当然。この世界の常識と元いた世界とでは何もかも違う事なのだから。


 この大陸。トロイアス大陸には、あまり雨が降らない事。雨が降ったとしても小雨程度、大雨などは年に一二回有れば良い方だと、ドクレスは語る。


 では、皆が生活する中で、必要不可欠な水は何処で手に入れるのか?。雨が降らなければ、川も湖も底を尽きてしまう。であれば、海までその水を取りに行くのか?


 大丈夫。そんな事しなくとも、水は手に入れる事が出来る。


  それが、魔法である。


 そう、此処で魔法の出番である。この世界の魔法には、使い方が二種類あるのだ。以前も話した様に、


 『己が生きる為、魔胞子を利用する方法』

 『標的に向けて、魔胞子を扱い攻撃する方法』


 この二つの通りを略し、この世界の人々は魔法と呼ぶ。


 そして、魔法として多く人々から使われるのが、一つの目の魔法。水を生み出し、それらを飲む。この世界の人間達は、生活に必要な水を魔法で生み出しては貯める、それらを繰り返し、生活としての理を確立させている。


 ともなれば、雨が降らなくても問題はない事だ。出費もなければ、争うこともない。水を求め争いをする元いた世界とは違うのだ。よっぽど使い勝手が良い


 だが良いこともあれば欠点もある。


 それは、何か。


 歴史上、調べれば出てくる程度の暴風や大雨への警戒心や対策案などは出て来ず。今のような惨劇になってしまう事だ。運が良かったのか、幸い死人は出ていない。しかし、作りが甘い建物は、粗方風に攫われてしまってる。


 そう、作りが甘かったと、後悔するのは自然の攻撃が終わった後に知らしめられる。


 してやられて、身に染みて、刻む。


 そして、知恵をつけ、学んでいく。


 こちら側の世界だって、無数の屍により成り立っている。


 だからこそ、知恵があり、身体が動く。



 何もかもが、あの日に元通りになってしまった今、人々たちは諦めて行くのだろうかと。二度、壊された。作り上げた物を、一度目は魔法でやられ、二度目は自然にやられ。


 この短い期間で、二度も受ければ、立ち直る迄には時間が掛かる。と、



 「よし!!なぜかスッキリしたな!!」

 「そうだな!!ったくおまえさんの立て込みが悪いせいで飛ばされたじゃねえか。」

 「うるせぇよ。今度はどれだけの風が吹いても弾き飛ばされねぇもん作ってやるからよ!!」



 なんと、辺りは暗い顔をして下を向くものはいなかった。あの風のお陰でもと言うのかと、全てが吹っ飛んだかの様に、人々はまた散り散りになったガラクタを広い、潰れてしまった家を一度取り壊しながらも、生きている材料と死んでしまった材量を分けては、また作り直そうとする。


 そう。これが人間なのだ。


 良くも悪くも、諦めが得意な種族には、属さない。


 諦める者はいなかった。しかし、残念ながら事の現状を追求しようとする人間も然り、この国に溢れている。あの偽物の勇者に似た顔を探せと、大半がまたこの国を元通りにしようと奮闘する中、闇雲に走り回り犯人を探すもの達もいる。


 自分の出した答えを、自身で止まない。それが憶測の範疇であっても。


 そう。これも人間。



 「‥‥ドクレスは、僕と同じ異世界人を見たことはあるの?」


 「‥‥いや。なくてな。私は自国にいたのだ。勇者の顔を知っているのは事件の日にいたヘレン様やこの国の人たちぐらいではないか?‥‥‥。それと‥‥戦鋼番糸。」


 「戦鋼番糸!?。って事は、ラーガやフーガもその場所に居たのかい?。」


 「ハッハッハ!!ラーガ様やフーガ様を呼び捨て。中々も中々よ。」


 「??。またまた、あの人達も偉い人なのかい?。毎回毎回、勘平して欲しいよ。」


 「まぁ、それも仕方がない事よ。知らぬのたがら。因みに、ラーガ様は、我が師である。」


 通りで、似ていると思った。追いかける人に似るもんなんだね。僕も‥‥言われてみたいな。


 ラーガやフーガの素性を聞くと共に、僕は、戦鋼番糸の塔に帰った時、ラーガ達に、異世界人の事を聞こうと思った。しかし、


 「しかしだな、ラーガ様方々は、この国に来た事がない。」


 「え?。」


 半年前の事件の日、間違いなく居合わせていた戦鋼番糸の人間。しかし、それはラーガ達ではなくまた別の者。誰なのかと、尋ねても、ドクレスは首を横に振る。当然、ドクレスもまた、半年前の事件の日にこの国にいなかったのだから。だが、回る噂には、事件が終わった一日後、白をコートを身に纏い、滅びかけたこの国の街道を歩き何かを探す、



 眼鏡をかけ、短身な男を目撃したと、耳に入ったらしい。



 「敦紫殿の目的に一歩近づくかもしれん。戦鋼番糸のどのお方がこの国に来ていたのか、スイレ王国の騎士団長に情報を聞いておこう。」


 「うん。ありがとう。‥‥それでなんだけど‥ドクレスは、どれぐらい暴走した異世界人の情報を持っているのか教えて欲しいな。」


 「ふむ。そうであるな‥。勇者、パッとしない、魔法が使えない、剣すら扱えない。猿芸、‥‥っと言った所だろうか。‥」


 この世界に迷い込んで、何度も何度も聞いたその噂話。


 起きた事は確か。厄災とまで呼ばれているこの事件。


 ただ、ドレクスの話と、犯人を血眼になり探そうとする人々を見て、ようやく可笑しな点を見つける事が出来た。


 僕とは違い魔法を使えない状態で、この場所に呼ばれてしまった。暴走しこの国を滅ぼそうとしたその異世界人。普通であれば、その力に怖がり、この様に偽物の勇者を自分たちで探し懲らしめようなんて考えにならない筈。


 国を潰せる力を持った人間に、ドレクス達の様な戦闘にお向きを置く者達ではない、一般人で何が出来るとゆうのか?


 ではそれは何故なのか。答えは簡単なことだ。その異世界人の力を多少、その寸分が測れているのだろう、具体的に分からなくとも、見た目などでこの行動に移しているのかもしれない。だが、僕の考えはこの二つの問題によってスタート地点に戻されてしまう。


 一つ、魔法を使えないその情報である。それの何が問題なのか、魔法を使えないのであればどうやってこの国に火の雨を降らせたのか?


 さっき見たいに自然の雨を半年前も降らせているのであればこの議題は終了なんだけど。どうやって火を作り空から落とした?僕と同じ『概念』に似た力を持っていたとか‥‥それとも、異世界人ではない違う誰かの仕業?。



 「ねぇ。バロン、一つ聞いてもいいかな?」


 「こらこら、よだれが垂れてるぞ。女の子なのだからはしたない。」



 おんぶされるオニヒメはぐっすりと眠りヨダレを流しすやすやと眠っている。さぞかしバロンの背中は居心地が良いのであろう。



 「きいてる?バロン?」


 「よいしょ。‥‥あぁ、すまんすまん。どうしたのかな?」


 「ごめんね。半年前の事一つ聞いておきたくて‥‥———。」


 そして二つ目、この世界に来て散々と言われてきた、この国の過去。色々な人間が話すその噂話は、ある程度が皆同じ事を言っているのだから、本当の事なのだろう。そう思う。

 

 だが、その半年前の事件の事を色んな人に聞いても、『それ』について誰も話さなかった。重たく暗い話なのだろうと、『その事』については、触れなかったのか。それにしては不自然過ぎる。誰1人として、話そうとはしない。


 だがら、僕から聞こうと思った。


 この事件の犯人が僕と同じ異世界人だとして、


 少なからず、関係のある僕だから、罪の重さを把握しようと、ドクレスに言及した。



 「あぁ、その事なのだがな‥‥‥」



 僕が出す質問にドクレスは答えてくれた。


 そして、その答えで少し僕の中で答えが出そうになる。と同時に、



 「え、‥‥じゃあ?何がしたかっ‥‥‥。」




 「きぃぃぃぃぃーーー!!!なんじゃ!!!これは!!!」



 そんな会話は遮断されてしまう。真っ赤に膨れ上がる頬に、おぼつかない足並み、その腹の大きさでは足元の安全を確認できないのは確か。兵士に行き止められながらも、こちらに皺を寄せては指を刺し歩いてくる。


 「おい!そこの愚兵よ!貴様はフリーシア王国の者であるな!!」


 歩くだけで息をあげている男は、声を張り上げて近づいてくると言葉を放つ。ドクレスは、「誰が愚兵だぁ?」と、仮にも1人の女性を抱えていることを忘れているのか、握り拳に音を鳴らせ首を鳴らせ睨み返す。


 「貴様たちがこの国に来てからおかしくなったのだぞ!!‥‥聞いて—————。がはぁ!」


 目の前で転けてしまった。被る冠を落とし、金属の落ちる音が聞こえる。それは鈍い人の声を上げながら。


 「クソ!!誰かおこさんか!!!」


 ぶくぶくと膨れた体が今地面と顔を合わせている。鼻血を出しながら、自分では起き上がれないのか、手足をジタバタさせて悶絶する。何が何だか理解が追いつかない敦紫は転んでしまったその男に手を伸ばす。


 「よい。敦紫殿ほっておけ。」


 ドクレスが差し出す敦紫の手を止めると、すかさずついてきた兵士が3人係でその男をようやく起こす。


 「きぃぃぃーー。何故近くにいた貴様たちが我を助けないのだ!!我はこの国の王であるぞ!!我の名は!!スイレ王国、現国王!!レカン”スイレ=セドウスであるぞ!!」


 「知らん。いくぞ敦紫殿」


 「え?あぁ。うん。」


 ドクレスは気にする事なく、今日連れてきた兵士に声を掛けて撤退の合図を出すと、ぞろぞろとこの国の王が来た方角とは反対の道を進み出す。ドクレスも、何もなかったかの様に、その甲冑を鳴らし同じ様にこの場を離れていくのを確認すると、敦紫もまた。


 (‥‥あの人がこの国の王様‥‥‥。僕の同じ異世界人を呼んだ張本人‥‥。)



 この国に来て、今一つわかった気がする。一つだけ



 「貴様らがこの国に来た為に、このような事になったではないか!!」



 半年前の事‥‥僕は全てを見ちゃいない。その頃は多分僕はあっちの世界で楽しくやっていたから



 「見よ!!この国の民たちよ!!フリーシア王国が我らを狙っての攻撃を仕掛けてきた!!」



 半年前、このスイレ王国に、勇者と評し、異世界人を転移させた。そして、召喚された9日後に暴走してしまう。真相は知らない。僕は、何も見ていないのだから。



 「攻撃を仕掛けたのならやり返すのみじゃあ!!貴様ら諸共滅ぼしてくれようぞ!!」



 僕と同じ、勇者と呼ばれた子も、よく耐えたと思う。僕と同じ、この世界に適合しない身体を持ち、言葉も分からず、手助けとも呼べる者も居なく。耐え続けた。


 

 「あの悪魔のせいで、今この国は大変な事になっていると言うのに、疲弊した国を狙って潰そうとする魂胆!実に遺憾であるぞ!!貴様達も同じ——」



 でも、僕はそこまでその子は悪い人間じゃないと思う。悪魔なんて言っちゃけない。元々悪い人間なんて、この世には居ない。だから、今日で一つ答えが見えた。



 「皆よ!!剣をもて!!そして今日この国に来たフリーシア王国の兵士たちを串刺しにしろぉ!!」



 不特定多数の悪意が人の妬みや恨みが‥‥‥自由を奪い人をそうではないものへと変えてしまう。


 

 「無視を決めると言うのじゃなぁ?ならば我が国の兵士たちよ奴らを拘束しろ!!」



 それはまた僕より先に来た子も同じ事。暴走する理由もわかると言うものだ。



 この場所、小さな舌打ちが聞こえた。

 


 怒り、それとも同情。彼の体からはその顔色を見えなくとも満ち満ちと溢れ出る殺気。その力は今自身の作る握り拳に凝縮される、この刹那。彼は足に力を込める、脳から伝わる信号ではなく本能的直感。


 彼が踏みしめる地は、亀裂が走り出す。が、


 「敦紫殿。奴の言葉を耳に入れるほど愚かな事はない、そもそも君には関係のない事だ。今日はヘレン様を迎えに行って帰ろうではないか。」



 肩を掴み今度こそ止めたのはドクレスであった。喋る事なく頭を動かし、ただ傲慢たる王に背を向け、歩こうとする敦紫。冷静さを取り繕う。しかし、顔色は見えず溢れ出す殺気は治らない。ただじっと我慢して出口を目指す。そんな彼らに追い討ちを掛けるセドウス。


 

 「!?。おい!!貴様ら!!私はまだ話しているのだぞ!!何処へ行くつもりだ!!もしや噂になっておる救世主様とやらの力を借りに行くとでも言うのか!!所詮、その者も異世界人だと、ならば奴と同じく、ゴミも当然!蓋を開ければ魔法もリゲイトも使えぬ、猿。そんな奴の力を借りてどうやって私達と争う気だ!!」



 「‥‥‥‥‥‥。」



 聞こえゆくのは、鎧が地を擦る音だけ。



 「‥‥むぎぃぃぃぃ!!!もう良い!!リズルの国もフリーシア王国も!全て滅ぼしてやろう!全面戦争じゃあ!!」



 (我慢だ。我慢。ここで問題を起こせば面倒な事になる。こんな奴に構っている暇は無い。我慢だ。)



 「はん!どうせ、別次元の世界に生きる者達は、挙ってあの偽物と同じゴミの集まりなのだろう。見なくともわかるわ!!あんな話に乗らず‥‥」



 (ゴミ?。‥‥)



 立ち止まる。この言葉を吐くや否や、等々その糸はプツンと切れてしまったのか敦紫の瞳孔は開き、姿勢を下す動作と同時にこの地を蹴った。行き先を変える殺意の塊に反応したドクレスであったが、瞬き一つで、視界からは敦紫の姿を消えていた。


 ただ。腹が立ってしまった。


 目の前にいる、到底人間の考えでは到達できない愚物たる存在を叩き落とす為、気付けば、己の身体は国王の元へと。


 だが。


   ———トン。———


 「!?。」


 杖を叩く音が聞こえた。セドウスの前で拳を振り被る敦紫の身体は、その音でピタッと止まる。


 「貴様!!その手をどうする気だ!!」


 敦紫は、振り返ってしまう。だが言葉を並べる王の声と一つ杖を一つポンっと叩く音が広がった瞬間。



     空間が捩れた


 

 この場所ではなくこの国全体が曲がった。歩く感覚も違い、息を吸うことすら間違えてしまう。目を閉じているのか、開いているのかすら分からない。前を向けているのか、手をどう動かせば良いのかそんな感覚に陥ってしまう。


 そんな世界にも、変わらず歩き続ける。老婆が1人。



 「おい。阿呆よ。なんと言ったんじゃお主は今?」



 もう一度その細い杖をトンッとこの地面に押し付ける。敦紫が見る光景には先ほど見ていたものとは丸っ切り違う世界。杖を叩くたびに見える世界が変化していく。周りでは耳を、目を抑え蹲る者。隣にいたドクレスも泡を吹き倒れてしまう。一人一人見違える世界に気絶していく。


 変わらず、杖を叩き音を鳴らす老婆。


 崩れた建物はこの世界に来て、見た事がない歪んだ塔へ。地面は石のレンガではなく草木が生える。それも全く見ない色をした不気味な紫色をしている。


 敦紫でさえも立つ事がやっと、杖を叩く手を止めずこの国は見ぬ世界へと変わり果てる。彼もまたその世界に追いつけず目の前が霞んでいく最中。


 「阿呆よ。どんな言い訳を吐く?。どんな言い草を付ける?。」


 ゆっくりとこの国の王へと、歩み続ける老婆の姿はみるみる内に変わっていく。髪を止めていた簪はどこかに消え。垂れ下がる萎れた白き髪は艶を取り戻し黒色に染められ、小さな体も今では成長するように長身になる。顔つきも先ほど見た皺を寄せる顔色は無くなり、若い女性の顔付きに。



 そして、まだ膝をつき、舌を噛み踏ん張る敦紫の耳には入り込む。



 「若き種よ。お主にはいち早く目を閉じて欲しいものだ。」



    安らかに眠れ



 どこからともなく聞こえる声に敦紫は、等々、変わり果てた世界で目を閉じて倒れてしまった。


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