真のデュエル〜基礎のゾーン〜
「山札は自分自身、シールドは『擬似心臓』」
「デュエマのルール説明って、お約束だから」
そんな会話から始まった『真のデュエル』のルール解説。
わかりやすいような、よくわからないような変換で霧札愛は親切にトテントンに基礎を教えはじめる。
その声は自分の推しを他人に勧める愛好家のような、そんな明るいものだった。
その顔は戦争の方法を子どもに悪趣味に教える狂人のような、そんな強烈なものだった。
※これはトレーニングカードゲーム デュエル・マスターズ をファンタジー風に書いたニ次創作です。
「さ、優しい拉致犯のお兄さんが待ってくれてる間にルール説明を再開しよう!!それに、デュエマのルール説明って、お約束だからさ?」
そうニコニコと明るくて暗い笑顔で、おねえさんは言った。
「えっと、どこまで説明したっけ?……あーそうそう。シールドは『擬似心臓』。ここまではいいね?」
「あ、うん…」
なんて気色の悪い表現に、トテントンは頷くことしかできなかった。
「よし!それじゃ次、他にデュエマに必要なものはなにかな?」
「えぇっと、最初の、手札?」
「手札!そー正解。もっと現実味を出すなら、次の亜人はなにを使うかーとか、呪文はどうしようかーとかの自分自身の判断の源。つまりは『脳みそ』だね」
「脳、みそ…….」
連続の悪趣味な変換に嘔吐感すら覚え始めたトテントンは、この会話をいち早く打ち切りたいと心の中で懇願する。
だと言うのに、それを嬉しそうに聞いていると信じて話を一向にやめない私。
トテントンは嘔吐感をこれ以上高めない為に、半機械的に受け答えをするロボット状態と化していた。
「それで?他には?」
「えーと…山札、シールド、手札……あとは…墓地?」
「そー墓地、大正解。墓地は自分の中にある『ゴミ箱』だ。呪文や破壊された亜人ちゃんなんかは一旦消滅して自分の中のゴミ箱に入るんだ」
「はぁ…」
墓地は先ほどの手札やシールドのような臓器表現ではなかったが、もう少しまともな例えはないのだろうか。
トテントンは心の内でこの事を伝えようと願ったが、恐らくこの人にはそんな事を言っても無駄なのだろうと早期にその希望を諦めた。
「それじゃあ最後。最後に残ったのはなにかな?正直、これが一番重要なんだけど…」
「最後…」
最後のデュエマの基礎。
トテントンはもう一度、デュエマのゾーンを確認する。
「山札、シールド、手札、墓地、あとは…マナゾーン?」
「マナゾーン!そうそれそれ。それが最後に出てきてくれておねえさん嬉しいよ」
「はぁ…」
ここまでの会話で、これほどまでのおねえさんの喜びの感情を初めて見た。
「マナはその人、その亜人の個性そのもの。いわゆる『精神的イメージカラー』だからねー。それ次第で亜人は使える力が異なるんだよ」
なんて、そんなことくらい知ってるか。と舌を出しながら笑うおねえさん。その顔はまだ嬉しそう。
がしかし、それを見てもトテントンは特に嬉しくもなんともなかった。
「よし、基礎のゾーンはこれで全部だね。トテントンちゃん、デュエマのやり方はわかるんだっけ?」
「うん、一応分かるけど…」
「…そーなんだ。あーでもここまで説明しちゃったし…せっかくだから全部いっちゃおっか」
「はぁ…」
おねえさんは自分の質問の意味すら無くして会話を続けた。
「と、言うことで———」
黒い笑顔を保ったまま、私は久方ぶりに拉致犯に向き直り、
「お待たせ、待った?こんなに待ってくれるなんて優しいんだねー」
軽々しく戦闘の再開を申し出た。
「……お前が言ったんだろ」
軽妙な再戦の火花に対し、拉致犯は怒るでも呆れるでもなく、意外にもただ静かに承諾するだけだった。
だがそれは先ほどの、私の悪意満点の会話を聞けば誰だって拉致犯の答え方に納得する上に、同情の気持ちすら湧かせる者も出てくるかもしれない。
それすらも分かっていて、私は拉致犯への対応を変えないし、変えるつもりもない。
「それもそうだね」
私は俯瞰の眼差しで、抵抗しない彼を嘲笑う。
「……見下しやがって……」
今し方の悪意の会話から、拉致犯は急所を突かれたことで、元々限界間近まで溜まっていた怒りが私の視線によってその上限を突破した。
「……俺は、くだらない小競り合いで戦争を引き起こすこんな世界を零にする」
「うん。それは聞いたよ?」
「……が、気が変わった」
拉致犯の手は再度強く握りしめられ、皮膚が破れる音が鳴り、わずかの血液がその拳の形をなぞって滴り落ちる。
「その前に、子どもに戦争の方法を面白おかしく教える、お前のようなクソな大人を消し炭にする!」
再び舞い上がった拉致犯の怒り。
「……八つ当たりかよ。ダッサ」
それに対しても、私は変えるつもりのない不変の反発的態度を保持する。
「どうとでも言うがいいクソ女。俺は未来の平和のために、世界を滅ぼす!!」
拉致犯の高らかな滅亡宣言に、静止していた二体のバギン16号が応えるかのように、両手のノコギリにエンジンをかけて私の方へと向かって来た。
「うっほ、来た来たぁ!」
私は目の前から来る、向けられた殺意にも動じること無く笑って迎え入れる。
それはもう、純粋に狂気的に。
「さぁトテントンちゃん、しっかり見ててよー!」
現役の子どもにも劣らない純粋な笑顔で、私は紳士に、具体的に、初心者に向けて『真のデュエル』を教え込む。
「ここからは、実際に戦ってみよー!」
たいしてない胸を張りながら、まるで全てを受け入れる母親のように、無抵抗に私は両手を広げる。
「え!?」
その時、突然の私の奇行に、トテントンは動揺を隠しきれず茂みから顔を出した。
「危な———」
トテントンの忠告も間に合わず次の刹那、バギン16号のノコギリが太い機械音を鳴らしながら私の胸を削ぎ落とし、目の前には自身の赤い命の噴水で出来上がった。
みーなさーまー!
娯楽です。
前回の後書きで「パーフェクトペテンシー」について自己語りしました。
そのあと、私は考えました。
どうやったら、あの最強呪文を止められるのか。
色々…考えました。
……ゲンム?シロフェシー?案外石像男とか面白いかも……と。
そうして、私が思い至った最終結論。
………………それは、ラフルルラブ!!
……みなさんの思ってる事、当ててみましょう。
「結局これかよ」
↑これですよね?私もそう思いました。
なのでみなさん、ラフルルラブを駆使してあのバケモノ呪文をぶっ潰しましょう!!
追記
なんか後で調べたらラフルル採用のペテンシーがあるらしい。……モーワケワカラン……