白い卵
風を感じない不気味な森。
タバコの煙が揺れる方へと二人は歩き、太陽の光も遮る森の奥で一人の男と、森をこんなにも気味悪くした「白くて丸い塊」がそこにいた。
愛はトテントンと共に茂みに隠れ、可愛らしい子供達を攫った妬ましい拉致犯に罰を喰らわせんと鉛玉を放った。
※これはトレーニングカードゲーム デュエル・マスターズ をファンタジー風に書いたニ次創作です。
「…….オラくらえぇ!!ガガン・ガン・ガガン!!!」
茂みから放たれた鉛玉が拉致犯に向けて一本の線を描いて飛んでいく。
「——————!?」
突然の爆音と、自身に向けられて飛んできた弾丸に拉致犯は驚嘆し、その方向に視線を向ける。
がしかし、音速並みの速度で人の肉を削ぎ落とさんとする鉛に拉致犯の反射は叶わず、そのまま体の一部が鉛の餌食に——————
「——————?」
なることはなく、鉛玉はそのまま拉致犯の影を素通り。
その代わりに奥の木に激突し、その木には3ミリ程の穴が空いた。
「あちゃー、やっぱり初めてはうまくいかないなぁー」
そう言ってヘラヘラと笑う木に穴を開けた張本人。
横で息を潜めていたトテントンも、私の雰囲気からくる予測された結末とは全く異なる結果に、呆れた感情を隠さずにいた。
「……霧札おねえさん、かっこわるいよ」
「なーに言ってるのトテントンちゃん。この世にかっこいい大人なんかいるわけないでしょ」
気遣いなんて知らない子どものドストレートな感想に、私は夢のない現実を盾に一応の回答。
「………な、なんだ!?お前ら!!」
そんな私とトテントンを横に、たった今弾丸で体の一部を削ぎ落とされかけた拉致犯が、怒りのこもった声を上げて怒鳴る。
「いきなり人を撃つとは、非常識なんてレベルじゃないぞ!!」
「あーごめんねー、おにーさん」
逆ギレする拉致犯に対して、私はあっけらかんとした態度を変えずに答える。
「……でもさおにーさん、あんた私たちを怒れる立場なの?」
私は笑顔を崩さないまま、生徒を指導する教師のように、拉致犯の足元を指差す。
「——————!?」
見られてはいけない、自分の犯行を指摘された拉致犯は、瞬間に息を呑んだ。
「こんな可愛い子供を五人も拉致しちゃって。しかもその後ろの魂、ただの置き物にしては物騒すぎじゃない?」
タバコに火をつけ、見たままの事を淡々と話す。
「ねーおにーさん。私、あんたの後ろにある魂、何か気になるなぁ?」
「………」
私の質問攻めに、先ほどまでの拉致犯の怒りは嘘だったのかと思うほど静かだった。
「教えてくれないかなぁ??」
逃げ道を完全に断たれた拉致犯は歯をギリギリと鳴らし、握る拳には力が籠る。
その時、木々が揺れ太陽の光が差し込み、薄暗かった森の奥に一本の光が現れた。
その光はまるで拉致犯の諦めの感情を代弁するかのように、彼の頭の上からスポットライトのように差し込まれ、その姿をあらわにさせた。
その男の見た目は、三十代後半。顎や口の周りには小さい髭がポツポツと見られ、清潔感はあまり感じられない。
着用している汚れた軍服と薄黒い肌がその男の職業を明快に予想させた。
「軍人……」
彼の格好を見て、大多数の人々がその単語を思い浮かべるだろう。
「………」
憤懣
この言葉の意味は「発散させ切れず心にわだかまる怒り」。
血眼な眼球、そして眉間に大量の皺を寄せた顔。彼の現状に最も適切な言葉はこの言葉以外ないだろう。
「……どうしてここがわかった?公園の他の妖精達には見られないように細工をしたはずだ。」
「は、自然文明だからって虫と野菜と妖精しかいないと思ったら大間違いだよ?」
「………」
軍人格好の拉致犯は、私の変わらない態度に更に眉間の皺を増やした。
「まぁ…いい。この魂が気になると言ってたな」
「ん?うん。私気になるなぁ」
「……これは言わば卵だ」
「卵……」
「そうだ。聞いた事ないか?闇王ゼーロという名を」
「あ……?」
闇王ゼーロ。
私はこの単語を聞いた途端、日々のアルコールやニコチンでは隠しきれないほどの嫌悪感が湧き上がった。
「ようやく態度が変わったな」
拉致犯はようやく揺らいだ私の態度に口元を緩めた。
「これはその闇王の『世界をゼロにできると言われているドラゴン』の卵だ」
「……ゼーロン」
ゼロのドラゴン。
この二つの単語を並べられれば、このドラゴンの名が真っ先に思いつくだろう。
「………そんな事まで知っているのか」
「まーね。それよりも、そんな洒落にならないレベルで物騒なもの、一体どこで手に入れてどうする気かな?」
私の質問に、拉致犯は少しの沈黙を挟んで答える。
「……決まってる。世界をゼロにする」
「ま、そんなもんだよね…」
私の変わらないあやふやの受け答えに、拉致犯も気にするのをやめた。
「ふん、掴めない女だ」
「お?いいねぇそれ、ミステリーキャラクター。私にピッタリじゃないか」
「はぁ、お前みたいなふざけた奴と話してる時間はない……本題に入ろうか……」
そうして拉致犯の顔は再び最初の怒りの形相に戻った。
「その子供を置いて今すぐ引き返せ。そうすれば命だけは助けてやる」
そう言いながら拉致犯はトテントンを指さす。
「え……!?」
突然の指名にトテントンからは動揺の声が漏れる。
「それは無理な相談だね。トテントンちゃんはもう私のものだ。愛し合っているのだ。どこぞの馬の骨ともわからないロリコン退役軍人なんかに渡すわけには行かないなぁ?」
私は拉致犯の累犯をねっとりと断る。
そのついでにトテントンと同じ視線までしゃがみ、絆をアピールするために彼女の体に両腕を巻きつけ頬を舐めた。
「……霧札おねえさん、息くさい…」
「え?」
「………とにかく、置いていかないというなら仕方がない。……儀式をするにはまだ生贄が足りない。こんなところで終わるわけにはいかないんだ……」
この言葉の中には、怒りとはまた違った感情が垣間見えた。
だが刹那に見えたそれは一瞬水の中からぷかぷかと浮かび上がる気泡のように、たちどころに消え去ってしまった。
「実力行使だ!」
腕を横に大きく振る。
次の瞬間、拉致犯の声に答えるように白紫の無数の雷が拉致犯の周りに発生し、まるで生きているかのように唸り始める。
そしてその唸る雷はまるで骨格をつくかのように形を形成し、数秒の間に複数の龍骨が纏った砲弾が完成された。
「オブザ08号、終焉の開闢」
突如無数に出現した砲弾は私達を完全にロックオンしており、確実にこの場から逃すまいという拉致犯の憤怒が感じられた。
「ひぃ……」
目に見えてわかる殺意に、トテントンはとても貧弱で声にもならない声が漏れ出た。
「君、デュエリストだったの」
そんな今にも泣きそうなトテントンとは反対に悠々と立ち上がってタバコに火をつける我らが主人公。
「そうだ。お前もそうなのだろう?」
「だったら?」
「デュエリストたる者、揉め事はデュエマで白黒つけよう」
「えー……痛いから嫌なんだけどなぁ」
私は眉を八の字にして嫌気を露わにした。
「ならこのまま死ね。痛くないように殺してやる」
「えー……死にたくないんだけどなぁ」
「………よし殺す」
私の、のらりくらりとした回答に我慢ができなくなった拉致犯に「ごめんごめん」と軽く笑いながら謝罪。
「真のデュエル』でしょ?やるよー。痛いの嫌いだけどさ」
「……いい覚悟だ。子どもは茂みに隠しておけ」
「へーやっさしー」
「その子は生贄だ。傷がついて儀式が失敗でもしたら困る」
「そーゆうことだってさ。ほら、トテントンちゃんはさっきの茂みに隠れてて」
そう言いながら私は幼女の小さな背中を押して誘導する。
「え、でも霧札おねえさんは?」
心配そうにこちらを見て、そんな言葉をかけてくれるトテントンに心を打たれながら答える。
「大丈夫大丈夫、あんな三流に負けたりしないから」
「本当に?」
「うん、ほんとほんと。それじゃ、向こうでおねえさんの戦い応援しててねー」
そこで、トテントンはやっと茂みに入って行った。
「三流とは言ってくれるな。歩兵とはいえ、俺はあの亜人戦争の生き残りだぞ」
「……なにが亜人戦争の生き残りだよ三流」
「なに?」
「ぶっちゃけ亜人戦争なんてこのご時世どこでもやってるし、生き残ったって言ったってどうせ塹壕に籠ってただけなんでしょ?」
「……ふざけるな!!塹壕に籠ることの何が悪い!!人外の攻撃が辺りを埋めつくし、苦楽を共にした仲間も姉妹も!親友も!何もかも全部バカみたいな攻撃に飲み込まれたんだよ!!」
どうやら図星だったらしい。
それと同時に彼の地雷を踏んでしまったようで今まで以上の鬼の顔で、自身の中にある怒りを振り撒いた。
「だから、あんな戦争をしているこんな世界、零にして亡くしてしまえばいいんだ……」
彼の目の中には、血反吐のような赤黒い怒りの炎がわかりやすいほどによく見えた。
「……君は、まだ戦場にいるんだね」
「なに?」
「ごめんなんでもない。さぁ始めようか」
私は一歩、怒り狂う拉致犯に近づく。
「後悔させてやる」
拉致犯も一歩、タバコを揺らして余裕の表情を保つ私に近づく。
この時、周りの感じられる風以外の物音がひどく遠くに感じられた。
茂みの中のトテントンも何が始まるのかと息を呑んだ。
数十秒の見つめ合いの末、その宣言はまるで大会の合図のように突如、二人の口を揃えて表明された。
「「——————デュエマ、スタート!!」」
いや〜、みなさんどうも。娯楽です。
ここで突如、私ごとですがお知らせがございます。
私、大学生になりました。拍手!!
やっとこさ大学生になりましたよ。みなさん。
……そこで、本題です。
ズバリ、投稿がクソほど遅くなりそうです。
理由としは課題が多すぎてきつい。
ただでさえクソみてぇに絶望的に飽き性な僕が、課題という別の障害のせいで更に飽きてしまいそうです。
なるべく早く投稿しますので、皆様お付き合いくださいませ。
追記 コンプレックスの殿堂理由って、超魂Xのせいか………
……返してくれよ…俺のコンプレックス………