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戦闘の勝者達(デュエル・マスターズ)  作者: 娯楽
デュエマ、スタート
3/14

違和感〜風のない森〜

「——————霧札 愛」

きりふだ

私たちはこの苗字をどこかで聞いたことがある。

しかし、私たちの知っている「きりふだ」では決してない。


※これはトレーニングカードゲーム デュエル・マスターズ をファンタジー風に書いたニ次創作です。


「——————霧札 愛(きりふだ あい)

吹き抜けた風でタバコの煙がゆらゆらと揺れる。

「霧札、愛……なら、愛おねえさんだ」

てんとう虫少女、基トテントンは安直にそう呼んだ。

「あはは…愛おねえさんはやめてね?」

「…….なら霧札おねえさん?」

「うん。そっちの方が助かるかな……それじゃ、行きますか」

そうして、私とトテントンは昼の日光も通さない薄暗いフィオナの森へ、足を踏み入れた。


暗く、太陽が笑わない森の奥。

そこに横たわる五人の子供たち。

彼ら彼女らのまだある薄い呼吸が、今でも各々(おのおの)の命が動いている事の安堵を感じさせる。

その頭上には子供達よりも数倍大きな影が、血が集まった震える眼球で、荒れ狂う感情を押さえ込むように見下ろす。

「…….この世界を…ゼロに……この世界を…ゼロに……この世界を……」

静かで不気味な森に、ただただ、影の口から発せられる言葉だけが、小さくこだましていた。


森に入るまで吹いていた風は、入ってからは不思議と止み、それが一層この森の不気味さを漂わせる。

木々が擦れ、古びれた葉が踏みつけられる、そんな森を歩いた時の独特な音が私たちの足裏から淡々と奏でられていた。

この音、ASMRには丁度いいのだろうな。

なんてどうでもいい事を考えながら私の左手を一向に離さないトテントンと共に、妙な寒気のする森を行進する。

「ぶ、不気味な森だね……」

一向に景色の変わらない森の二人きりツアー中にトテントンは聞いてきた。

「そうだねー」

私は自身の左手に感じている小さな小さな命を堪能しながら答える。

「やっぱり、見間違いだったかなぁ?」

一向に変わらず面白みのない木々の光景にうんざりし始めた私の口から、ふとそんな言葉がこぼれ落ちてしまった。

「そんな……」

その何気ない言葉はトテントンの覚悟を揺らぐのには十分だった。

「それじゃあここまで来た意味がないじゃん……」

彼女の覚悟の目には、途端に水が溜まる。今にもこぼれ落ちそうなほどに。

「あ、」

流石にやばい。

彼女の今にも泣き出しそうな顔を見て、私の頭の中にはその言葉と感情が洪水のように流れ込んだ。

「あーあー!やっぱり!やっぱり、こっちであってるよー。この私が子供たちの行列を見逃すはずがないしねー!」

相も変わらず、フォローになっているか怪しい言葉で、自身のミスを死ぬ気で誤魔化す。

後になって、子供の泣き顔だなどという貴重で股関節が疼いてしまう光景を逃してしまった。という、一瞬の後悔の感情が脳裏に過ったのは言葉にしないでおこう。

「……そう、だよね。うん!きっとそうだよ!」

純粋無垢なトテントンは、またもや私の言葉をそっくりそのまま受け止めて飲み込んでくれた。

……なんて愛くるしいのだろう。付き合おう。

この上ないほどの「この子を抱きしめたい感情」をぐぅっっと堪え、今握っている左手の感触で本能を無理に満足させる。

(……しかし、困ったな。ここまで来て何もないとなると、本当に私の見間違いになるぞ)

公園にある森の入り口からここまで、かなりの距離を歩いたはずだ。

言い出しっぺは私だし、このまま何もなしっていうのもトテントンに申し訳ない。

……それに、拉致犯にはおこぼれももらわなければ……。

「はぁ……」

勝手に自分で膨らませた期待とうまくいかない現実にため息がこぼれ、そこから来るストレスを撃退するべく、脳がニコチンを求め始める。

(……仕方ない。ここらで一服……)

右手で一本、内ポケットからタバコを取り出す。次に火をつけるために左ポケットからライターを———

「あ……」

そこまでして、今自分の左手が可愛い少女専用になっているのを思い出す。

「……トテントンちゃん、ちょっとごめんなんだけど左手、離してもらってもいいかな?」

「……どうして、?」

トテントンは少し不安そうに私と目を合わせた。

その質問に、私は目線と表情に心撃たれながら答える。

「……さっき教えた、おねえさんの辛い心を抑えてくれる煙を吸うために、ね?」

「……もしかして霧札おねえさんも怖いの?」

「はい……?」

私のタバコへの哀れな言い回しを聞いたトテントンは、恐らく私がこの森の不気味さにやられてしまったのではないかと誤認したのだろう。

「……それなら、仕方ないよね」

と、トテントンは若干震える声で話し始める。

「実は私も今、とっても怖いの。怖くて辛い…だからおねえさんの手、握ってると安心したの……でも、おねえさんが手を離したいなら、仕方ないよね……」

子供ながらに気を遣って、トテントンは乾いた笑顔を振りまいた。

なんと可愛らしくも優しい子なのだろう。

この子は自分が感じている恐怖の緩和よりも、私のクソみたいなニコチンの中毒症状を優先してくれるというのか。

うぅ……っ!胸が、苦しい……。

大の大人が、こんな小さな子供相手にこれでいいのだろうか。

いや!いいはずがない!!

そんな事ないよ。おねえさんがついているよ。

そう言って彼女を安心させたい。

彼女にも負けない程の、優しい言葉をかけてあげたい。

私は、離したくないと、痛いほど強く懇願してくる幼女の右手を改めて握り、慰めの言葉をかける。

「……実は、そうなんだ。おねえさんも怖いんだよ。だから、ごめんね?あははー……」

ごめん普通に無理だった。子供の優しさとか知らん。タバコ吸いたい。

いや無理だって。道徳的な優しさでストレスが緩和するのは基本小学校までだって。

「うん、いいの」

そう言って震えながら、私との物理的な繋がりをトテントン自ら断ち切る。

その間も彼女は名残惜しそうにこちらを見つめてくる。

………やめてくれ。心が痛むやろがい。

せめて吸い終わったらすぐに繋ぎ直してあげよう。

そう心に誓いながら私はタバコに火をつけた。

「すぅーー、はぁーー………」

子どもの優しさを振り切って吸うニコチンを肺で堪能しながら回りにくい思考を無理に回転させる。

こんな奥まで来て何もありませんでした、だなんて無駄足にも程がある。

「はぁ…どうしてもいつもこう、うまく回らないかなぁ……」

憂鬱が憂鬱を呼ぶ。

そのせいでタバコが燃える速度が早まる。

「はぁ……」

憂鬱と緩和がぶつかり、頭の中がドス黒い有害物質で満たされていく。

風で揺れるタバコの煙までもが、まるで私を嘲るように笑って見えた。

「なんだよ。お前まで私を笑うのか?散々貢いでやったくせに」

幻覚に文句を垂れながら結局この煙に頼るしかない自身の哀れさを噛み締めながら再度吸引。

「はぁ……ん?」

ふと、妙な違和感が汚い頭の中に生まれた。

「煙が……揺れてる……?」

「どうしたの?霧札おねえさん」

私の様子が気になったトテントンはさっきまでの不安そうな顔をさらに暗くして聞いてきた。

「なにかあったの?」

トテントンの不安の言葉に私はあえて少しの笑顔だけで答えた。

理由はこれ以上この子の不安を増やすわけにはいかなかった、そして一刻も早くこの違和感の正体を見つけたかったから。

私の意外な返しにトテントンは「?」の文字を頭に浮かべていた。

少なくとも、彼女の不安が膨らむことは避けられたらしい。

その様子を確認し、次に本命の確認作業に移る。

タバコを垂直に持ち、煙の様子を伺う。

案の定、揺れている。

タバコの煙が揺れるなんて当たり前。そう誰もが思うだろう。

確かに、今このタバコは何の変哲もなく風に靡くように左に大きく揺れている。

……これが()()()()()()おかしいのだ。

試しにタバコとは反対の手袋を外し、人差し指を舐めて風の冷たさと方向を確認する。

……わからない。

わからないというより、何も感じない。

風の冷たさも、風が吹く方向も、体液では判断できない。

でも、タバコの煙は動いている。それも風がなければ不自然なほどに。

これで確信した。この森には何かある。もしくは、何かがいる。

「霧札おねえさん……?」

「あ、ごめんトテントンちゃん。それじゃあ行こうか。…あ、声は静かにね」

そう言って私はタバコを右手に間違え、彼女が欲していた私の右手を差し出す。

「うん……!」

その手を見た途端、先ほどまでの暗い表情は消え、かわいい幼女の顔が戻った。

そうして、再び私たち二人は風の違和感が漂う不気味で気色が悪い森の散策を再開する。

だがその再開は、すぐに終わることとなった。

「……?」

茂みの奥。

薄暗く、人どころか動物の気配すら感じないそんな場所から、小さく響く声が聞こえてきた。

「……どうやら、目的地に着いたらしい」

「もくてきち…?」

私の言葉にトテントンは意味がわからず、その言葉を繰り返す。

「トテントンちゃん、またまたごめんなんだけど、おてて、また離してもいいかな?」

「また辛くなっちゃったの?」

「ううん今度は違う。お友達が見つかったかもしれないの」

「え!みんなが……!?」

幼女は目をキラキラと輝かせた。

「うん。でも一つだけ約束。私がいいって言うまで、私の後ろから出てきちゃダメだよ」

「なんで…?」

「んー?ちょっと危ないから?」

「うーん……」

私の説明に理解が追いつかないのか、トテントンは顔を伏して中々戻してくれない。

「だいじょーぶ。別に怪我したりしないから」

「……わかった」

そこまでして、トテントンはようやく首を縦に振った。

「よし。それじゃあ行こうか」

そう言って、私とトテントンは茂みに身を隠さながらその後奥の様子を確認する。

「……おやおや」

その光景に、私は無意識に声が漏れた。

「え———」

トテントンもその光景にやられ、悲鳴がその場に響く————

「むぐぅ…」

その前に、私がすかさず彼女の口を塞いでそれを阻止する。

「ごめんね。でもちょっとだけ静かにしててね」

できるだけ優しくトテントンに話す。

トテントンも感覚で緊急事態だと察したようでさっきまでの迷いは一切なく瞬間に首を縦に振った。

「いい子」

そう言って頭を撫で、改めて目の前に広がる光景を注視する。

暗く、太陽が笑わない森の奥。

そこに横たわる五人の子供達。

それだけなら今すぐ駆け寄って色々な確認をしたいところだ。

……けして下心とかはではない。安否の確認だ。

その倒れている子どもたちの中心に何もせずに立っている大きな人の影。

見た限りで細身の男性に見える。

恐らく、その男こそが今回の拉致の犯人で間違いないだろう。

だがしかし、今すぐその場所に駆けつけられないのは犯人がいるから、なのは一番の理由ではない。

本当に駆けつけられない理由はそのさらに頭上。

そこに、私の身長の倍ほどの大きさの、薄白くて巨大な球体が重力を無視して浮いていたからだ。

私が言葉が漏れたのも、トテントンが悲鳴を上げようとした理由も、このおっきくて不気味な球体が原因だ。

この森の違和感の正体、それがこの球体であるのは間違いないだろう。

しかもこんな非現実的な物を前にして平然と立っている拉致犯を見るに、球体は犯人の物と見て間違いないだろう。

「あーめんどくせ」

現状の文句を垂れながら、私は内ポケットのさらに奥から黒く、所々に金色の装飾が施されている銃を取り出す。

「霧札おねえさん、それなぁに?」

小声でトテントンが聞いた。

普通、銃を見たら驚くものだと思っていたが、どうやらクリーチャーワールド(こっちの世界)では銃は珍しいようだった。

「これはねー、ガンバg(グレイト)くん。私の命綱なんだー」

「へー」

あまりよくわかってなさそうにトテントンは答える。

「それじゃあ、やってみますか」

そうして、茂みから両手でガッチリとグリップを掴み、左目を閉じ狙う。

黒檀の黒い先端が茂みから顔を出し、拉致犯に向けられる。

ニコチン混じりの深呼吸で全身の力を抜き、安全装置をオフにする。

——————準備完了。

「…….オラくらえぇ!!ガガン・ガン・ガガン!!!」

小学生のような掛け声と共に、重々しい引金に指をかけ、力を込める。

その瞬間、静かだった森に火薬の煙と爆音が発生し、茂みから口を出していた黒檀の銃口から鉛玉が発射された。

どーも、娯楽です。

更新がクソ遅くなりました。

……すみませんです。

言い訳をいたしますと、旅行に行っておりました。その後に風邪をひきました。

はい。言い訳終わり。

これからもこんな感じでグダると思いますが、またお付き合い頂けると幸いです。


祝 ファーーーー!!甘い甘い!!ジャイアントデッキ優勝!!ゴルファンタジスタおめでとう!!

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