おねさんのお名前。
頭痛い……きもち悪ぃ………ここぉ……どぉこぉ……?
………… ??あー………こども…たちがぁ……わろぉ………てる……。
………あの、だいじょうぶ、ですか……?
………ロリ……?
※これはトレーニングカードゲーム デュエル・マスターズ をファンタジー風に書いたニ次創作です。
「…………てんとうむしの…ロリ……?」
…………ベチァ……。
これが、最後の記憶。
………………………。
…………………………………。
………………………………………………………。
……………………ブクゥ。
?
ぶくぅ……?………ぶぼ??……ぶぼぼ、ぼぼ、
なんだろう。この、体の中を直接洗濯してくれている感覚。
あぁ……、これ、結構、きもちぃ……なぁ。
………でも、なんだろ。
なんか、くる、しい?なんか。なんだ?息が、しにぃ、くく……。
「……………ごぼぉ!?」
喉に液体が大量に詰め込まれる感覚。
口から全身へ行き渡るはずの酸素が入口付近で堰き止められ、意識が深淵へとゆっくり落とし込まれかけた。
それを非常事態と感じた脳が肺に命令しその要因を喉から吐き出させた。
「うごぉ、ごほ、ごほ、………え?なに?」
「あ、おねえさん。起きた」
「え………?」
朦朧とする意識とは別に、自分の横からはっきりとした声が聞こえた。
「おねえさん、大丈夫?」
そこにはてんとう虫の服を着た、小学生ほどの幼女が皮の水筒を持って私を心配そうに見つめていた。
「……え?」
目の前のてんとう虫の少女は、可愛らしく私の顔を下から斜めに覗き込む。
「おねえさん………?」
それは、もう、天使かってほどに。可愛らしく。
「……カワイイ………ドュフッ………」
「え?なんて、おねえさん」
てんとう虫の少女は私の無意識の言葉を聞き取れず、聞き返した。
「あーいやいや、なんでもないよ。」
私は普通に誤魔化した。
「それより、君が私を助けてくれたのかな?」
「うん。おねえさん、ベンチから落ちて寒そうに震えてたんだよ」
「あーそれは寒かったからじゃなくて、シンプルに死にかけて痙攣してただけだね……。とにかく、ありがとうね。かわいいてんとう虫のお嬢さん」
彼女にお礼を言って改めてベンチに腰掛ける。
そして胸ポケットから白と緑色の手のひらサイズの小箱を取り出し、中から白い棒を一本取り出す。
「はぁ…ここどこだよ。マジで。……せっかく情報つかんだのに……」
ぶつぶつと理不尽な現実に文句を垂れながら、不幸を誤魔化してくれる白い棒に銀色のライターで火をつけ、煙と一緒に深呼吸。
「すぅーーー、はぁーーーー…………」
「おねえさん、どこからきたの?」
ストレスの緩和を堪能している横から、命の恩人こと、てんとう虫ロリータがそんな質問をした。
「おや見てわからないかな?おねえさん、見ての通り人間だからさ。人間の世界からやって来たんだよ」
「ふーん」
「あれ?あんまり、興味なかったりする?」
「うーん。にんげんの世界とかよく分からないから…。本物の人、初めて見たし…」
「そっかー、おねえさんが初めてかー、それはうれしーねー」
そんな会話の間に、呼吸をしながら一緒に劣等感を乗せた煙を吐き出す。
「……あの、それ、なに?すごく苦い匂いがするけど……」
てんとう虫少女は私の右手にあるタバコを不思議そうに指差した。
「これ?これはね、嫌な気持ちや暗ーい心を抑えてくれる物だよ」
「そんなのあるんだ。……私も、それ使ってみたいなぁ」
「そっかー、使ってみたいかー。………え?」
少女の衝撃発言に、私の思考は一瞬でフリーズした。
「え…?なに?なんか、いやことあったの?」
暗い目をした少女を前に、ヤニを吸って幸せを感じているクズなんぞに対応する術などあるわけがなく、あたふたと意味のない動きをするのみ。
「あーえーっとぉ、親御さんから酷い目に遭わされてるとか……?」
恐る恐る聞いてみる。
この手の問題は大抵虐待がらみとテレビで見たことがある。………気がする。
その質問に俯いた少女は首を振った。
違う、と言うことだろう。
「え……?なら、どっか痛い?」
それも首を振った。
そりゃそうだ。今まで会話をしていてそんなそぶりは一切なかった。
「……えーーっと、なら、友達と喧嘩しちゃった?」
「……そう、かも……?」
「…….?分らないの?」
「…うん」
「………」
気まずい。
どう話を聞こう。こう言う時って、どう会話を続ければいいのか。
(あー、めんどくせぇ……。大体なんだよ、喧嘩した”かも”って)
切り出しかたが分からず、頭をかきながらニコチンに助けを求めるように煙を吸う。
しかしいくら頭を捻っても、ニコチン様の力を借りても、いいアイディアどころか何一つとして頭の中に浮かんではこなかった。
「………私ね、ほんとは今日、ボントボくん達と一緒にデュエマするはずだったんだ」
私が少女への慰めの答えを考えていると、少女が自ら答えを出してきた。
「………デュエマ?」
「うん。…知らない?自分の分身や周りの妖精さんとかの力を借りて遊ぶゲームなんだけど」
「………遊び、ね……」
デュエマは遊び。
その言葉が私の中にある記憶を増幅させ、そこからくる感情が今口にしているタバコを一気に終わらせた。
「………おねえさん?」
その様子は幼い少女にとって不安を煽るには十分すぎるものだった。
「………あぁ、すまない。なんでもないよ。……えっと、デュエマの話だったっけ?それで、その子たちとは?」
「……いなかったの」
「いなかった?」
ここで私は、吸い終えたタバコを腰に付けていた金属製の灰皿にこすりながら入れ、鎮火。
カチャン、と鉄の蓋が閉まる時の金属同士がすれ合う音はいつ聞いても癖になりそうだ。
そこからもう一本、幸せの元であるタバコを取り出し火をつけ一服。
その間も少女は淡々と自分の気持ちを吐き出していた。
「どうして、いつもここで遊んでたのに…。わたし、なにかしちゃったのかな……」
涙目になる少女。
「………かーわい」
それを見て、私は心の中で高鳴る心臓の鼓動を理性とニコチンで抑え込む。
「……じゃなくて。それなら、その子たちとお話ししなきゃね」
「……お話し?」
私は保育士でもなければ子持ちでもない。
でも、子供がお友達関係で困っているのならこの言葉をかけるのが一番合っているだろう。
「そ。お話し」
「でも、なんてお話ししたらいいんだろ」
「そんなの、いつも通り楽しくお話しすればいいんだよ」
有毒で幸せな煙が立つ。
「大人はお話しようと思ってもできないことが多いからさ。ほらすぐに暴力とか武力で訴えたりするじゃん」
「ぼーりょく?ぶりょく?」
「あーまだてんとう虫ちゃんには難しかったか、」
その子供特有の無垢が愛おしく、つい頭をなでなでしてしまった。
「とにかく、大人の方が結構子供っぽいってこと。………そういえば子供たちといえばさっき、亜人の少年少女がずらずらと森の奥に入って行ったのを見たな」
「…森?」
森の単語にてんとう虫少女はこれまで以上の食いつきを見せた。
「そう。あれは確か……」
意識が消える前の、うる覚えの記憶の中からわずかにある子供達の行列の部分を懸命に掘り探る。
頭痛い、気持ち悪い、吐きそう、世界が回る。タバコ吸いたい。かわいいおっぱいの上で寝たい。ふかふかのベットが欲しい。
そんな泥酔の最中、ベンチ横たわり薄れる意識の中、最後に見た光景。
それは、確か……
「……あーあれあれ。あの森」
そうしてやっとの思いで掘り出した記憶の中から思い出した、子供達の行列が入って行った森を指差した。
その方向にてんとう虫少女も一緒に視線を向ける。
「あの森って…」
てんとう虫少女が指の先の森を見た途端、息を呑んだ。
「…どうかした?」
「あの森、フィオナの森の入り口……」
「フィオナの森?」
「うん。フィオナの森は動物さん達のお家で、私たちとは違うところに住む人たちだから、フィオナの森には入っちゃダメってお父さんが言ってたの」
その言葉を聞いてこの少女がどうしてあの森を見て怯えていたのかわかった。
「なるほど」
「もしかして…みんなフィオナの森に……?」
「そんなまさか。お父さんが君に森に入っちゃいけないって教えてるように、他の子達も親御さんからそう教えられてるはずでしょ」
「それは、そうだけど…」
とは言ったものの、てんとう虫少女の言い分も一理ある。
できれば泥酔している時の記憶はもうこれ以上思い出したくないのだが、かわいい子供が困っているのだ。致し方ない。
「うーーん、」
———虫の少年少女の行列。それに手を引かれて一緒に森の中に入って行ったもっと大きな存在。
「………大人?」
「え……?」
「あ、いやね、大人がいたんだよ。その子供達の行列の中に」
「大人……。誰かのお父さんかな?」
「どうだろう。見た感じ、人型の亜人だったけどなぁ」
「人………おねえさんのお友達?」
「いや、違うね。私は人そのものであって人型の亜人じゃないからね。」
「そうなんだ……」
どこか残念そうに下を向く少女。
そんな少女を横に、私は静かに一つの可能性に辿り着いていた。
———これ拉致じゃね?
子供たちと手を繋いで薄暗い森の中へ、羨ましい……こう言ったケースは人間の世界でもよくある事だ。羨ましい…、幼い子供たちを騙してなのか無理やりなのかは分からないが…とりあえず羨ましい。なんって人の風上にも置けない大人なんだ。……いや相手は亜人だけども。………それはそうと羨ましい!!
「………許せんなぁ」
これこそが結論。
「え、なにが?」
てんとう虫少女が私の結論の意味がわからなかったようだった。
「いやなんでもない。それよりもさっきの『お友達がフィオナの森に入った』と言うのはありえるかもしれないな」
「ほんとに?」
私の意見を聞いた途端、大きくてクリクリとした幼女目の中に涙が見えた。
…….チョーゼツニカワイイ……
「大丈夫。おねさんが見てきてあげよう」
「え……!」
その言葉が耳に入ってきた途端、さっきまで暗かった少女の顔は一気に明るくなった。
「君には命を救われたからね」
そう。これは恩返し。子供達を助けるための行動。けして犯罪者のおこぼれを貰おうだなんて、そんなゲスみたいなことは、けっして考えていない。けっっして。
「そうと決まれば早速潜りますか」
そうしてベンチを立ち、森の入り口の前に立つ。
「それじゃあ君は家に帰りなさい。あとはおねえさんに——」
そこまで話した私の言葉は、突然掴まれた左手のせいで遮られた。
言葉を遮られた原因を探るべく、その原因である掴まれた左手を見てみると、そこには震えながら、こちらをまっすぐ見つめるてんとう虫の少女がいた。
「……なに?」
その上目遣い、可愛いからやめて欲しいのだが。
「……私も行く」
その一言は、とても震えていて、それでも強くあろうとするかのように力が込められた言葉だった。
「……なんで?」
「おねえさんが言ったんでしょ。お友達とお話ししようって」
「うぅ…」
数十分前に下手なことを言った自分を恨みながら、なんとかこの子を引き返す言葉はないかと再び模索する。
「…危ないよ?」
「うん」
「……怪我しちゃうよ?」
「うん…」
「怖いお化けが出るかもよ?」
「うん…!」
「………」
その一言一言には、この子なりの強い意志が込められていたように感じた。
「うーーん、」
目を強く閉じ、顔を青い空に向けて私は悩んだ。
こんな可愛い子をいかにも危険そうなところに連れて行くって言うのは、かなり、抵抗がある。
だが、こんなにも頑張って覚悟を決めたこの子の意思を否定するのも、なんだか違うような気がする。
「………はぁ、仕方ない」
「え……!」
私の答えを察した少女は先程まで鋭かった表情は瞬間に笑顔に変わった。
「ただし、危なかったらすぐに引き返すからね」
こんな顔のいい子が怪我でもしたら実に勿体無いしね。
「うん!」
私の下心なんて無垢の少女には気づくはずもないのだろう。
「それじゃ、行こうかてんとう虫少女」
「あ、私の名前…」
「え?……あ、そういえば」
ここまで会話をしてきてお互いの名前すら話してなかった事実に今気づいた。
「ごめんねぇ。おねえさんすっかり名前言うの忘れちった」
「そうだね。私はトテントン。おねえさん、お名前は?」
「私?私はねー」
久々に名前を聞かれ、照れ臭さから口が緩んでしまう。それでも、目は笑えずに。
タバコの煙を揺らしながら、少しズレたメガネを直し、風で揺れる多量のピアスやアクセサリーを効果音に、私は名乗った。
「——————霧札 愛」
どもども、娯楽です。
なんとかニ話かけました。……よかたです。
私、結構三日坊主なので、いつものペースでやると三話までしか進まないと言うことに、気がつきました。
……三話で止まったてたら、お察しください。
あぁ……アナカラーマルルのデッキが欲しい……(総額5万円…)