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戦闘の勝者達(デュエル・マスターズ)  作者: 娯楽
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13/14

トテントンはラーメンを食べたことがない。


私はオヤジの店に入る前にふと辺りを見渡した。

「………あれ?ゼーロンの卵、どこ行った?」

「お嬢様、いかがなされました?」

「……いや?なんでも」

そう言って、私は店に入った。


※これはトレーニングカードゲーム デュエル・マスターズ をファンタジー風に書いたニ次創作です。


「いらっしゃい!」

顔面野菜ラーメンの男はその顔には似合わないような明るい声でトテントン達を迎える。

「いらっしゃいって私たちいつもいんじゃん」

「おまえじゃねぇ。そこの嬢ちゃんに言ったんだよ」

そういって野菜ラーメン頭のオヤジは私の後ろに隠れていたトテントンを指差す。

「あ、そっか」 

「お嬢ちゃん。腹減ってねぇか?」

そう言ってオヤジはトテントンの視線と同じ高さまで身長を低くして頭を撫でる。

「あ私、塩ラーメンね」

「お前はラーメン食う前に家賃払え!!」

私の横槍をオヤジは瞬発的に突っ込む。

「えーいいじゃーん。なんだかんだ滞納してくれたって文句言わないしさぁ」

「ついさっきまでボロクソに文句言い合ってたろうが」

「あれ?」

「……あのオヤジさん」

ここでヤップップが申し訳なさそうに会話に入る。

「おぉヤップップちゃん。突然消えた時はビビったぜ。まぁどうせこいつ絡みだろうけどな」

オヤジはそう嫌味ったらしく私を後ろにして指差し、一方の私は「べー」と舌を出して全力で反撃する。

「それに関しては申し訳ありませんでした。後のお店の片付けは私がやっておきます。それよりも……」

ヤップップは困った表情を更に深刻にし、自身の後ろにある光景をオヤジに見せた。

そこには丁度、ヴェルベットが顔色の悪い子ども達を数人抱えてお店に入って来るところだった。

その様子を見たオヤジは、メンマの両目を大きく開いて驚く。

「お、おいこれは…大変だ!とりあえずそこ寝かせとけ!」

そう言ってオヤジは四人用の畳の席を指差し、店の奥へと慌てて戻っていった。

「ありがとうございます」

ヤップップはオヤジの消えた方向に軽く頭を下げてから、畳の真ん中にあった机をどかしヴェルベットを誘導する。

「こちらに寝かせてあげてください」

「分かりました」

優しく横になって行く友人達を見て、トテントンは今にも泣きそうな感情を抑えながら駆け寄る。

「……みんな…」

「さっきも言いましたが、眠っているだけです。大丈夫ですよ」

その様子を見ていたヴェルベットが再度、トテントンの頭を撫でて宥める。

「……うん」

「……ね、ねぇ?私も何か手伝うことって……あり…ますか…ね?」

自分だけ何もしていない現状が耐えられなくなった私が、気まずさで途切れ途切れな言葉をなんとか繋いでヤップップに小声で聞いてみる。

「いいえそんな、お嬢様は座っていて下さい。後のことはこのアガイブ・ヤップップにお任せを」

ニコ、と微笑みカウターの方向を手のひらで丁寧に指すメガネメイド。

……要するに黙って座ってろって事だ。

「………………はい」

私は肩身の狭さを感じながら、カウターに小さく座ってタバコに火をつける。

「———おい、これ持ってきたぞ」

ここで、両手一杯の水やタオル、布団を持ってきたオヤジが店の奥から帰ってきた。

「ありがとうございます。なら布団に寝かせてあげましょう」

ヤップップはオヤジから布団を受け取ると、テキパキと素早い動きで子ども達を寝かせていく。

流石はメイド。そういったところは弁えているらしい。

そうしてものの数分で、子ども達を問題なく寝かせる事ができてしまった。

「いやぁさすがだな」

その様子にオヤジが賞賛の声をあげる。

「いえそんな。いつもお嬢様の夜の布団をご用意していたからですよ」

「夜の、って部分はいらなかったと思うけどそうだね。いつもお世話になっております」

カウターでタバコを指で挟みながらその様子を伺っていた私もヤップップの謙遜(けんそん)を否定し、その後に賞賛を贈る。

「え、いやそんな。お嬢様まで…」

私の賞賛が相当嬉しかったのか、その言葉を聞いた途端にヤップップは頬を赤く染め、それを両手で隠しながら照れた。



「…ねー?子ども達も寝かせたしそろそろラーメン食べない?私お腹ぺこぺこだよー」

子ども達も完全に寝静まり、しばらしてからの事。

空腹の痺れを切らした私がみんなにひもじく提案する。

「そうですね。サボってしまった分しっかり働かないとです」

「全く、調子がいいやつめ」

ヤップップが両手を合わせながら嬉しそうに、オヤジはため息を乗せて呆れながら、私の提案に賛同してカウターの奥にあるキッチンへ向かった。

「トテントンちゃんもお腹空いてない?」

あれからずっと眠ってしまっている友だちのそばを離れていないトテントンにも提案する。

「……私は…いい……」

少女はその提案を俯いて断る。

しかし、彼女の食事への否定を許さないと言わんばかりに彼女の胃袋が大きく唸り、栄養を欲した。

「——————っっっ!!」

それが鳴り響いた瞬間、彼女は赤面して自分のお腹を押さえ込んだ。

「あっはははははは!!」

その様子に私は思わず顔を天井を見あげて笑ってしまう。

「…………」

「あ、ごめんごめん。いや違うんだ。トテントンちゃんって年よりも結構しっかりしてるのに、やっぱり子どもなんだなぁって思ってさー」

私の笑いを聴いて、トテントンの赤面はさらに赤くなる。

「……お姉さん、嫌い」

誤解を解いたにも関わらず嫌い呼ばわりされてしまう。

「えぇ……」

「あまりその子をいじめてあげないでくださいよ、愛殿」

そう私に声をかけてきたのは子ども達の様子を見ていたヴェルベット。

「あらウェルヘッド」

「ヴェルベットです。子ども達の体調は皆問題ありません。心拍数も正常です」

「そ、よかった」

「では私はそろそろ戻りますね」

「えー!お酒飲んでいかないの?」

「私飲めませんって」

「えー修行とかどうでも良いじゃん。てかたまには休まないと体壊すよ?」

「休みすぎでお体を壊すよりはマシですよ。愛殿?」

「うぎぃ、あっははは……」

皮肉たっぷりに晩酌を断られ、今度の出てきた笑いは乾いた弱々しいものになってしまった。

「では、私はこれで」

そう言ってヴェルベットは丁寧に頭を下げる。

「りょーかい。今日はありがとね」

「いえ、愛殿の頼みとあらば。…しかし、あの卵、危険ですよ。」

「……そうだね。警戒はしておくよ」

「十分に。それでは」

その言葉を最後にして、ヴェルベットは光の星となってはぜて消えた。

「え!?ヴェルベットさんが消えちゃった…」

その様子を見ていたトテントンが隣で驚いた声を上げる。

「あーこれね。人と契約してる亜人は契約主の中に住むことができるんだよ。便利だよねーこれ。場所取らないし亜人の方は入ってる間はお腹すかないらしいよ」

「へぇ…」

「けどこの間、中の一人が愚痴ってたぜ?お前の中、酒クセェし腸内環境最悪だし、今すぐ出て行きたいってよ」

キッチンからラーメンを両手に二つ抱えて持ってきたオヤジが私にとっての衝撃の事実を口にした。

「はぁ!?誰だそいつ!クビにしちゃるぅ……!」

「なに今更の事でキレてんだよ。ほらお待ち」

コト、硬い器がカウターの木製のテーブルに置かれる。

その器からは、湯気を上げながら油や麺、スープの食欲がそそられる香りが辺りに漂う。

この暴力的は匂いはトテントンの胃袋を殴り飛ばし、無意識にカウターの席へと誘っていた。

「うわぁ!なにこれ?」

「あら?トテントンちゃんはラーメンが初めてだったかな?」

「あ…いやこれは…」

自分の嘘が自身の行動でバレ、ついここまで足を運んでしまった言い訳を探すも目の前のカロリー的暴力のせいでなにも浮かばない。

「それはそうですよ。私もここに来るまで知らなかったんですから」

追加のラーメンを持って来たヤップップがトテントンに賛同する。

「それもそっか。それにしてもやっぱりお腹空いてんだねー。遠慮しなくてもいいのに」

「……そうじゃなくて、」

そう言って、トテントンは小さな唇を震わせながら話し始める。

「みんなが大変な目に遭って、私だけなんともなくて……」

更に震えるだす声。ポタポタと溢れ出す涙。

「わたしだけこんなあったかいのは……ずるいよ……」

これが、この子なのだろう。

こんな優しい子が、どうしてこんな事に巻き込まれてしまったのか。

なにか、言葉をかけてあげなくては。

この子のせいではない。仕方がない。忘れてしまえ。

この場の、この小さな少女以外の大人達はそういう言葉を浮かべては口に出せない。

「———それはちがくない?」

「え……?」

重くなんと声をかけて良いのかわからない言葉。それに大人達が止まっていると、その大人達の中から言葉が投げかけられる。

その言葉の応答は、真反対の軽い口調で答えられた。

そんな場違いのような答えを出してきたのは他でもない私。

「お嬢様…」

「お前、もうちょっと言い方ってもんがねぇのか……!」

私の回答を聞いた二人が慌てて私の口を閉じようとする。

私はそれをフルシカトして続けた。

「大体、トテントンちゃんは巻き込まれただけでしょ?」

「……まきこまれた…だけ……」

「そう。だからそんな悲観する必要なくない?どうしてもキツかったらタバコでも酒でもなんでも取り入れてリセットかませばいいって。『体に悪いは心に良い』だよ?」

「……なぁにそれ?」

「私の座右の銘」

「ざゆうの…めい…?」

「そ。座右の銘っていうのは、自分の人生において一番大切にしたい事。………ほら」

そう言って、私はトテントンの前に手のひらサイズのミニグラスを置く。

その後、グラスの中には電気の明かりに反射する液体が、氷を揺らしながら注がれた。

「ちょ…お前それ…」

オヤジはなにか止めるように言っているが、私は気にするそぶりすら見せずそれをトテントンちゃんに勧める。

「ほら、クイっと」

「……くいっと?」

言葉の意味を理解できない幼児に、私は指二本でコップで作り、飲んでみる動きをつけてその意図を細かく伝えた。

その動きを見てトテントンはようやく私が「これを飲んで」と言っているのが理解できた。

「………」

トテントンの小さい手でも両手で持てばすっぽりと収まるほどの大きさしかないコップ。

それをトテントンはその通り両手で可愛らしく持ち、手にも負けないような小さな口いっぱいに中の飲み物を飲み干した。

「うおぉ……」

「あらら……」

その様子をカウンターで見ていたオヤジとヤップップはやってしまったと言わんばかりに驚いていた。

どうしてこの二人は驚いているのか。

飲んだ直後のトテントンにはわからなかったが、その答えはすぐにやってくる。

「………ごほぉ!?」

液体が彼女の喉を通ろうとした瞬間、まるで喉が焼けるような感覚が彼女を襲い、トテントンは顔から熱を出してカウターの机に倒れ込んだ。

「あっはははははは!!すごいねトテントンちゃん!イッキイッキ」

「言ってる場合かアホ!!」

「あわわ、お水お水!!」

その光景に、私は笑い、オヤジは私を叩き、ヤップップは慌った。

「ごほ!ごほごほ……!何飲ませたんですか、お姉さん……ごほ…」

「あっはは…ごめんごめん。私の言いたい事を実際に体験してもらった方がいいかなって思って」

「たいけん……?ごほ…」

「そ、体験。今トテントンちゃん含めて私たち全員、どんな顔してる?」

「え…どんな顔って…」

トテントンはその言葉の通り、辺りを見渡して皆の顔を確認する。

呆れたラーメン顔のオヤジさん。

慌てて心配そうにトテントンにお水をくれるメイドさん。

お姉さん。

———そしてグラスに反射して映る、トテントン自身の笑っている顔。

「みんな、楽しそう……」

「でしょ?自分が暗くなってたらこんな光景が広がっててもわかんない。それにダルい。…ならアルコールでもニコチンでもカフェインでも使ってでも笑う。そしたらまぁちょっとでもいいから周りを見てみてよ。もしかしたらこういう周りが広がってるかもしれないから」

お姉さんは笑いながら自身のグラスを取り出し、同じものを注いで口へ運んだ。

慣れているのか、お姉さんはトテントンと違ってむせる事なくすんなりと飲み干す。

「ぷはー。…まぁそしたら自然と笑えるし、そうじゃなくても気持ちがスッと軽くなる。これが私の幸せ。ご理解いただけたかな?」

「……わかんないよ」

「あれ?」

トテントンの想定外の感想に、私は首を傾げてた。

「あら?子どもには、まだ早かったかしら」

「法的にな」

大人のお姉さん風の言葉をオヤジの正論パンチのカウターを喰らい。私は苦い笑いをこぼす。

「………わからないけど…なんか…たのしぃ……い……」

ドサ、という鈍い音と共にトテントンの頭はカウターの机へと落ちた。

「あれー?トテントンちゃーん?」

私の呼びかけに突然伏したトテントンは答えない。

私が左手で顔を確認してみると、そこには子ども特有の可愛らしい笑顔で眠る幼児がいた。



ヤップップは追加で眠ってしまったトテントンを友人たちの隣に寝かせる。

「あらら。寝ちゃったか」

「そりゃあ、あれだけ盛ればな」

「そんなに盛ってないけどなぁ?やっぱり子どもだから吸収がいいのかな?」

タバコを吹き、カラカラとグラスの氷を揺らす。

それと同時に、胸のポケットから小さな瓶を取り出しグラスの隣に置く。

その瓶の中には白い粉が半分ほど詰められおり、明らかに使われた後の量だ。

それと同じようなものが私の胸ポケットからもう一つ。

「それは?」

「ん?人間界の幻覚作用と快楽剤の薬」

「お前まさか……」

「まてまて安心しろって。そんな中毒になるほど入れてないから」

その言葉を聞いたオヤジは顔を思いっきり後ろに退けて私から距離を取る。

「……もしかして、盛ってるってこれの事じゃないの?」

「んなわけあるか!普通に酒だよ酒!ガキに飲ますとはどういうことかと思ったが、まさか薬まで盛るとはなぁ!」

「あーオヤジ、しー。子どもたちが起きちゃうでしょ」

オヤジの叫び声を抑えるように、私は左指を一本立てボリュームを落とすように促す。

「チ、何が子どもたちだよ全く……」

憎み口を叩きながらも、「起こしていけない事」を理解したオヤジは私の言葉通り声の大きさを落としながらカウターの奥へと帰っていった。

「………いいない事はわかるよ。でもさ、私は子どもは好きだけど、子守の方はした事もされた事もないからさ。柄じゃないし」

私はまるで先生に怒られた後のこの小学生のようにぶつぶつと意味のない言い訳を並べる。

「私みたいな人間が話を聞くより、薬様のお力を魅了されたほつがトテントンちゃんも楽しい夢を見られて幸せでしょ」

私は後ろにいる彼女の顔を遠目に、グラスを口へと運ぶ。

カラン、という氷の音が耳の鼓膜を揺らしす。その音は、自分が今孤立している事を自覚させる。

「君は、一体どんな夢を見たのかな?」



トテントンちゃんのラーメンはスープを吸って伸びてしまっていた。


ラーメンよりうどん派。

好きなうどんは、赤いきつね。

どうも娯楽です。


先日誕生日をむかえまた。拍手!!!

お酒を飲めるまであと少し!タバコを吸えるまであと少し……!

ぐへへ……

いやーストレス溜まる毎日ですが、上の二つを楽しみに生きていこうと思います。


ではでは、今回も戦闘の勝者達デュエル・マスターズを読んで頂きありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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