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戦闘の勝者達(デュエル・マスターズ)  作者: 娯楽
デュエマ、スタート
11/14

デュエマ〜決着〜

「……全く、お嬢様は一体どちらに……?」

「全くだ…どこほっつき歩いてんだかな…….あいよ!theラーメン一丁!!」

「はぁ…お嬢様……」


           ———『出前百丁チャル名人』看板メイドの心配と親方の愚痴。



※これはトレーニングカードゲーム デュエル・マスターズ をファンタジー風に書いたニ次創作です。

デュエマ〜決着〜


——————————————————暑い。


———————————————熱い。


————————————あつい。


—————————暑い暑いあつい………。


あぁ………あつい暑いあつい暑いあつい熱い熱い熱いあつい暑い暑い暑い熱い暑い暑いあついあついあついあついあついあつい………!!


ァア……アツイ………


「………イカリノアブラニ火ヲツケロ」

それは彼の口から出た、彼の意思でない言葉。


心臓を貫かれ、大量の血を流し、嘔吐感とめまいに襲われながら、拉致犯の意識は深淵よりも深い闇へと落ちていった。

——————そこで見た、一つの炎。

その炎は空気のない暗闇で燃え続け、まるでこちらに気づけと言っているように迫ってくる。

その炎はとても熱く、業火と呼ぶに相応しい大きさと光だった。

その炎が拉致犯の目の前まで近づくと、

「貴様の怒りはその程度か?」

……ふと声が聞こえた。

薄れる意識の中ではっきりと。まるでこの暗闇で光る、目の前の明るい炎のように。

……誰だ?

そう問おうとしたが口が動かない。それどころか、まるで口が消えてしまったかのようにその存在すら感じられない。

「ただ願え。そうすればその憤怒を叶えてやろう」

憤怒を、願う……?

それが、拉致犯が暗闇の中で聴いた最後の言葉だった。


「——————ァア……アツイ……」

意識は熱によって覚醒し、暗闇しかなかった目の前の光景は段々と色をつけて元に戻る。

しかし先ほどとは違い、全身が熱い。

この熱さの原因を解明するために、拉致犯は自分の両手を目の前で広げて確認する。

——————そこには、本当に燃えている自分の両手があった。

この様子と熱量から察するに、おそらく燃えているのは体全体だろう。

しかし全身が燃えているにも関わらず、拉致犯はこの原因の調査をすぐさま放棄した。

なぜなら体が燃えることの、それ以上の『怒り』の感情が、内側から己を駆り立て動かしていたからだ。

「アツイ…ニクイ……」

「なに…あれ……」

拉致犯の変わり果てた姿にトテントンは目を震わせて怯える。

その様子を見ていた私は、タバコを一本取り出し、拉致犯から飛び出る火の粉でそれを燃やす。

そうして思い切り有害な煙を吸い込み、肺から脳へと循環させる。

そうして、奥底からくる腑が煮え繰り返るような感情を無理矢理抑え込む。

「はぁー……まったく。やっぱり裏になんかいたか」

その口調は、まるでこの事を知っていたかのようなものだった。

「そもそも、デュエマ専門の軍人上がりが、こんな三流プレイヤーなわけがない」

タバコを吹かしながら、私は目の前の焼死体を睨みつける。

「お前、マジでふざけんなよ?せっかくの経験あるデュエマプレイヤーを潰しやがって…」

私は睨む顔に加えて歯を軋り始め、自身の怒りを表現する。

「大体なんなんだ!?闇王の!しかもまだ新しい方の力を使ってデス・ザーク蘇生?ざけんな!!しかも魔導具使ってねぇし!!」

私は力をこめすぎて折れたタバコも気にせずに、口々に吐き散らす。

「お前、デッキ構築(自分磨き)からやり直せ」

そんな辛辣な私の言葉も、今の拉致犯は聞こえている様子はなかった。

ただただ、燃えた体を引きずりながら怒りの言葉を呟くのみ。

「ニクイ……ハラ…ダタシイ……」

足を引きずり、まるでゾンビのように練り歩くその姿は、本当に見るに耐えないものだった。

「てめぇ……」

人の話を聞かない拉致犯の態度に怒りを覚える。 

一方の拉致犯は灰にになりかけている口を上下に動かし、何かボソボソと呟き始める。

やっと会話を始められた。

そう思って私は耳をすまして聞いてみる。

「………イカ…リノ……アブラ…ニ……」

しかし可能になっていると思っていた会話のキャッチボールは、実際には全く成立していなかった。

「………火ヲツケロ」

先の呪文の詠唱を終わらせた次の瞬間、拉致犯の目の前に突然、炎の竜巻が出現する。その竜巻は瞬間に晴れ、中から燃えたバギン16号が現れた。

「バギィ、バギギィィイイィーーー!!」

現れたバギン16号も拉致犯同様に全身が燃え、苦しむようにその場に倒れ込む。

「ギィイ…ギィィ……」

なぜ召喚されたのかもわからずに炎に身を包まれながら悶え苦しむバギン16号。

そこに同様に燃える拉致犯が近づき、その崩れそうな左手を燃える闇の亜人に(かざ)す。

すると、バギン16号にまとわりついていた炎は、突如拉致犯へと吸い込まれる。

「バギ!、バギィギィギィイイーーー!?!?」

その後には、黒く灰になって痙攣するバギン16号が残った。

「ギィ…ギ……」

「こいつ…急にプレイングが別人みたいに…」

数分前とは明らかに違う拉致犯のプレイング。

これはか確実に裏にいた「何か」が出てきたと言う事だろう。

「……ハイパー………化……」

「んあ?」

その言葉を発した次の瞬間、拉致犯の内側から炎が吹き荒れ、バキベキと鈍い音を鳴らしながら巨大化していく。

その過程で吹き出す炎が辺りの木々に引火し、今度は辺り一面が火の海と化した。

「きゃぁ!!」

飛んできた火花にトテントンが頬を火傷してしまう。

「トテントンちゃん!」

私はコートを脱ぎ、トテントンの全身を覆って直に炎を触れないようにカバーする。

この熱量と熱さは子どもにはかなり負担が大きい。

これは早めに決着をつけないと私もトテントンも危ない。

「———モモミーズ!!」

私は巨大な群青の不死鳥竜に命令を下す。

「ギィイイィガァァァアァァアァァアア!!」

名前のみの呼びかけにも関わらずモモミーズはまるで理解していたかのように咆哮し、瞬時に魔法陣を空に描いた。

描かれた魔法陣の丸い真ん中の部分が、まるで門のように解放され、その内側から細く美しい右腕が現れた。

そして更にもう一本、同様に美しい左腕が現れた。

「……あれって」

トテントンはその両腕に見覚えがあった。

白くて長い、彫刻のような白い手と腕。

確か、その持ち主は白髪のロングヘアーが特徴的な丁寧口調の人型亜人。

それは、先の不死鳥の不意打ちにやられた——————

「ヴェルベット、召喚!!」

「……ぁ」

トテントンは言葉を失った。

死んだはずでは?どうしてここに?

そんな世界の常識すら否定する疑問が次々と浮ぶトテントンをよそに、ヴェルベットは颯爽と私とトテントンの前に降り立ち、光の盾を形成して火の粉から二人を防御する。

「さっすがー。仕事が早い」

「全く、愛殿は私の扱いが雑です。あの不死鳥の事も知っていたのでしょう?」

「まっさかー。本当はもっと強い子が来ると思ってたんだよ」

ケラケラと笑う私に、ため息で答えるヴェルベット。

「そういえば、今回は私の名前合ってましたね」

「そーだよ?私もたまにはちゃんとしてるでしょ?」

「当たり前です」

「え?」

「ニクイ!!イラダタシイィ!ハラダタシイ!!」

呑気にヴェルベットの再登場を喜ぶ暇などある訳もなく拉致犯は更に巨大化。まるで悪魔のように豹変し、もはや体は人の形を保ってはなかった。

その様子に苛立ちを覚えた私はその感情を抑えるために新品のタバコを取り出し火をつける。

それにより私の口の先から立ち上がる煙は、途切れる事なくどこまでの登っていく。

「…いい加減にしろクソが。これ以上経験のデュエリストを減らすなボケナス。」

白い毒煙を吐き出しながら前に出る。

ヴェルベットの守りの範囲を離脱し、炎の危険がある危地(きち)へと踏み込む。

トテントンはそれを止めようとしたが、それをヴェルベットが引き止めた。

「彼女は恐らく大丈夫です。私よりも圧倒的にパワーのあるモモミーズがついていますから。それよりも下がって。危ないですよ」

年上の彼女とは違う、彼の優しい笑顔にトテントンは素直に従うしかなかった。

どんどん遠のくお姉さんの背中。

トテントンはそれを黙って見送る事しかできなかった。

私はこの炎の中、ポケットに両手を突っ込みながらふらふらといい加減に歩き、拉致犯の目の前まで普通に行くことが叶った。

有毒で快楽の味のする煙を吐き出し、改めたて彼の中にいる「なにか」を睨む。

しかし拉致犯の方は、私の睨む顔なんて見えている様子はなく、その牙の生えた口から出てくる言葉は憎しみの感情と熱さへの不満だけだった。

「アツイ………ニクイ………」

「……いい加減、人の話を聞けぇ!!」

その言葉に対し、遠くで聞いていたヴェルベットの中で「貴方が言いますか」と疑問がよぎる。

そんな正論をよそに、私は(いか)るバケモノと化した拉致犯への、最後の攻撃をモモミーズに命令する。

その命令を咆哮で承諾したモモミーズは大剣を真っ直ぐに、その対象へと構える。

「……ァア……アァア……!…ニクイ……ニクイニクイ!イラダダジイィ!!ハラダタジィ!!!」

もはや言葉と呼ぶより、動物の鳴き声に近くなってきた拉致犯の(こえ)

目の前の巨大な脅威への対応も、単純な動物の威嚇行動のような仕草に変化し、先ほどまでデュエリストとして知能的な戦いをしていた人間とは思えなかった。

構えられた大剣は拉致犯の左胸へと一直線に線を描いてその距離を積める。

一方の拉致犯は避けるでも受け止めるでもなく、本当に理性を失ったかのように特攻して距離を詰めて来た。

そうして両者の距離は瞬きの間に詰められ、接触する——————。

「………ガ……ぁ……」

その結果は明白で単純だった。

無防備でその上灰になりかけている弱々しい身体と、巨大な不死鳥すら一撃で貫く大剣。

衝突すればどちらがどうなるかなんて想像するまでもない。

そうして、予想通りモモミーズの剣は拉致犯の燃える胸に貫通。その活動を停止させた。

「………決着」

勝った。

私はタバコを吹かし、空に向け汚い勝利の狼煙を上げる。

くるっと百八十度回転し、後ろで私の戦果を見ていたであろうトテントンとヴェルベットに向けて満面のブイサインも追加。

「ねーねー見てた見てたー?私、チョー強くなーい?」

「…運は良かったですね」

呆れたように話すヴェルベット。

気づけば辺りの炎は消えてなくなっていた。

「はぁ…」

安心からかトテントンは、ヴェルベットの隣で深い息を吐いた。

「大丈夫ですか?」

「……あ、はい」

ふらつく子どもをヴェルベットは自身の左胸で支えてあげた。

その様子は中(むつ)まじい兄と妹を連想させる、なんとも微笑ましいものだった。

「え……なんでそこの二人そんなに距離近いの?」

微笑ましい二人の関係を見て全く微笑めない私をよそに、その二人の暖かい空気はどんどん私の周りを侵食していく。

「や、やめろぉ!私のトテントンちゃんだぞぉ!!」

その状況に危機感を感じた私はすぐさま二人の間に割って入る。

「ウェルヘッド!お前は私の亜人だろ!主人の友人に対して主人より仲睦まじくなるなんてどうゆう事だ!あぁ!?」

「ヴェルベットです。愛殿は先程からなにをおっしゃっているのですか?」

「黙れ!トテントンは私のだ!…ねートテントンちゃぁん」

「……お姉さん息臭い」

「え……?」

勝利の後の戯れ。

そんな緩くなった空気の隣で、

「……ィ…………」

ふと、溢れた声によって空気が揺れた。

その振動に一番最初に勘づいたはのは、それを貫いた剣から直接感じ取る事ができたモモミーズ。

———まだ生きている。

そう感覚で理解したモモミーズは、本当に終わらせる最後の攻撃(ダイレクト・アタック)を打ち込むために、刺さっている剣のつかに力を込めた。

その刹那———

「———怒ぅうううぅんんんん!!!」

突如、ただの黒い塊と化していた拉致犯の焼死体が叫びだし、その中から再び業火が吐き荒れる。

その炎の熱波と、叫びからくる大地と空気の振動は私たちの意識を瞬間にそちらへ向かせ、モモミーズを剣ごと吹っ飛ばしいた。

「な……!?あのモモミーズを……!?」

そのあり得ない光景に最初に声を上げて驚いたのはヴェルベットだった。

しかし、そんな両目を開いて驚く神官とは対照的に、その主人は咥えるタバコを燃やしながら静かに近づく。

「愛殿!下がって!!」

先程まで平然と主人を死地へと送り込んだヴェルベットも、この状況では流石に引き留めた。

そんなヴェルベットの忠告も無視して私は歩くのをやめない。

そして、黒い塊(拉致犯)の目の前でようやくその危険行動をやめた。

「貴様…一体何者だ。いつから俺様がこの者の中に俺様が入っていると気づいていた?」

業火を取り戻した拉致犯は先の戦闘からは考えられない程悠長に話し出した。

恐らく、今私と話しているこいつが「何か」本人だろう。

拉致犯(その子)がゼーロンの卵使ってデス・ザークを蘇生した時からだよ」

私は黒くなってしまった拉致犯の体を指差す。

それを聞いた後、「何か」はこの前にも同じ言葉を聞いた事を思い出した。

「……そう言えば貴様、先にも同じことを言っていたな。俺様に向けたあの怒りはなんだ?」

「あーあれ?あれはだって怒るでしょ?普通」

「……なに?」

「だってデュエマは一人じゃできないじゃない?楽しむためには「他人」が必要なの。それも私クラスになると「『経験な』他人」じゃなきゃ満足できないの」

なぜか息を荒らしながら、なぜか頬を赤くしながら、私は回答を続ける。

「……それなのに『デュエマ専門の軍人上がり』なんていうちょーーきちょーーーなデュエリストをあんたはこれでもかってほど劣化させた上に、こんなクソみたいなタイミングで私に殺させた」

段々と、ハートの形になっていた私の目は銀色に濃く変わっていき、赤かった頬はその色気を無くしていく。

そうして私の顔はまるで般若の顔のように変貌する。

「……それって、クソムカつかない?」

「……そんなくだらん憤怒を俺様に向けたのか?」

「何をくだらないか、くだらなくないかを決めるのは豪運の私。お前みたいなゲスの物差しで測んな死ね」

私の意見を「何か」は否定し、否定された私は中指を立てることで回答した。

その回答に「何か」はしばらく俯き、沈黙する。

「……愛殿、いい加減デュエマと酒を入れた時だけ特に性格がひどくなるの、やめてほしいな…」

ヴェルベットがふと溢したそんな言葉。

それを横で聞いていたトテントンは、

(……普段からデュエマをするとあんな感じなのか……)

そうして背筋が震えたのを実感した。

「……いいやくだらん。くだらなすぎる。色々と疑問はあったがもはやどうでも良い。」

そんな二人とは別に、拉致犯〈何か〉と私との会話の間に変化が生まれる。

「その程度の小さな怒りで、俺様の憤怒を超えられるものか……!」

「……なんの話?」

突然の逆ギレに私の般若顔は瞬間に疑問の顔へと早替わる。

「黙れ!黙れ黙れ黙れ!!貧弱な怒りしかない虫ケラが!すぐに治る程度の憤怒に、なんの意味がある!?」

突然キレ散らかす「何か」に対して、それに答える隙も言葉もない私はただただ呆れてタバコを新しく燃やすしかない。

「急になんだ……?」

「黙れ!失せろ!死んで消えてしまぇええ!!」

ペギボギと音を鳴らしながら、

(ふん)んんんんんんんん!!!!」

燃え盛る拳が私の顔と数センチの距離の差しかないところまで一気に近づく。

人間の反射神経では間に合わない速度と距離と威力。

トテントンが防衛本能で両手で両目を塞ぎ、ヴェルベットが盾となるために走り出す。

たがいくらヴェルベットも同じ亜人とはいえ、この距離を私が殴られる前に詰めて攻撃を防ぐなど不可能だった。

迫り来る炎が咥えるタバコに触れ、そのまま延長線にある私の顔は、跡形もなく殴り飛ばされ—————————


「——————お嬢様に向かっての暴言。万死です」


その言葉が聞こえたすぐ後、私の目の前から拉致犯の黒くて巨大な燃える拳が消え去った。

その代わりに身長が私よりも高い、メガネをかけた美しいメイドがそこにいた。


「お迎えにあがりました。お嬢様」

いやー。暑くなってきましたね。

どうも皆さん。娯楽です。

どーも最近スランプが酷いんですよね。…… 言い訳か?

そう思った人、かなりいると思います。

いやいやなにもかもこの暑さのせい。きっとそうよ。

涼しくなる頃にはきっとこのスランプは消えて無くなっとるよ!もぉー大ヒットよ!!!


……とまあ。

実力不足の言い訳はさておき、なんだかんだいいながら、ここまでお付き合いしてくださった方。

本当にありがとうございます。これからもスランプにながら、カフェイン取りながら、体をちょこちょこ壊しながら、大好きなデュエマの二次創作を書いていきますので、何卒、よろしくお願いします。

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