第3話 棋士は香車の能力を得る
スモールキャットは戦う度にズボンが傷付くからスモールボアだけを狙って戦っていた。
「なんだか、作業みたいになってきたな……」
倒し方は確立させているから無傷で倒せるし、スモールキャットは戦いたいとは思えないからスモールボアだけだと飽きが来る。
(…………地下3階へ行ってみるか?)
地下3階の地図は買っていないが、階段からそれ程に離れていない場所で戦えば迷うことはない。
魔物の情報はないが、スモールボアやスモールキャットの強さから考えて勝てないこともないと思っている。
「行くか! 階段はそっちだったな」
地図を確認しながら地下3階への階段に向かうーーーー
地下3階へ着いた圭はまず周りを確認する。地下1、2階のと変わらず、広い道が幾つかあるだけ。
迷わないように真っ直ぐの道へ向かうと早速、魔物に出会った。
「む、犬? …………スモールドッグとかだろうな」
今まで出会った魔物の名前からスモールドッグだと予測した。1体だけだと思ったら奥からもう1体のスモールドッグが現れた。
(この階からは2体の魔物が現れるようになる訳か)
湊が2か月目になっても地下3階へ行かなかった理由は数が増えて先輩と一緒でも怪我をするかもしれないからだ。2人だけだとタイマンで倒す必要があり、湊にはまだその度胸はなかった。
だが、圭はスキルがあるから2体同時に戦うことになっても怖くはなかった。
「少しは良い勝負が出来れば良いんだが。来い!!」
『歩の基盤』はきちんと時間を計りながら発動している。2体同時に襲い掛かってきて、圭は1番近い方を狙う。
「オラッ!」
「バウッ!?」
スモールドッグは剣を肩に受け、慌てて下がったが2体目のスモールドッグが来る。圭は素人なので、咄嗟に連撃をする技術は無い。なので、2体目のスモールドッグには蹴りをお見舞いした。ヤクザキックになって鼻を潰したことで痛みに呻く内に剣を腹に突き刺した。腹は弱点だったのか、煙になって消えた。
「グルルゥゥゥ……」
もう1体は仲間がやられたことから圭を警戒して近付いて来ない。
(近付いて来ないのは面倒だな………え?)
突然に新しい情報が頭の中に流れ込んだ。その情報とは…………
「アハハハ、このタイミングで来るか」
まだ距離が空いているのに、圭は剣を振り上げた。警戒して来てくれないのに剣を振り上げる理由はーーーー
「『香車の激進』!」
新たな能力、『香車の激進』を発動しながら剣を振ると斬撃がスモールドッグに向かって飛んで行った。
「バウッ!?」
斬撃はスモールドッグに当たったが、死ななかったからトドメを刺す為に突撃する。斬撃をマトモに喰らったスモールドッグはダメージが大きいのか圭の突撃には反応出来ていなかった。
「これで終わりだ!」
「バゥ!?」
トドメを刺されたスモールドッグは煙になって、ドロップアイテムを落とした。
(牙、もう1つは皮か)
最初に倒したのは皮で、2体目は牙だった。いくらになるかわからないが、地下3階だからスモールボアよりは高いだろう。
(まさか、新しい能力がすぐ来るとは思わなかったな……)
『香車の激進』の効果は衝撃波と斬撃を出せる。拳や鈍器なら衝撃波を起こし、剣などの刃が付いた武器なら斬撃を出せる能力。
(これで遠距離攻撃を手に入れたな)
『将の棋士』はどれも魔力を使うので、使い続けると精神の疲れが出るから使い方には気を付けるべきだろう。まだ余裕があるので、もう1種類の方を探す為に歩き続けるのだった。
「もう1種類は蝙蝠だったか」
蝙蝠だと飛んでいるから普通なら攻撃を当てるのは苦労するが…………今の圭はそんなことない。
「『香車の激進』!」
「ギャァ!?」
恐らく、名前はスモールバットであろうの魔物は耐力が低いから斬撃だけで倒せた。
(一々、スキル名を言わないと駄目……か?)
まだそうであることを試していないので、またスモールバットを探して、試すことにする。
「いた!」
「ギャ?」
成功するかわからないが、試す為に剣を構える。
(ふぅ……『香車の激進』!)
魔法で言うなら無詠唱。出来るか試したらーーーー
「出た!」
「ギャァ!?」
無事に斬撃が出て、声を出さずにスキルを発動出来るとわかった。
(…………出来たが、その分だけ魔力を削られたような気がするな)
しかし、それは無料ではなかった。無詠唱で発動すると更に魔力を使うようだ。
(まぁ、必要な時だけにすれば問題はないか。しかし、魔力を結構使ったような気がするから今日は終わりにした方がいいな)
初日で地下3階へ行けただけでも充分だろうと思い、まだ夕方にもなっていないが今日は帰ることにするーーーー
まだ続きます!