第2話 棋士はスキルのクリスタルを手に入れた
黄金色のスモールラットを倒したらスキルのクリスタルを手に入れた。
「まさか、スキルのクリスタルを手に入れるとはな…………湊から変異種の魔物を倒した話は聞かないし、変異種のドロップアイテムがスキルのクリスタルだとしたら納得だが」
圭は考えていた。スキルのクリスタルは手に入れてもすぐ内容がわかる訳でもない。『鑑定』と言うスキルがないとわからないのでギルドに持ち込み、調べてもらうのも1つの方法。他はギャンブルのように中身を知らないまま使ってスキルを手に入れた時にわかるのが2つ目。
(俺は息抜きでダンジョンに潜っているに過ぎないから湊に売ってやるのもありだが…………やはり、初めて手に入れた物は自分で使ってみたいよな)
使えないスキルだったとしても、探索者が本業ではないので生活に問題がなければハズレでも構わない。使えるスキルだったらラッキーだなと思いつつ、スキルのクリスタルを胸に当てる。
(こうすれば、クリスタルが吸い込まれると…………お! 痛みもなくあっさりと吸い込まれたな)
スキルのクリスタルが完全に胸へ消えていった後、頭の中にスキルの内容が現れ始めた。
「…………『将の騎士』だと?」
スキルの名は『将の騎士』だった。内容は自分自身の実力によって様々な効果を持つスキルが使える代物だった。
『将の騎士』
1.『歩の基盤』
2.???
3.???
4.???
5.???
6.???
7.???
8.???
「将棋じゃねぇか!?」
圭がスキル内容を見た感想は将棋だった。名からも将棋に関するモノに似ていたし、更に『歩の基盤』とか歩と出ていれば将棋を知っていれば誰でも察する。
(1つのスキルで8つの効果が使えるようになるって、強すぎないか? 名前はともかく当りどころか大当たりじゃねぇか?)
『歩の基盤』の効果は自分自身の身体強化だった。使ったら30分間は腕力、俊敏、体力、耐力、反射神経が強化される。
「…………やっぱり、強い。使ってみるか? 『歩の基盤』!」
発動されたと自分でもわかった。見た目派変わらないが、持っていた剣が軽くなり動きも良くなったからだ。
「おおっ、これが身体強化か」
軽くジャンプしただけでも4メートルぐらいはある高い天井に指が付きそうだ。走ると前よりも早いと感じ、疲れる様子もなかった。
「お、スモールラビット…………1回だけ受けてみるか?」
今まで避けていたが、耐力も上がることから試したくなった。前の状態でも突進を受けるだけなら大怪我はしないとわかっていたし、受けてみることにした。
「キュッ!」
「おっ!?」
衝撃は完全に消すことは出来なかったが、痛みは無く……突進してきたスモールラビットが弾き飛ばされる結果になった。
「あはははっ、地下1階なら無傷で行けそうだな」
頭を狙われても反対に攻撃した魔物が痛みそうだ。弾き飛ばしたスモールラビットを剣でトドメを刺してあげる。
「剣が軽い。威力も上がったような気もするが…………」
今回は一撃で倒せたが、弾き飛ばした時もダメージを与えているなら確実に一撃で倒せるのはわからないが、倒せるだろうと思っている。やはり、地下1階の魔物では物足りないと思った。
(地下2階にさっさと向かうかーーーー)
地下2階の階段を見つけて降りていく。地下2階にいる魔物はスモールキャット、スモールボアの2種類。どちらも動きが早い魔物だが、初心者でも倒しやすい魔物である。
「お、早速現れたか」
「ブビィ?」
地下2階へ降り、少し進むとスモールボアが現れた。スモールラビットより少し大きいが、膝よりも低い。
(突進は当たったら痛そうだが、避ければ問題はないな)
剣を構えると分かりきった突進が来た。スモールボアの対処方法は知っており、突進を避けたら側面に攻撃をすることだ。
「ブビィィィィィ!!」
「速いが…………見える!」
突進をあっさりと避け、側面へ剣を振り掛かった。力一杯乗せた剣筋はスモールボアに大きな傷を残せた。
「ブビィィィ!?」
「一撃では倒せなかったか。でも、負ける気はしない!」
突進を待つこともせずに圭から動き、スモールボアの頭をかち割る勢いで剣を振り下ろした。この一撃でスモールボアは倒れ、煙になった。ドロップアイテムは角だった。
「角は100円になるんだったな。後は肉を落とすんだよな」
武器は1番安い鉄の剣なので殺傷能力はギルドで買える剣の中では低いが、スモールボアを2発で倒せるなら充分だろう。
「消耗のことを考えたら自分で殴った方がいいのか? ……いや、万が一に手に怪我をしたら困るな」
別にお金は困っていないから壊れたら買い直せばいいだろうと思いつつ、次の獲物を探す。次はスモールキャットとやりたいなと探し始め…………
「ようやく見付けたか」
「にゃ?」
スモールボアを何体か倒し、1体は蹴りだけで倒してみたが、強化された身体でも十発ぐらいは必要だった。スモールボアの皮は打撃に強かったのもあり、時間が掛かってしまった。
しばらくして、ようやくスモールキャットに出会えた。スモールキャットの攻撃は引っ掻きと噛み付きの2つ。身軽なので攻撃がなかなか当たらないと聞いている。
「ナイフぐらいは買っておけば良かったかな?」
「ニャァァー!!」
剣を振るが、避けられて脚を切られてしまう。防具を身に着けてないからズボンがバッサリと切られた。しかし、肌には傷はなかった。
「やっぱり簡単に当たらないか。だが、傷は付かないとわかれば…………」
圭は剣を下げてスモールキャットに近付く。まずはワザと攻撃を受けることだ。身軽なスモールキャットでも攻撃をする時は止まっているからそこを狙うのだ。
ワザと脚を切らせた圭はニヤッと笑みを浮かべて下ろしていた剣を振り上げる形でスモールキャットを斬った。
「ニャァ!?」
「一撃か。耐力が低いタイプだったのな」
スモールキャットが倒れた場所には爪が残った。ワザと攻撃を受ければ簡単に倒せる相手だとわかったが、攻撃を受ける度にズボンがボロボロになるのは悩ましい。服にはスキルの効果が付かないようだーーーー
まだ続きます!