第15話 棋士は魔物通路を歩く
地下10階へ降り、違和感に気付く。
(ん? なんか、緑が多くなっている?)
そう、地下10階はトレントがいた地下6階よりも緑が増えているように感じた。森ほどではないが、無かった木が生えていたり草が成長していて人が隠れる程度の場所が出来ていた。
「面倒だな。奇襲される可能性アリか?」
魔物は何がいたか思い出してみる。地下10階で出てくる魔物はグリーンエイプ、グリーンキラービー。
(保護色の猿と蜂だったか。緑に紛れて襲ってくるから気を付けてと言われていたな)
ダンジョンらしく難しくなってきているので、奇襲に気を付けて先へ進むことに。勿論、『歩の基盤』が途中で切れないように気を付けていく。
「む! 確かに見辛いな」
警戒しながら歩いていくと草とは少々違う色が混じっていることに気付いた。よく見ると猿の形をしており、こっちが通り過ぎるのをジッとしていた。
(知らずに通り過ぎて、後ろから襲われたら危なかったな)
こっちが剣を抜くと、グリーンエイプはバレたことに気付いたのか保護色を止めて襲ってきた。
「最初から隠れて後ろから襲おうとする魔物がロックゴーレムやブラッククロウよりも強い訳がないな。『暴虐の樹根』!」
「ウキィ!?」
剣を抜いたのを見たグリーンエイプが魔法を使われるのを予測出来る訳がなく、絡みついて拘束する根を避けることは出来なかった。
(とりあえず、最初は安全に倒させて貰う!)
グリーンエイプが動けないところに剣で斬りつけて、ナイフを首へ突き刺す。
「ゴゥィ……!?」
まだトドメは刺しきれなかったので、続けて剣で頭をかち割る勢いで振り下ろす。
「ウィ!?」
流石に頭を斬られては耐えれることもなかった。煙になって猿の尻尾が落ちた。
(これは明らかに武器の性能が足りていない。鉄牙さんの言う通り、地下11階へ降りる前に変えたほうがいいな)
もう少し良い剣やナイフだったら、首を刺した時点で倒せてもおかしくはなかった。今のはゲームのように数値化出来ていれば、HPが一桁だけ残っていた状態だっただろう。
「…………良い武器が落ちていればいいんだがな」
宝箱で良い武器が出たらいいなぁと思いながらも、既にスキルのクリスタルを2回も出ている運の良さを発揮しているから、流石にあり得ないだろうと諦めていた。
「…………はぁ、本当にどうなっているんだよ? 転換期の前は宝箱が出やすいといえ…………」
しばらく歩くと向こうに宝箱があった。その道は行き止まりだと地図で知っていたが、もしかしたら宝箱があるかなと思って歩いていたらだ。
まっすぐで長い道の向こうに宝箱があり、先程と違い緑がなかった。その違和感はあったが、まさか宝箱を見つけるとは思わなかった圭は気付かなかった。
圭が見付けた場所から宝箱まで半分程を進んだ時に起きた。圭の後ろが壁で塞がれ、地下6〜10階に出てくる魔物の全てが魔法陣で現れ始めたのだ。
「なっ!?」
この現象はちょうど、朝に受付嬢の蒔絵さんから聞いていた。魔物の話を聞いていた途中に、思い出したように行き止まりへ向かう道で稀に『魔物通路』となる場所があると。その『魔物通路』は宝箱を餌にして、大量の魔物を呼び出して戦わせる罠だと言っていた。
(あの魔物らは地下6〜10階に現れた魔物だな。知らない魔物がいなくて良かったと思うべきか? 先にやるべきの魔物は…………)
「ロックゴーレムだ!」
今なら周りに魔物がいるから、回転する上半身は使えない筈だ。巻き込むつもりで使ってくるなら数を減らせるから歓迎だが、使ってくるとは思えなかった。そして、後ろが塞がれているのもあり、最優先に倒さなければならない。
(幸運にも、俺は一撃で倒せる術がある!)
魔物陣から出てくる途中であったロックゴーレムは動けないのでその時間を無駄にせず、懐へ入る。
「『香車の激進』!」
バキッと良い音を鳴らし、ロックゴーレムは倒れた。次はブラッククロウを狙おうとしたが、先にボアが突っ込んできたので相手をする。突進を躱したとこにブラッククロウが爪を向けたが、怪我を恐れずに左手で爪を掴み、そのままブラッククロウをボアへ叩きつける。
「『暴虐の樹根』!」
次に向かってくるマッシュマン、グリーンエイプ、ドロマンには根を突き刺すことで時間稼ぎをする。
「オラッ!」
まだ掴んだままのブラッククロウをそのままボアへ押し付けながら剣を突き刺した。ブラッククロウが煙になったのと同時にボアへ拳を横腹へ当て、『香車の激進』でトドメを刺した。
「『暴虐の樹根』!」
時間稼ぎをされたマッシュマン、グリーンエイプ、ドロマンは再び襲うが、今度は拘束されてしまう。
「ふっ! ハァッ!」
グリーンエイプには集中型の『香車の激進』を込めた拳を、マッシュマンとドロマンは剣で首を斬った。
(良し、このままトレントを………ッ!?)
次の標的を狙おうとしたが、脚が何かに絡まって動けなかった。
「蜘蛛の糸か!?」
下を見ると白いものが脚を絡みついていた。動けないのをチャンスだと思ったのか、スモールディアが角を向けて突進してきた。
「……動けなくても出来ることはある! 『暴虐の樹根』!」
1本だけ脚を引っ掛ける為の輪っかを作り、4本の根で圭を守りながら軌道を変える形の盾にした。そうすると、斜め後ろから襲おうとしていたスパイダーと根に引っ掛かったスモールディアが激突する。その際に角がスパイダーへ刺さり折れた。
防いだ圭は剣で糸を斬って自由を得たところにグリーンキラービーとトレントが襲いかかる。
(グリーンキラービーも奇襲にパラメーターを振り切った魔物だ。正面から来ても怖くはない!!)
剣でグリーンキラービーを斬り落とし、更に襲いかかる根を振り払う。
「驚いたが、既に体験した魔物だけで俺を倒せるとは思うな」
トレントの核をいつものやり方で破壊し、残ったのは致命傷を受けたスパイダー、スモールディア、グリーンキラービーへトドメを刺すだけーーーー
「よし、これで終わり…………お、壁が元に戻ったな」
トドメを刺し終わると塞がれていた道が開いた。ズキッと左手に痛みを感じ、見ると爪を握っていた手が血だらけになっていた。
「あ〜、ナイフみたいな爪を強く握ればそうなるな。回復魔法があって良かった。『治癒の花園』」
危機は去ったので、回復魔法を使う。20秒辺りで完全に傷が塞ぎ、傷跡は残っていなかった。
(……後はアレだよな)
そう、魔物通路を突破した先には宝箱がある。魔物通路にある宝箱は罠がなく、ハズレがない良い宝箱だと聞く。
「何が入って…………本当にどうなっているんだ
か」
宝箱には2本の剣が入っていた。剣というより双刀と言ってもいいだろう。剣より細いが、刀より太く、片方だけ刃があるから双刀で間違いはない。
「綺麗な朱色と蒼色だな。帰りに鉄牙さんに聞いてみるか」
まさかの望み通りだった武器が手に入ったことに驚くが、ラッキーだったと思うのだったーーーー
次は明日の7時に投稿します!




