第1罪 “元“勇者7人の悪魔召喚する
────リベーラ王国、王宮謁見の間。
魔王を倒した俺は、国王に呼び出されここにきていた。
「勇者モーセ・シナイよ。お主に国家転覆の容疑がかかっている」
「••••••は?」
身に覚えのない容疑をかけられ、呆然としている俺をよそに国王から耳を疑うような言葉が聞こえてきた。
「本来ならばお主は極刑じゃ。じゃが、お主は魔王を倒した勇者じゃ。その功績を顧みて、勇者モーセをソロモン・フォン・リベーラの名において国外追放と処す」
「••••••なん、で」
「衛兵よ、即刻つまみだせ」
「はっ」
こうして俺は、冤罪をかけられ救った国に追放させられたのだった。
「おるか?」
「はっ。王よ」
「お主ら暗部に命ずる。モーセを始末せよ」
「お任せを」
こうして俺の知らない所で、密かに暗殺者が仕向けられていた。
◆
国を追い出された俺は、行き先も決まらないまま歩いていた。1人で歩くのもつまらないため、護衛兼お話し相手として人型の魔物を召喚した。
「召喚エキドナ」
「は〜い!主様〜!」
俺の召喚に応じ、炎の上半身は美女の下半身は蛇の姿をした魔物が出て来てくれた。召喚魔法を極め勇者となった俺には、使役している魔物がおよそ1万匹ほどいる。エキドナは、その中でもトップレベルに強く信を置ける魔物の1人だ。
「主様〜。何してるんです〜?」
「なんか国を追い出された」
「な、なんですと?その国滅ぼしますか」
「いや、まだ勝てるかわからない。だからまだ滅ぼさないよ」
「むぅ〜。主様が言うなら分かりました〜」
道すがら俺は、エキドナにこれまでのことを簡潔に教えた。エキドナは激怒し今すぐにでも王国に乗り込みそうだった為、今のままでは戦力が足りないので俺は引き留めた。
暫く歩いていると、国境を越えたあたりで地図に載っていない廃村を見つけた。
「おっ。この廃村地図に載っていないぞ」
「主様。何者か付けて来てます」
「あぁ。多分王国の暗部あたりだろう。これじゃ追放じゃなくて極刑と変わらないだろ」
「どうします?」
「殺しに来たのなら、殺せ」
「かしこまりました」
俺はそう言って、他の魔物も召喚することにした。
「召喚。メデューサ」
「ばぁ〜なの! モーセ様なの〜! お久しぶりなの〜!」
「久しぶり。今から敵くるから殺してくれるか?」
「もちろんなの〜! 終わったらなでなでしてなの〜?」
メデューサは幼い女の子だが、石化の能力を使うエキドナに次ぐ実力者だ。ただ、幼いため甘えん坊ではあるが。この2人がいれば、王国の手練れの暗殺者が相手だろうが負けることはない。
「くるぞ」
「「はい(なの〜)」」
その瞬間、森の中から10人ほどの暗部の連中が飛びかかってきた。
「“元“勇者モーセ。貴様にはここで退場してもらう」
「エキドナ、メデューサ。頼むよ」
「かしこまりました」
「りょ〜かいなの!」
この2人は、戦いの相性がいい。メデューサが敵を一気に石化させ、その後エキドナが欠片も残らないほどに燃やす。
こうして2人は、今まで色々な敵を一瞬で倒してきた。だから勿論今回も、俺が瞬きしている間に終わっていた。
「終わりました」
「終わったなの〜! なでなでしてほしいなの〜!」
「お疲れ様2人共」
2人に労いの言葉をかけ、メデューサの頭を撫でた。今回は何とかなったが、暗部が戻らないと俺が生きているのがいずれ知られるだろう。そうなるとまた攻めてくるだろう。やはり戦力が足りない。俺は自分と召喚魔物達のためにも1つ決心した。
「やるしかないか」
「何をです〜? 主様〜」
「禁忌魔法、悪魔召喚だ」
「悪魔召喚って何なの〜?」
「大昔、たった7体でこの世界を滅ぼしかけた悪魔族を召喚する魔法。大昔は、勇者が悪魔を撤退させたから何とかなったみたいだがな」
「なるほどなの〜!」
メデューサとエキドナに悪魔召喚の説明をした俺は早速悪魔召喚の準備を始めた。
「古より封印されし悪魔族よ。我が魔力を糧とし我が前に権限せよ。悪魔召喚」
詠唱が終わると、禍々しい魔力が出てきた。
「ほう。我らを呼び出す人間がこの時代に存在していたのか」
「インウィちゃん登☆場☆スペちゃん、珍しく喋るね〜」
「全くインウィーは相変わらずやかましいな」
「ふあぁ〜。イラちゃん今日も機嫌悪い」
「相変わらず眠そうだな。アーケ」
「腹へった」
「あぁ〜ん。可愛い男の子だ〜! お姉さんといいことしよ?」
────な、な、何なんだこの癖強い奴らは〜