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第5話:廊下に立たされる

「眩しっ!」


 強い光に目を閉じる。

 反応が遅かったので、光にやられて目がくらんでしまった。

 下手に動くと怪我をするかもしれない。視界が戻るまでじっとしているのが得策だろう。


「動ける! 主殿! 拙者動けるでござるぞ!」


 少し離れたところからミケの声が聞こえたかと思った次の瞬間、ドンと衝撃が俺の身体を襲った。

 何かが俺にぶつかってへばりついているようだ。

 衝撃の割に痛くはない。

 むしろ柔らかくて滑らかな感触。

 徐々に回復してきた視覚に一糸纏わぬミケの姿がぼんやりと浮かび上がってくる。

 どうしよう?

 目を閉じるべきか?


「ポチくん! 何をしているんだ、コラー‼」


 判断を迷っていた俺の腹にレミさんの飛び蹴りがヒットした。

 これはよく見えてなくてもわかる。

 いや、わかるようになった。


「ぐはっ!」


 情けない声を上げて床に倒れ込む。

 ミケの方から抱きついてきたし、目がくらんでいて身体もちゃんと見てないのに。なんでこんな仕打ちを受けないといけないんだ……。


 腹を擦りながら上半身だけ起き上がると、俺は抗議の意を込めた視線をレミさんに向けた。

 あ、視界がすっかりもとに戻っている。

 怖い顔のレミさんが俺を見下している。

 その傍らに立つミケは頭から毛布を被せられていた。


「だから待ってって言ったのに。お姉ちゃんはせっかちなんだから……」


 ソラちゃんは、衣服を着ていない犬型のミケに保護具を戻したら、衣服を着ていない人型に戻るのは当然だと説明をしてくれた。

 それを聞いたレミさんは「テヘッ」と舌を出して芝居がかった笑顔をみせる。


「……俺は何もしてないのに、なんで蹴られないといけないんですか?」

「もう、ポチくんはうるさいよ! これからミケの着替えをするから部屋の外で待ってなさい」


 俺のクレームはあからさまに却下され、レミさんに背中を押される形で部屋の外に出された。



 20分くらい経っただろうか。

 俺はレミさんたちの部屋のドアの前に立っていた。

 廊下を客が通るたび、彼らに対して変な愛想笑いをしてやり過ごしている。

 たぶん恋人を怒らせて部屋を追い出された哀れな男とでも思われているのだろう。

 すごく恥ずかしい……。


「ポチさん。もう入って大丈夫ですよ」


 控え目にドアを開け、ひょっこりと顔を出したソラちゃん。

 この状況では救いの女神に見える!

 俺は滑り込むように部屋へと戻った。


 部屋の中に視線を向けると、レミさんとミケがテーブルについていた。

 ミケは白いシャツと黒い短パンを身につけている。たぶんレミさんから借りたのだろう。

 だが、そんな衣装の違いは些細なことだった。

 俺の目を釘付けにしたのは、ミケの頭部。そう、ミケの頭部にピンと立った三角の柴犬のような耳があるのだ。

 ミケはいつもニット帽を被っていたので、初めて出会ったときからケモ耳が生えていたのか、先ほどの退化による影響なのか、俺には判断しかねた。


「むむ、主殿もやはりコレが気になるでござるか?」


 ミケは気恥ずかしそうに頬を赤らめ、ケモ耳をぺたんと垂れた。

 俺はケモナーではないが、その仕草は可愛いと思ってしまった。

 美少女に仔犬のような可愛さもあるなんて反則だ。


「ミケは『パウ』という次元から来た来訪者だよ。そこの知的生命は犬のような生き物を始祖としているんだ。だから、ミケには犬みたいな耳があるんだよ」


 ミケの隣に座っているレミさんが俺に向かい側に座るように促した。

 異世界……レミさんたちは次元と呼んでいるものは、それこそ星の数ほどあると怨霊退治のときに教えてもらった。

 確かレミさんたちの住む次元を『ヨタ』、俺が住む、つまり地球がある次元を『ツネ』と呼ぶんだったかな。


「さすがレミさん。ミケの耳を見ただけでどの次元から来たのかまでわかるんですね」

「別にすごくないよ。私が生まれる少し前まで、『パウ』と『ヨタ』は貿易なんかの異次元交流をしていたからね。初等教育の歴史の授業で習う内容だよ」


 フンと小さく鼻息を漏らし、つまらないことを言ったとでもいうような顔で俺を見ている。


「そんなことより、そろそろミケの本当の目的を聞きたいんだけどな」

「本当の目的? ミケは俺たちを騙していたってことですか?」

「それは本人に説明してもらおうよ」


 レミさんの言葉に俺は動揺している。

 目を閉じて思案しているミケ。

 まさかジュウゾウの手先とか、そういう展開なのか?


 すっとミケが目を開く。


「……拙者は……」


 絞り出すように言葉が出る。

 俺とレミさんは身を乗り出す。


 ぎゅるるるるぅ~


 突然、大きな音が鳴った。


「レ、レミ殿。拙者、数日食事をしてなかったでござる。真実を語る前に何か食べ物を……」


 バタンとテーブルに額をつけて目を回しているミケ。


「ソラ! 食堂でいつものやつをテイクアウトして来て!」

「はい! ミケさん、ちょっと待っててくださいね」


 早くミケから真実を聞きたいのに。

 レミさんが絡むと話がスムーズに進まない気がするのはなぜだろう。 



 

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