第2話:予定のない連休はイッキ見で過ごす
ピタッと作戦から遡ること3日前。
俺は再び異世界に召喚された。
その日は三連休の初日。
俺は数日前にサブスクで見つけた懐かしの特撮モノをイッキ見しようと準備をしていた。
……三連休なのに外出する予定がないからでは決してない。
旅行とか誰かと出かけるとか、そういう選択肢は最初からないけど負け惜しみではない。
観ようとしている特撮モノは、俺が幼稚園児の頃に放送されていた作品だった。
よくある5色の戦隊ヒーローではなく、孤高のヒーローの物語。
当時観ていたはずだが、幼かったので今ではキャラや必殺技くらいしか覚えていない
なので、ほぼ初見状態で観られるので結構楽しみにしていた。
とりあえず、夕方まで6時間は観続けるつもりなので、ちゃぶ台には飲み物と食べ物を完備。
メニュー画面が映るテレビにリモコンを向けて決定ボタンを押す。
リモコンをちゃぶ台に置き、飲み物に手を伸ばす……。
その瞬間。
俺の視界は真っ暗になり、胸がざわつく浮遊感を覚えた。
そして、次の瞬間には見知らぬ部屋にいた。
自室にいた時のように、あぐらをかいた体勢で。
「やっほー。ポチ君。久しぶり!」
俺の目の前にはレミさんとソラちゃんがいた。
ふたりは椅子に座って俺を見下ろしている。
「……どうも。お久しぶりです」
「リアクションが薄いなぁ。前の召喚の時みたいにもっとあたふたしてよ。つまんないじゃん」
「だって、前回の契約終了時に詐欺まがいの契約を結ばされたことは忘れてませんから」
「もー感動の再会なのに~」
「それで今回はどんな依頼ですか? まだ怨霊が出たとか?」
「淡々と話を進めないでよ。調子が狂うじゃん!」
「いえ、淡々とというよりは諦めの境地です。慌てても無駄だって前回の召喚で嫌というほど実感したので。ところで今回は死にそうになったりしないんですね?」
自分の身体が前回の召喚のように苦しくならないことに俺はちょっと驚いた。
決して苦しみたいわけではないが、前回の説明では俺の身体はこの世界では異物であると言われたから、ふと疑問に思ったのだ。
「それはポチさんとはすでに契約が結ばれているからですよ。着ている洋服も前回こちらにいた時のものになっていますよね?」
「えっ! 本当だ!」
俺が着ているのは袖がよれよれになった部屋着ではなくスーツだ。
しかもソラちゃんがリメイクして革の補強がされたものだった。
「おっ! ちょっといい感じのリアクションが出てきたね! うんうん。私はそういう反応が見たかったの!」
「いや、そう何度も新鮮なリアクションは取りませんって」
俺は前回の召喚から帰還して以降、いつ召喚されても良いようにとイメージトレーニング的なことをしていた。
だが、あまりにも心の準備をしていたせいか、実際に召喚されてみたら思いのほか冷静というか、達観した心持ちになっていた。
まあ、トレーニングの成果だから良いことなんだけど。ちょっと面白みがないな。
「じゃあ。これはどうだ!」
レミさんは立ち上がると、肩出しで着ている白いコートを見せるようにくるりと1回転ターンをした。
コートにはフードが付いていて、袖や裾、肩の部分に金糸の刺繍が施されていた。
そして左胸には複雑な模様の紋章が付いている。
「……オシャレさん?」
「違う! 私とソラは無事に国家魔術師になったの!」
「そうなんです! これもポチさんのおかげです。ありがとうございます!」
ソラちゃんを見ると、彼女も同じコートを着ている。
ただし、ソラちゃんは着崩すことなくしっかりとした身なりだけど。
「それは良かったです。苦労して怨霊を退治したのが認められたんですね」
「私たち姉妹の野望も前進中ってことだよ!」
「それはおめでとうございます」
ソラちゃんから以前に聞いたふたりの境遇を思うと、俺が少しでもふたりの役に立てたことは単純に嬉しかった。
「さらなる高みへと進むために、またポチ君の力を拝借しようと思って」
「わかってます。そのために呼ばれたんですよね」
「じゃあ、早速依頼の内容を説明するね!」
「いや、レミさんの説明だと適当すぎるので、ソラちゃんから話を聞きたいんですけど」
「へー言うようになったじゃん、ポチ君!」
「痛い、痛い。いい歳した大人がヘッドロックとかしないでくださいよ!」
ヘッドロックされると、うなじにレミさんの胸が当たって、痛いけど気持ちいいかも。
「あの……とりあえず下の食堂に行きませんか? 食事でもしながら話をしましょう」
呆れたように俺とレミさんと見ながらソラちゃんが提案した。
「下? 食堂?」
「あ、言い忘れた。ここ、ロロリア村じゃないよ。王都の南にある地方都市ラリア。結構ヤバい事件が起こっている、いま話題の場所だよ!」
結構ヤバいことをレミさんがさらりと言った。




