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第14話:怨レミ

「いやぁぁぁぁぁ! お姉ちゃん!」


 ソラちゃんが俺の横をすり抜けて、レミさんのもとへ駆け寄ろうとした。

 魔力が奪われて体に力が入らず、立ち上がるのに精いっぱいで、俺は彼女を止められなかった。

 今のレミさんに近づくのは危ないのに。


「ソラさん。落ち着いてください。レミさんは私とポチさんで必ず助けますから」


 ワタさんはソラちゃんの腕を掴み、自分の背後にかくまった。

 ソラちゃんは小さく頷くと、レミさんの指示通りに俺へ魔力を充填し始めた。

 体が温かくなり、力が戻っていくのを感じる。


「あれって、やっぱり怨霊が憑依しているんですよね?」

「そうです」


 レミさん……いや、彼女の中に入った何かは自分の入った体を調べるように、手足を動かしたり、服を摘まんで身辺を確認したりしている。


「でも、怨霊は部屋にいないって……」

「屋敷に入ったときにはいませんでした。私の推測ですが、あの縦笛の中で休眠状態だったのでしょう。ポチさんが手にしたときに魔力を吸収して覚醒したのだと思います」


それって、俺のせい?

俺のせいでレミさんが黒目のホラー顔になったのか。


「たぶん倒れている男性は怨霊に憑依されて、少しずつ魔力を奪われていたのだと思います」

「あの縦笛は聖異物なんですか?」

「聖異物のことは詳しくないので何とも言えないですが、そうかもしれないです。レミさんに憑依した怨霊は人工怨霊と同じ色ですが、かなり濃い色をしています。おそらく、あれが人工怨霊の主でしょう」

「つまり、あれを浄化できれば良いんですね」

「はい。怨霊はレミさんの体を動かすのに夢中のようです。今のうちにこちらは浄化の準備を始めましょう」


 いつもの間延びした言い方ではなく、冷静で迅速な対応のワタさん。

 まるで別人のようだ。

 天才とか秀才とか言っていたのは、あながち間違いじゃなさそうだ。


「ポチさんは結界を張れますか?」

「いえ、俺の魔術ではまだできないです」

「そうですか。わかりました」


 ワタさんはカバンから長い釘を出して、

「結界は私が張ります」

と自分の手のひらに勢いよく突き刺した。

 痛い!

 俺が刺されたわけではないが、手の甲から突き出た釘を見て、俺は顔をしかめる。

 ワタさんの手がみるみるうちに流血で赤く濡れた。


「下卑た紅き血よ。命じる、囲って」


 血が一瞬光ったかと思った途端、血がツタのような形状になりぐんぐん増えていく。

 うねうねと伸びていくと俺たちを囲う檻のようになった。


「本来は相手を拘束する呪いの魔術ですが、応用すれば結界の代わりになります」

「すみません。助かりました」

「怨霊の主がこちらに注意を向ける前に対処したいと思います。ポチさんは私を怨霊から引き離した魔術をお願いします」

「わかりました」


 俺にはなんの策もないので、ここは怨霊のエキスパートに従うのが得策だろう。

 腰に下げているJUピー!を手に持ち、魔術の準備を始めた。


「待ってください! その魔術って本体から表皮を剥がすような効果があるんですよね?」


 ソラちゃんが慌てたように俺に声をかけた。

 正確には「着ている服を脱がす」なのだけど、拡大解釈によってはそのようにも使える。

 俺はソラちゃんに頷いた。


「だったら、使ってはダメです! 憑依している魂から体を剥がしたら、お姉ちゃんの体が壊れちゃうかもしれない」


 確かに……漫画の描写だとタンクトップをたくし上げて脱ぐわけだから、怨霊がレミさんの体をたくし上げて脱いだら、体がぐちゃぐちゃになりそうだ。


「ワタさん、すみません。俺の魔術だとレミさんの体が耐えられないと思います」

「そうですか……」


 待てよ?

 あいつは魔力を消費しないと動けないのだとしたら……。


「あの、ワタさん。レミさんは魔力がほとんどないらしいので、このまま放置していたら怨霊が勝手に停止するんじゃないですか?」

「魔力が全くない生き物はこの世界にはいません。レミさんも魔術が使えるほどの魔力量ではないだけだと思います。それは逆に危ないです」

「なぜ?」

「少ない魔力をすべて吸収されたら命に関わります。早くレミさんから怨霊を取り除かないと……」


 その時、結界がバチバチと大きな音を立てた。

 見るとレミさんの右手が結界のツタを握っている。

 ちなみに左手にはリコーダーが握られていた。


「何をこそこそとお話ししているの? 私を仲間外れにして!」


 レミさん、いや怨霊?

 ややこしいので怨レミでいいや。

 怨レミは、結界のツタを力いっぱい引っ張り、千切ろうとしている。


「ワタさん。ほかに方法は?」


 ワタさんを見ると、じーっと怨レミを見ている。


「霊が怨霊になるのは、何らかの理由があります。あの怨霊が恨む理由を探りましょう」


 ワタさんは手から釘を引き抜くと、カバンから線香の束のようなものを取り出した。

 そして、魔術で火をつける。

 線香からすごい勢いで煙が立ち上り、怨レミを包んだ。


「怨霊さん。私たちにあなたのことを教えてください」


 ワタさんが怨レミににっこりとほほ笑んだ。


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