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第4話:姉妹の生い立ち

「私の一族が宮廷魔術師の家系だって話は前にしましたよね?」


 夜が更けて少し肌寒くなって来たからか、両手を焚火に照らすソラちゃん。


「うん」

「私は膨大な魔力を持って生まれてきました。そのときは父と母、そして一族のみんなが大喜びしたそうです。この魔力を自在に扱えたら、一人で他国の軍隊とも戦える魔術師になるだろうって。でも、私が物心ついて魔術の訓練…術式の構成を始めたときに、魔力の量が多すぎて術式がうまく組めないことがわかりました」


 ソラちゃんは近くに置いていた紅茶の入ったカップを手に取ると、口を濡らすようにひと口だけ含んだ。


「両親は私に失望しました。宮廷魔術師の家系であるにもかかわらず、魔術が使えない子は前代未聞だったので」

「そんな、別に魔術師にならなくても……」

「何よりも名誉を重んじる家系なんです。それから私は広大な領地の片隅にある離れに囲われました。建前としては、重い伝染病の療養でした」

「それって……」

「一族の恥を隠すことが主な目的ですが、私の魔力を危険視したんです。放出されずに蓄積され続ける魔力が暴走する恐れがあったから。実際に魔力が貯まるにつれて、幼い体ではそれに耐えられなくなりました。高熱を出して寝込むことも多くなって。このまま死ぬのかと毎日泣いていました」


 悲しそうな顔のソラちゃんに、俺は気の利いたことを言えなかった。


「そんなある日。お姉ちゃんが私がいる離れの小屋にやって来たんです。その頃のお姉ちゃんは一族の中でも逸材と言われる将来有望な魔術師でした」

「レミさんが?」

「はい。お姉ちゃんは私のために、他人から魔力を吸収する術を独学で作り出したんです。お姉ちゃんがその魔術を定期的に使ってくれたおかげで、私の体は安定していきました。でも、お姉ちゃんはそのせいで、自分で魔力を作る力をほとんど失ってしまいました」

「……魔術の反作用?」

「そうです。お姉ちゃんは魔術師に大切な魔力を失ったんです。それを知った両親はお姉ちゃんも一族の恥だと言い出したんです。それから前にお話ししたように、ロロリア村の師匠のところに預けられました」


 ソラちゃんは俺に気遣うように、少しほほ笑んだ。


「ロロリア村で暮らし始めた頃、私はいつも泣いていました。一族から追放されたことも悲しかったけど、お姉ちゃんが私のために犠牲になったことが辛くて。村に暮らすようになって、食事や洗濯など身の回りことをお姉ちゃんが全部してくれたんです」

「え? あのレミさんが?」


 それはかなり意外だぞ。

 俺の知っているレミさんとは全くの別人だ。


「お姉ちゃんが何かしてくれる度に、私は謝って泣いてばかりいました。でも、ある日、お姉ちゃんが言ったんです。『これからはソラが私を助けてよ。そうしたらもう謝らなくても良くなるから』って」


 それはまたすごい論法だなと思ったが、言わずにおいた。


「それから、私は料理や洗濯、掃除と家事を覚えていきました。ちょっと強引ですが、お姉ちゃんなりに私の存在意義みたいなものを作ろうとしたんだと思います」

「……ということは、レミさんはあの性格を演じていると?」

「ふふ。あの性格は昔からですけど、本当はもっと何でもできる人だと思います。でも、怨霊退治は私たちだけでは無理だと自覚したから、ポチさんを召喚したんだと思います」

「俺ですか……」

「お姉ちゃんが私以外の人を頼るときは本当に必要なときだと思います。なので、ポチさんには申し訳ないですが、お姉ちゃんの力になってあげてほしいんです」


 そんな大役を俺ができるのだろうか。

 自分の世界では何の特徴もない、ただのサラリーマンだ。


「……善処いたします。あと、レミさんはソラちゃんのことも普通に頼っていると思いますよ」

「え?」

「だって、レミさんって独学で新しい魔術を作っちゃうくらいの人なんですよね? そんなキレ者なら、妹をうまく丸め込む方法なんてすぐに浮かぶと思います。だから、ソラちゃんにいろいろと任せているのは、ソラちゃんならできると思ったし、自分が楽したいと思ったからだと推測します」

「……ふふ。そうかもしれないですね。ポチさん、ありがとうございます。お話できて気持ちが楽になりました」


 ソラちゃんが俺をまっすぐに見つめて笑う。

 下手したら自分の子供であってもおかしくない歳の子なのに、その笑顔にドキッとした。


「明日も早いですよ、ポチさん。そろそろ休みましょう」


俺たちは食器を片付けると、それぞれ寝床についた。


ブックマークやいいねをしてくださり、ありがとうございます。

早く続きを投稿できるように頑張ります。

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