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第1話:召喚されると基本死ぬらしい

「契約書、さいんシナイト、死ヌ」


 俺の前に置かれた書類の署名欄を人差し指でトントンと叩きながら、目の前にいる女性が片言の日本語で同じ言葉を繰り返す。

 「死ぬ」という物騒な言葉に信憑性はあった。

 先ほどから全身が熱く、関節痛がひどい。

 鼻の奥からつーっと液体が流れる感触がしたので慌てて手の甲で拭うと、その液体は鼻水ではなく血だった。

 毒やウイルスでも盛られたのだろうか?

 というか、なんで俺はこんなところにいるのか?

 確か会社から家に帰る電車に乗っていたはずだ。なのに、今は見覚えのない部屋にいる。

 部屋中に本が積まれた汚い部屋。その中央にあるテーブルの席に俺は座っていた。

 目の前には女性が二人。

 俺に契約を催促する女性は20歳前後だろうか。茶色のショートヘアに黒いフレームの眼鏡をかけている。なかなかの美人だ。

 その隣には美女の半分くらいの座高でテーブルにちょこんと両手を乗せてこちらを見ている少女がいた。こちらは10歳くらいだろうか。銀色の長い髪なので外国人だろう。


「早クスル! 死ヌ!」


 語気を強めて俺にペンを握らせる。触られた皮膚が焼けるように痛い。

 なんで俺がこんな目に遭わないといけないのか?

 俺は36歳のどこにでもいるようなサラリーマン。

 妻子はいないし、貯金もあまりないし、収入だって多くない。俺を拉致して脅迫してももぎ取れるのは微々たるものだ。

 このまま死んでもいいかなと思ったとき、自宅のパソコンにあるデータのことを思い出した。 

 エッチな画像や勢いで書いてみたファンタジー小説。

 俺が死んだ後に身内に見られるのはできれば避けたい。死ぬのはデータを消してからだ。

 

 どうせ俺から奪う財産なんてほとんどないのだ。

 俺は握らされたペンで美女が指さしているところに書き殴るように自分の名前を書いた。


「契約、デキタ」


 美女がそう言った瞬間。全身の痛みや熱がすーっと引いていった。

 てっきり解毒剤みたいなものをもらえると思っていたのに、そんなものがなくても体が楽になっていく。

 これはどういう理屈なんだ?

 もっとこうなにか……。

 状況を理解しようと思考を巡らせたいのに強い睡魔が襲ってくる。

 この状況で寝るのはよくないと思いつつ、俺の意識はそこで途切れてしまった。

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