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第13話:ロマンティックだとは思わないかい?

「驚いた顔をしているな。聖異物が異世界人だけの物だと思っていたのかね?」


 ナーガスが俺を見下ろし、俺にしか聞こえない声量で話しかけてきた。

 俺は尻もちをついたまま、手を動かして少しだけ後ずさる。

 聖異物が異世界人の専売特許だとは思っていない。レミさんの眼鏡も聖異物だと言っていたし、彼女が普通に使っていたから。 ただ、こんなに普及しているものだとは思っていなかった。


「とはいえ、誰もが持っているというわけではない。私の聖異物は我が家に伝わる家宝。この革の鎧の内側に縫い付けてある」


 そう言うと、誇らしげに鎧を親指でコツコツと軽く叩いた。


「そんな大事なこと、簡単に明かしていいんですか?」

「なに、これもハンデだよ。私の聖異物は、『貴婦人の手袋』と呼ばれている。異世界で騎士が戦地に赴く際に、その恋人は愛する人が無事に生還することを祈って自分の手袋を片方贈ったそうだ。そんな云われがあるからか、『貴婦人の手袋』は私に女性の声援や想いが向けられるほど、我が身を守る盾となる。女性が私に好意を向けるほどに私に力を与えてくれるなんて、ロマンティックだとは思わないかい?」


 ナーガスはそこまで小声で話した後、また芝居がかったように両手を掲げた。


「このナーガス、異世界の魔術師の攻撃を見事に耐えてみせた! これも私に声援を送ってくれる淑女たちのおかげだ!」


 ナーガスの宣言に、村の女性陣がより一層声援を送る。

 これはまずい。奴の聖異物の力が本当なら、俺の攻撃はさらに効かなくなってしまう。


「ポチ君! いつまで座ってんだ! 早く立ち上がれ!」


 レミさんの声が後方から聞こえて、観衆の声に向いていた意識が戻される。

 ナーガスを見ると、彼は腰に下げていた剣を鞘から抜くところだった。

 剣の刃は鋭利ではないようで、斬るというよりは叩くのに向いている。

 多分、決闘用に作られた物だろう。

 それでも俺にとってはかなり危険だ。斬られるのも痛いが、叩かれるのも痛い。

 痛いのは嫌だ!


「ハンデはここまでだ、青年。ここからは真剣な決闘といこうじゃないか!」


 右手に剣を持ち、右肩を前に構えるナーガス。

 俺は慌てて起き上がると、念のためにベルトに下げておいた木剣を掴んだ。

 木剣は日本刀でいうところの脇差くらいの長さ。剣道の経験はあるが、こんな短い剣をどう扱っていいのかわからない。

 あたふたしている俺に、ナーガスは問答無用に剣を振る。


「ひい!」


 情けない声を上げてしまったが、どうにか避けることができた。

 そんな俺を見て、ナーガスが侮辱するように笑う。

 どうやら、まだ本気で攻撃していないようだ。

 ここは魔術でどうにかするしかない。


「開帳、220ページ! 拡大解釈率、中!」


 俺の横で常に浮いているJUピー!が指定のページを開く。

 今朝、レミさんと選んだ3つの擬音のうちのひとつ。

 何度でも使える攻撃用の魔術だ。


「私には『貴婦人の手袋』があるのにまだ諦めないとはな」

「……諦めたら、そこで人生終了なので」

「この決闘にそこまでの意気込みで臨むとは、どれだけの褒美を提示されたのだ?」

「……俺自身の命…です」


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