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第9話:魔術には反作用がつきもの

 決闘なんて物騒なことは初めてなので昨晩は緊張でなかなか眠れず、今朝も早くから目が覚めてしまった。

 不安なままベッドで横になっていてもしょうがないので、俺はリビングのテーブルで決闘の準備をすることにした。

 JUピー!を読み返して使えそうなコマをピックアップして、昨日ソラちゃんにもらった手帳にメモしていく。


「おはよう、ポチ君。早いね。決闘は昼からだよ。もっと寝ててもいいのに」


 レミさんがタンクトップと半パン姿でリビングに入ってきた。

 美女のそんな無防備な姿を見てもドキドキしないことを自覚して、俺は自分が相当緊張していると改めて思った。


「緊張と不安で寝てられないんです」

「そうりゃそうか。で、何してるの?」


 レミさんは大きなあくびをすると、ずれた眼鏡を人差し指でくいっと押し上げた。

 こっちは緊張でどうにかなりそうなのに、全くもって暢気なものだ。


「使えそうなコマのページと擬音をメモしてるんです。JUピー!とか漫画雑誌ってページ数が書かれていないページも多くて。事前にページ数をカウントしてメモしておかないと咄嗟にページ指定ができないので」

「そうか。でも、戦っている最中に手帳を読むのも難しいと思うよ。相手はそんなの待ってくれないからね。暗記しちゃえばいいじゃん」

「こんな精神状態で暗記なんて無理ですよ。でも、確かに手帳を読むのは現実的じゃないですよね……」

「だったらさ、この決闘で使う魔術を3つくらいに絞って手の甲に書いておけば? それならあまり隙が生まれないと思うよ」

「それはいいですね」


 俺は手帳に書いた漫画の擬音の中から、決闘で使えそうなものを探していく。

 ただ、どれを選べばいいのかわからない。

 決闘なんてしたことないから、どう戦略を練ればいいのか見当もつかない。


「迷ってるみたいだね。だったら、相手のけん制や足止めをする魔術、何度も使える攻撃用の魔術、とどめの一撃を与える魔術の3つに絞ってみたら? 戦い慣れていないポチ君が複雑な作戦を実行するのは無理だと思うから」

「相手の動きを止めて、攻撃して、相手がよろけたところにとどめをさす。確かに3つの動作だけに集中した方があれこれ考えるよりもいいかもしれないですね。でも、相手が初手から違う行動をとったら?」

「そんなことを考えても生産性がないよ。それにこれは決闘といっても命の奪い合いじゃないからね。気楽に行こうよ!」

「……怨霊退治ができないと、契約違反で俺は死ぬんですけどね」

「あー……」


 レミさんが俺から視線を逸らした。


「あ、ソラ。おはよう」

「おはようございます」


 レミさんが視線を逸らした先にソラちゃんが立っていた。

 ソラちゃんはいつもの法衣のような服を着て、ちゃんと身支度を整えている。

 年齢は聞いていないが、幼いのに姉とは違ってしっかりした子だ。


「ポチさん。勝手に手を入れてしまって申し訳ないですが、上着を強化しておきました」


 そう言って、ソラちゃんが俺にスーツの上着を差し出した。

 俺が召喚された際に着ていた紺色のスーツは、召喚契約後に若返った俺の体に合うようにサイズダウンしていた。

 どういう原理かわからないが、これも召喚術の効果なのだろう。

 スーツを受け取ると心なしかいつもよりも重く感じる。

 広げてみると、肩と襟、袖口と肘の部分にスーツの同系色の薄い革で補強されていた。

 だが、これだけの補強でこんなに重くなるとは思えない。


「気づきましたか? この上着に私とお姉ちゃんで衝撃吸収の魔術をかけておきました」

「そうなんだよー。受けた衝撃の半分くらいは上着が吸収してくれるよ。でも、その反作用でちょっと重さが増しちゃうけどね」

「なんで魔術をかけると重くなるんですか?」


 魔術の原理をわかっていないので、反作用というものがあることを初めて知った。

 漫画やアニメに出てくる魔法ではそんなリスクはあまり聞いたことがない。


「ほかの次元ではわからないけど、この次元の魔術は何かの現象を起こそうとすると、なんらかのリスクが生じるんだよ。リスクを負わないのは聖異物くらいだね。だから、ポチ君の魔術書は効果も特殊だけど、リスクがないという面でも特別なんだよ」

「そういうもんなんですね」

「まあ、ポチ君はこの次元の魔術を使うことはないと思うから、魔術は万能ではないってことくらい理解していればいいよ」


 上着に袖を通すといつもよりも重みを感じた。

 でも、動きを制限されるほどではなかった。数時間着ていれば、違和感もなくなるだろう。

 

その後、俺はレミさんと一緒に決闘で使う魔術を選んで右手の甲にメモした。

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