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2.- 3月6日 ライブ開始まで 60日 - 海野

 拝み倒してなんとか米村にうんと言わせたので、演出というか舞台監督、責任者の目処は立った。

 だが、前回までやっていた東に会わせておくべきかの判断がつきにくい……どうするべきか?

「なぁ、海野?。前に同じ様な立場でやっていた責任者っているんだろ?会うわけにはいかないかな?、それとも今までどうやっていたのか聞いておくのはまずいか?」

 そんなことを考えていたら、そちらも考えていたように米村からの問いかけが来た。

 返事をしないと……。とはいえ、少し間をつくりその間にまた椅子へと座りなおした。

 正面に米村がいる状態へと戻る。

 とはいえ……。

 いや、前の責任者でもある東に会わせる。ってのはちょっとまずいか?、悩みどころだな……米村はいいとしても東にしては嫌かも知れない……。

「うーん、そうだな。今会うとちょっと問題があるかな」

「そうか」

 米村はすぐに理解してくれたようでほっとした。

 では、こちらからは……

「今日中に連絡取れるスタッフにはこっちに来てもらおうと思うんだが」

 そうオレが言うと、米村は、

「そうだな……。前任者に会えないとなると、キーマンには先に会っておきたいかな。あ、アイドルたちは最後の方にしたい」

 ほう……。何か考えがあるのか?、米村が何もしなくてもメンツだけはそろっていて前と同じ様には出来るとは思うし、あまり動かれても問題出てくるかな?

 とはいえ、任せた手前まずは好きなようにやってもらうか……。

「キーマン……。ライブというのは音を出して聞いてもらうのがおもなことだから、プロデューサーがキーマンというべきかな……」

「プロデューサー?」

「ああ、シフォンの楽曲をいってに作っている責任者」

「プロデューサーか……。そうだな、まずはその人と会うか……。会えるか?」

「聞いてみる」

 そういうと立ち上がって、スマホから電話をかける。この業界の人間は両極端なのが多く、堤なんかはチャットはまったくやらず電話でないと連絡がつかないという古いタイプの人間だった。かくいう目の前にいる米村は逆にチャットじゃないと連絡が取れないタイプで電話嫌いを徹底している。

 ……。何度か鳴らすも出ない。

「……。忙しそうか?」

 米村が心配そうにこちらを見ていた。

「あ、いやこの時間ならまだ家にいるはずなんだが……。ちょっと事務所の方にかけてみる」

 そういって、再度事務所へと電話をかける。

 事務所へかけると数回のコールで電話が繋がった。

「おう、海野だが……。うん、ちょっと顔出し出来ないか?前言っていたライブの……。そう決まった。……うん、うん。じゃあ15分後に」

 スマホから電話を切って米村へと向き直す。

「来るって。あと15分くらい」

「近いんだな」

「隣駅だからな。事務所にいてよかったよ。家からだったら1時間ちょいかかる」

「そうか……」

 そういうと米村は一人で考え事をするようにこちらを見ずにぶつぶつと言い始め、かばんの中からノートパソコンを取り出して作業を開始した。

 おれといえば、邪魔しちゃ悪いと思い席を立って自分の机へと戻ろうとしたんだが……

「なぁ、海野。キーマンはその来るって人」

「堤だな。若いけど優秀なやつだよ」

「堤さん、か。彼だけでは舞台は出来ないだろ?」

 舞台?、……ああ、ライブも舞台だからそうだな。

「そうだな、堤だけじゃむりだ。アイドルが中心だから彼女らは大切だ」

「うん、……だな。で、ライトもいるよな。あと音響?スピーカー?マイク?なんていうだ?」

「照明と音響だな」

「うん、……、で、かきわり……」

「舞台装置、大道具かな」

 書き割りとは古い言い方だ。米村の頭にはどうやら演劇の舞台のように思えているらしい。そういや似ている、か。

「あと、座席があるからそれの設置、客をいれれば警備……あとなんだ?」

 そういいながらカタカタとパソコンに入力していっている。データをまとめている感じかな?こいつにはそういうところがある。

「そうだな、グッズ収入もばかにならないからグッズ売り場も作らないとならないな、あと移動してくる客も多いだろうから駐車場関係も大事だ」

「ああ、そうか関係者用だけじゃなくて、客用も駐車場なんかはいるってことだな……、それは無しにはできるのか?」

「そうだな、会場が大きくても駐車場がそれほど大きくない場合は移動経路には電車をつかって欲しい旨お願いはできる、な」

「なるほど……」

「あと組み立て方にもよるけれど、現場での音響調節には人がいる」

「人……、ああ、マイクのバランスとかがあるからか?」

「マイク、だけじゃなくてスピーカーからバックミュージック……、カラオケだな。それが流れるのでマイクとの調整はリアルタイムでやる必要がある」

「リアルタイム……。そうか。生き物だな」

「ライブ、ってのは生演奏とか生中継生放送、演奏会って意味もある。まぁ和製英語だがライフっていう生きるって意味も兼ねてるかもな」

「いいね。ふむ」

 そうこう説明していたら、コンコンとノックの音がした。

「いいよ、入ってー」

 入室をうながすと、堤がちょっと急ぎつつやってきた。

「悪いね」

 そういって、席へと座らせる。

 おらは堤を座らせたところへ紹介を始めた。

「堤、こいつが今回ライブ演出担当する米村。主にうちのコピーライトを中心に文字回りの作業をいつもやってくれていたので作品は堤もみたことあるかもな」

 そういって、今度は米村を堤へと紹介する。

「で、今来て紹介されていたのが堤。シフォンの楽曲のプロデュース全般をやっていて、楽曲のことはこいつに聞けばなんでも判る。まだ若いがエースだな」

「ども」

「堤さん、よろしくお願いします」

 こっちが二人を紹介すると、堤は短く、米村はお辞儀をしてお互いを認識した。

「米村さん、でいいんですよね。シフォンの楽曲って聞いてます?」

 認識したと思ったらすぐさま堤が言い出した。

 それに対して、

「いや、何も知りませんので教えてください」

 と、米村。

 すかさず、堤が、

「社長、ライブまでもう何日もないんですけど。いいんですか?」

 と、おれに聞いてきた。

 いいもわるいも……。

「え?何日もない?ってどういうことだ?」

「あれ?米村さん、聞いてませんか?」

「何を?」

「次のライブ、こんどのゴールデンウィークの5月5日ですよ」

「え?……って、あと二ヶ月?……。にかげつ?」

「社長、米村さんに言ってなかったの?もしかして……?」

「うん、聞かれなかったから」


「社長!」

「海野!」


 いや、やるって言ったし……。ねぇ?

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