表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
"しあわせ”をください  作者: ゆう
6/8

同じことの繰り返し。

波留が居なくなった。死んじゃった。目の前で波留は動かなくなった。私は波留になにしてあげられたっけ、何もできてないな、もっと話したかった。いつの間にか波留がいることが、4人でいることが当たり前だったのにその当たり前はドミノみたいに簡単に崩れちゃったな。

「ねえ、優愛姉これからどこに行くの?」一夜明けた日の朝、なんだかまた誰かが居なくなるような気がして居ても立っても居られなくなって優愛姉に聞いてしまったんだ。

「わからない。ちょっと待ってね。すぐ探すから。」わかってる、みんな追い詰められてることだって。奏ちゃんもしゃべらない。二人とも静かに波留の死を悲しんでる、というより悔しんでる。二人とも年上だから責任は二人にあって特にこんな無謀な旅に誘った優愛姉は必要以上に責任感じてるんだろうな。感じなくてもいいのに。死はきっと生まれたころから約束されていたことだと思うし。

「あのさ、優愛姉、奏ちゃん。私の秘密基地行かない?」私はふと、公園に雨風凌げる本格的な秘密基地を作っていたのを思い出した。だからその場所へ二人を誘ったのに二人は「私はいいや。ありがと」とか「ごめん。私ももう少し一人になりたい。」って言っちゃうから私は一人で秘密基地へ行くことにした。でも、その場所へは一向にたどり着けないというか知らない場所にいる気がする。あ、しくじった。飲み物を持ってくるのを忘れちゃった。あと少し、だと思えば思うほどどんどん森の奥のような場所へはいって行ってしまう。どんどん足はもつれて行く、脳がしっかりしろという信号を送るのに足が思いとは裏腹に動かなくなってしまってどこが上だったかすらも分からなくなってしまった。倒れる、そう思った時にはもう遅くて最後に二人のことを考えながら地面に身を任せた。

嫌な予感がする。直感でそう思った。また誰かを失ってしまうような感覚があった

「ねえ、優愛。なんか嫌な予感がしない?」何もできないけど嫌な予感だけは頭にあった。

「私も思った。また、なにか大事なものを失うようなそんな感じ。」なんだ、優愛も思ってるんじゃん。でも行動に移せなくて、もう、一人失ってしまってから優愛は魂が抜けたように動かない。簡易的なテントのような場所でずっとうずくまっている。私もずっと頭が真っ白で何も考えられていない。でも、次いなくなるとすれば、というか來は?

「優愛!來が居ない‼」反射で叫んでしまった、それが間違いだったのかもしれない。散歩していた20代前半ぐらいの女の人に言及されてしまった。

「來ってどの來?小学5年生の來?」急に“來”という単語に食いついてきた人。來の保護者だろうか、こんなに若いものかな。

「はい、そうですけど。」答えてよかったのかな。優愛に聞くの忘れちゃった。

「來は今どこにいるの?ねえ、どこ?」怖い。そんな感情が私の脳内を埋め尽くしていく。來に何を執着しているのだろうか、なぜ、こんなに必死なのか私には理解できなかった。

「申し訳ありませんが、貴方は來の何でしょうか?」そんな時、優愛が助けてくれた。私と女の人の間に入って女の人と話始めた。

「私?私は來の施設の“ママ”ですけど?」施設?來は施設育ちなの?

「“ママ”なんて笑わせないでください。來がいじめられているのも見抜けなくてそれで來が苦しんで施設から逃げたのも知らずに。」女の人を嘲笑うかのように話す優愛。優愛は強い。妹を守るためなら何でもする。そんな人間だ。

「そんなこと言うけど、あなた達は來の好物や何が嫌いか知っているの⁈」女の人の怒りは小学生(にしか見えない中学生)に嘲笑われたことにより最高潮なんだろう。

「好きなおにぎりは塩。嫌いなものは魚介類。好きなことは走ること。嫌いなことは弱さを見せること。どうですか?間違えてないでしょうでしょう?」この短い1週間の間に優愛は私たち3人の好きなものを把握していた。こんなところで役に立つなんて誰が考えただろう。流石にここまで言われたら女の人も返す言葉がなかった。苦虫を嚙み潰したようなよくわからない顔をして戻っていった。

「優愛、ありがとう。」

「私は妹を守るためにしただけだから。ほら、來探しに行くんじゃないの?あの子飲み物持ってなかったから正直もうやばいよ。」そうだ、今日の最高気温は30℃を超えてしまう。飲み物を持たずして外に出かけたら一時間もすれば軽い脱水症になってしまう。それにもう2時間も來が居ない。きっと來が言っていた秘密基地にいるに違いない。

「來、きっと一人で秘密基地に行ってるよ、私たちも行こう?」

「私たち、來の秘密基地の場所知らないよ?」本当だ、場所を聞いていない。どうするんだろう。

「でも、來の居場所はわかる、ねえ、奏。來がもうずっと動いてない。きっともう手遅れだよ。」嘘。たった2日で二人も大事な人を失ってしまうの?なんで。神様は不平等だ。

「私、來探してくる。どの辺?」やっぱりあきらめきれない。

(19)「無茶だよ。どこかの学校の裏山のなかだし、なにより、これ以上大事な人を失いたくない。」今にも泣きそうな声で訴えてくる優愛だけど今はそんな子を言ってる場合じゃないんだよ?

「私は何があっても帰ってくるから。お願い。行く事を許して。」どうしても來に会いたかった。

「わかった。」ため息をはきながらだけど優愛は了承してくれた。

「若松小学校?の裏山。山頂付近。」早口に伝えてまた優愛はテントに戻っていった。この後最悪な未来が待っているなんてこの時は思わなかったけど、


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ