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"しあわせ”をください  作者: ゆう
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出会い

ぱぱ、助けて。まま、ごめんなさい。いうこと聞けるようにするからもうなぐらないで。

「はぁ、もういい。返事しないならいいよ。あんたは私の子じゃない。」そんな言葉とともに私は気づけば家から少し離れた公園にいた。

「まま?ぱぱ?」私はあまりの恐怖に泣き出してしまった。ぱぱは?ままは?どこに行っちゃったの?ごめんなさい。いい子にするから。ちょっとの間泣いていたら、知らない声が上から聞こえてきた。

「あれ?こんな時間にどうしたの?」知らないお姉ちゃんが声かけてきた。殴られる。怖い。

「トラウマあるのか。私もあるよ。そこのベンチで話しよっか」とらうま?何かよくわからないけどお姉ちゃんもあるみたい。

「私、優愛。君は?」

「波留。」お姉ちゃんが名前を聞いてきた。優愛ちゃんって言うんだって。私がくしゃみすると優愛ちゃんは私に優愛ちゃんが着ていた羽織をかけてくれた。優愛ちゃんに返そうとすると「私寒くないから」って言って私にかけなおしてくれた。

「波留ちゃん、私と一緒に“逃げない”?」いたずらっぽく笑う優愛ちゃんにこの人ならついて行っても大丈夫かなって思った。ううん、この子からは優しい“気配”がしたの。ままや、ぱぱと違ってすごく心が温かくなった。


家出して初めての夜。お父さんとお母さんにはまだばれていない。

今日の寝床を探そうと公園に行ってみるとボロボロな服を着た小さな少女が私と同じ境遇なのかもしれない、もしかしたらさっき捨てられたのかもしれない。気がつけばその子に声をかけていた。

「波留ちゃん、私と一緒に逃げない?」いたずらっぽく聞くと少し戸惑いながらも頷いてくれた。

「私のことはお姉ちゃんって呼んでいいからね。」波留ちゃんにそう告げると小さい子特有の笑顔で「わかった」って答えてくれた8月14日。

2021年8月14日

ハルちゃんと出会った。推測だけどぎゃくたいされてる。接し方に気を付けないと返ってハルちゃんを傷つける。ハルちゃんは私が守る。

孤児院から逃げ出して一か月が経っていた。何回か連れ戻されたけど何回でも逃げ出してやった。

完全に迷子だ。見えるのは公園だけ。そこには私よりも小さい女の子と大きい女の子が二人で身を寄せ合っている。姉妹かな?

「いいな。家族。」そう思っているとこちらに気づいたのか大きいほうが手招きしてくれた。

「こんにちは。名前は?」急に名前を聞いてくる彼女。

「來です」と答えると少し考えてから「私は優愛。よろしくね」と握手を求められた。

「あの、気持ち悪くないんですか?」

「何が?」

「男の子みたいな名前のこと」

「別に。あなたの親がつけてくれたんでしょ?」私が一番心配していたことを3秒で払いのけてしまう彼女は一体何者なんだろうか。なにを抱えているのか。

「私も家出少女なんだ。」何かを察したように話し続ける優愛という謎の人物。

「ねぇ、來ちゃんももしかして家出少女?」私も、そして來ちゃん“も”という二回の言い回し、二人は姉妹ではないのかな?じゃあなんで一緒にいるの?

「お姉ちゃん、おはよ、」

「波留ちゃんおはよ!よく眠れた?」

「うん!」お姉ちゃんと呼ばれる優愛さんと、波留ちゃんと呼ばれる小さな女の子。姉妹?

「優愛さん、」

「よそよそしいの嫌だから優愛ちゃんでいいよ」フレンドリーに話しかけてくれる優愛ちゃん。この人なら少し話してもいいのかもしれない、私はポツポツと優愛ちゃんに私のことを話してみた。

「これが私の過去です。」

「そっか。辛かったね。」同情じゃない“辛かったね”程うれしいものはなくて、思わず泣いてしまった。それでも何も言わず背中をさすってくれた優愛ちゃんの優しさは忘れられない気がする。

來ちゃんは小さなころから孤児院で育ったということ孤児院でいじめを受けていたこと私とはまた違う辛さを感じたんだ。

「ねぇ、來ちゃん。もし逃げたいのなら私たちと一緒に逃げない?」波留ちゃんの時みたいにいたずらっぽく笑ってみた。そしたら來ちゃん笑いながら一緒に逃げてくれるって言ってくれたんだよ。小学校四年生なのに4年生の頃の私と全然違って判断力と行動力に長けているショートカットの元気っこで可愛い女の子な來ちゃん。私と似たような境遇だけど私よりも数倍酷い環境に置かれていた、伸ばされっぱなしの髪の毛の波留ちゃん。生きてきた境遇はみんな違うけどみんな同じように苦しんできたことには変わりない。

「來ちゃん、私のことは優愛姉って呼んでもいいからね。これから家族同然の存在になる予定だし。」

「わかった。」数秒間の沈黙に耐えられなかった私は思わぬことを口滑ってしまった。

「じゃあ、お姉ちゃんも、來ちゃんも、波留のことも波留でいいよ!」すると波留は私に助け舟を出してくれた。

「家族。本当?私を捨てたりしない?」來は一度捨てられてるんだ、だからそんなこと聞くんだよね。

「捨てない。」今ならそう、断言できるよ。

「じゃあさ、私のことも來とか來姉ちゃんって呼んでほしい!」來も笑った。なんだ。笑えるんだ。よかった

.「波留はなんで優愛姉のこと“お姉ちゃん”って呼ぶの?もしかして本当に姉妹?」

「違うよ‼お姉ちゃんって呼んでいいよって言われたからだよ!」3人で他愛もない話をしているとグーと誰かのお腹が鳴った。

「誰のおなかの音?」からからと笑いながら來が聞く。

「波留…」波留ちゃんのおなかが。携帯を見るともう昼の1時。朝ご飯を食べていないから余計におなかがすいていると思う。そう思った私は二人に「ここから動かないで」と伝え、近くのコンビニにおにぎりを3個買いに行った。

コンビニに行くと、二日ほどお風呂に入っていないような、少し薄汚れた女の子がコンビニの前に一人きりで立ち尽くしていた。思わず声をかけてしまったんだ「君、名前は?」って。

私は今、こんな薄汚れた服装でコンビニに入っていいのかとコンビニの前で突っ立っていた私に少し若い、10代前半ぐらいの声が降りかかって我に返った。

「君、名前は?」少し痩せた私よりも年下に見える女の子が聞いてきた。

「奏です。」何故かこの子には何でも話せる気がした。

「奏さん、よかったら中で何か買ってきましょうか?」私より年下なのに気遣いもできる。私とは真逆だ。お母さんもこんな子だったら私を愛してくれたのかな。

「お願いします。あ、これお金。」コンクールの賞金を貯めていた私は何も悩まず、別にそのお金を奪われようと気にしない程度の金額を彼女に渡した。

「ありがとうございます、ほかの子たちの分も買わないとだから少し待っててください。」ほかの子たち?少し引っかかる。よくよく考えれば普通はこんな薄汚れた私に話しかけるわけがない。

「あの子も、家出少女?」少し待てば彼女は帰ってきた。

「そうだ、あっちの公園に行きませんか?」唐突に話しかけてきたけど断る理由なんて無かった。だから何も疑わずついて行ったんだ。

何も疑わずに付いてきてくれる奏ちゃんに少し心配になる。誘拐されないだろうか…。それとも私年下にみられてる?

「私、優愛。14歳よろしくね。」少しいい方きつかったかな。

「私、奏です!13歳です。よろしくお願いします。」13歳か、私が下に見られてもあんまり何も言えない年だ。というか、波留ちゃんと來ちゃんはアレルギーなかったかな、無難に塩おにぎり買ってきたけどお米アレルギーとかだったら大変だな。


まさかの、優愛さんは私より年上、しかも来年高校生だった。でもランドセルを背負っている姿が容易に想像できる。容姿が幼いだけではなく、身長が小さいからなのかな。

「あ、お姉ちゃん帰ってきた!」人1倍敏感なのかすぐに波留ちゃんは反応してくれた。

「ほんとだ!って、優愛姉その子誰?」そうだ、お互いを紹介させなきゃ。

「こちら、奏さん13歳。」

「奏さん、こっちは來と波留10歳と6歳」私はお互いを向き合わせて双方の名前を伝えた。

「來です!」

「波留です!」二人とも元気よく挨拶してくれてるみたいだから仲の悪さは心配しなくていいとして、ご飯食べさせないとだよね。

「奏さん、これ奏さんの。」中学生相手だと無意識にさん付けしてしまう。

「優愛さん、私のことも呼び捨てでいいよ?」

見かねたのか、奏さんから伝えてくれた。

「わかった。じゃあ奏も私のこと呼び捨てね。」交換条件みたいになってしまったが奏は快く承諾してくれた。


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