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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

毒舌令嬢は天使様の祝福を受けて友だちをつくります!

作者: 蝉空子


私、メリア・モラレスは本音を上手く伝えられない。より正確にいうならば、伝えようとした言葉が、どういうわけか誰がどう聞いても悪口にしかならないのだ。特に新しい環境に入ると、その癖が出てしまう。


原因は多分、お茶会デビューくらいに、女の子達からメリアちゃんは王子様みたいに格好いいと言われたことから発生した。小さかった私はお姫様に憧れていたけど、女の子達は聞き入れてくれず、お茶会の度に、おままごとで私に王子様の役をやらせた。そして、女の子達にちやほやされた私は男の子からは嫉妬されて嫌がらせを受けた。毒舌になってしまう理由ははっきりは分からないけど、嫌がらせへの自己防衛だったかもしれない。毒舌になってからは女の子は干渉しなくなり、男の子からの嫌がらせは無くなった。最初はそれで安心できたが、15歳になる今まで毒舌の癖が治らず成長してしまった。


そんなわけで、15歳からの貴族学園に入学して3ヶ月経つ私の周りには友達はいない。家柄目当てで親交を取ろうとする人はいるけれど。許嫁のグラジオとは入学当初は仲が良かったのに、いつの間にか距離を置かれるようになって、グラジオ相手にも毒舌を言ってしまうようになっていた。






「……メリア様、次の授業は教室移動ですわよ」


椅子に座ったままの私を遠巻きにしていた女子生徒の内の1人が、恐る恐るといった風に声をかけてくれた。みんなをまとめるのが上手いケイニー様だ。小柄でふんわりした金髪、愛嬌のある容姿をしている。


なぜ友達がいないのに、クラスメイトを把握しているのか。それは友達が欲しくて、入学してからの一週間でクラスメイトの名前を覚え、仲良くなろうとしたからだ。けれど、あまりにも自分の口が悪すぎて、みんなを傷つけてしまうと諦めた。教室移動は覚えていたけど、みんなと一緒の流れで行くのが申し訳なくて最後尾で行こうと思ってた。でも、ケイニー様にお礼を伝えないと。上手く伝えられるだろうかと思う程、鼓動が速くなってくる。息を吐いて心の準備をしてから、相手の方に椅子の向きを変える。


「そんなこと、わざわざ声をかけて言う必要がありますか?」(わざわざ私に教えて下さり、ありがとうございます)


自分が発した言葉を聞いて、慌てて違うと訂正しようとしたが、立ち上がった際にカバンが引っかり、バランスを崩してケイニー様に倒れこんでしまった。嫌われ者の私は最後尾の席を好んでおり、椅子の後ろは通路分のスペースを挟んで壁だ。つまり後ろから来た彼女を挟んで、壁にどん、と両手を付く形になった。周りの女子生徒達が、きゃあと悲鳴をあげる。ケイニー様のふんわりした金髪がふるふると震えているのが見える。怯えたウサギのようだ。それはそうだろう、罵声ととれる言葉を発した相手に、体を覆われて逃げられない形になってしまったのだから。急いで壁から手を離す。


「私のせいで怪我したなんて、そんな難癖はつけませんよね」(ごめんなさい、怪我はありませんか)


ケイニー様は顔を両手で覆って、こくこくこくと頷く。周りの女子生徒達は口を覆って、固まったまま動こうとしない。


ああ、やってしまった。これ以上何か言っても悪化するだけだ。


遠巻きにしていた女子生徒達が、壁ドンがなんとかと呟きはじめた。意味は分からなかったけど、さっきの私の行動に関係することだろうと予想はついた。女子生徒達の視線にも耐えられなくなり、カバンを持って次の教室に向かった。




今までの毒舌の積み重ねと、ケイニー様の暴行は私に決心をつけるのに十分だった。今までは環境に馴染んでくれば自然に毒舌は改善されると思っていたけど、このままじゃクラスのみんなに迷惑をかけ続けてしまう。15歳になってグラジオに頼るのは面目無いし、避けられている。それに残りの学園生活、友達がいないままなんて嫌だ。


その決心を持って、首都の中心部にある建物の1つ、白い大きな教会の前に私は立っている。


「ようこそ、おいで下さいました。モラレス嬢。先日の手紙は拝見してあります。天使様は全てをお見通しです、素晴らしい祝福をもたらしてくださるでしょう」


あの後、私は授業中に毒舌癖を治したいという旨が書かれた手紙を書いて、放課後にメイドに手紙を届けてもらった。文章にすれば本音をちゃんと書けるのだ。昨日の今日で教会に約束が出来るなんで思っていなかったから、ありがたい。丁度土曜日の学園休校日で良かった。まあ、速攻で約束できたのは家柄のお陰なんだろうな。


教会の職員さんに案内されたのはおそらく殺風景な部屋。おそらくと思ったのはロウソク以外に明かりが無く、部屋の隅までは見えないから。中央に大きな鏡とお香、そしてロウソクが一つ置いてある。促されるまま鏡の前に立つと、女子にしては高い身長、切れ長の目、亜麻色の髪を一つに結んだツンとした顔つきの少女が映る。


「さっそく、はじめましょう。天使様の祝福をモラレス嬢に」


そういうとお香に火をつける。もくもくと煙がたつ。不思議な匂いね、とお香に興味がいっていると、とん、と音がして来たドアが閉められ、一人にされてしまった。ええと、何の説明も受けていないのだけど。鏡に向き直ると、自分と同じ顔をしているが、髪も皮膚も洋服も全てが妙に白っぽくぼんやりした私が写っていた。


鏡の白い私が、私を見つめる。


「メリア・モラレス。貴女は本音を伝えたい。毒舌を吐きたくない。そうですね?」


急に言葉が聞こえてびっくりする。さらにそれが自分の口から出て来ていることにもう一度驚く。鏡の白い私は口を動かしているが、それに合わせて自分の口から言葉が出るのだ。


「え、この白い人、人の心を読むなんて気持ち悪いですわね」(天使様はお見通しなんですね。その通りです。)


上手く言えなかった。鏡の私も眉を潜めている。でも天使様は心を読めるから誠心誠意お願いしよう。


「私が直々に頭を下げにきているのですから、しっかり治してもらいますわよ」(どうか天使様、私の毒舌癖を治していただけないでしょうか。)


今度も上手く言えなかった。でも、鏡の中の白い私は必死な目で私を見ている。伝わっているみたい!


「本当、迷惑極まり無いわよね」(もうみんなに迷惑をかけたくないのです。)


今度も上手く言えないのは分かっていた。鏡の中の白い私は、嬉ししそうに目を細めている。そのまま鏡と一緒に私の口が開かれる。


「メリア・モラレス。貴女に天使の祝福を与えましょう。それもとびきりの祝福です」


天使様のお声が私の口からでてくる。


「未成年の女子の肉体を操るなんて、とんだ変態もいたものね。最上級の祝福じゃないと満足しないわよ」(天使様が話されると、天使様の力を感じて不思議な感覚です。そんな大層な祝福をいただけて、本当に嬉しいです)


鏡の白い私は、慈愛に満ちた表情をしている。自分の顔ながら、どきどきしてしまう。


「貴女には、本音を伝える時に、相手が喜ぶように言葉を紡げる祝福を与えます」


そう私の口から声が出終わると、ロウソクが燃え尽きて真っ暗になった。妙に恍惚とした気分が残っていた。





さあ、これで、みんなと普通にお話ができる。もうクラスメイトに嫌な思いはさせない。友達ができる!


私はそんな気持ちを胸に月曜日を迎えた。こんな気分の良い月曜日はいつぶりだろうか。校門前で馬車から降りて校舎に向かう。ああ、道端のシロツメグサはこんなにも可愛かったかしら。空を飛ぶカササギはこんなにも美しかったかしら。女子生徒たちはこんなにも可憐だったかしら。


ふんわりした金髪の少女を見つける。ケイニー様だ。先週のお詫びもしないと、大丈夫、私には天使様の祝福があるもの。


「ケイニー様。貴女をみて、つい話しかけずにはいられなかったのです。先週のことを覚えていますか。あれは全て私の未熟さが招いたものです。貴女に話しかけられて私は嬉しかったのです」(ケイニー様、おはようございます。先週、罵声とその後に壁に押し付けてしまい申し訳ありませんでした。そして、教室移動の時に声をかけてくれてありがとうございました。)


あれ、ちょっと違う。でも伝えたい事は概ね合っているし、感謝とお詫びを言葉にすることができた。私はその事実が嬉しくて、つい目の前にいるケイニー様を忘れて真面目な表情が崩れてしまう。ぐいっと裾を引っ張られてケイニー様を思い出すと、ケイニー様は顔を真っ赤にしている。ああ、謝っている最中に笑顔になるなんて、なんて私はなんて駄目なやつなんだ。ケイニー様を怒らせてしまった。


「私のせいで、そんな表情にさせてしまいましたね、ごめんなさい」(怒らせる気はありませんでした。重ね重ね申し訳ありません。)


ケイニー様は更に顔を真っ赤にして、校舎に向かって疾走していった。


「ツンも素敵でしたが、デレも最高ですわー!」


何かを叫んでいたようだが、何を言っているか分からなかった。


天使様の祝福の下で、ケイニー様を怒らせたのは、私の態度だ。これからは気をつけよう。そして、祝福があるのだから、もっと本音に近づく言葉を使えるはずだ。


私も校舎に向かおうと歩き出そうとして、周りに人が集まっていることに気がつく。ケイニー様とのやりとりが目立っていたようだ。視線に晒されて逃げたくなるが、逃げてしまったら今までと同じだ。よし、と自分に気合いを入れて、集まっている生徒の中にクラスメイトの女子ミーシャ様がいたため話しかける。まずは挨拶、そして貴族の女性らしい当たり障りのない話題をしよう。


「ミーシャ様はとても可憐ですね。この香水の匂いは金木犀ですか。後でその香りを、もっと私に教えていただけませんか?」(ご機嫌うるわしゅうございます。とてもよい香りの香水を使っていらっしゃいますね、金木犀でしょうか。後でその香水の事を教えてくれませんか?)


かなり上手く言えたと思う。今度は表情を崩さないように、真っ直ぐミーシャ様を見つめる。


「ああ、駄目ですわ、メリア様。みんなが見ていますから。それに抜け駆けはみんなへの裏切りになってしまいます」


ああ、そうか。私一人だけに素敵な香水の事を教えるなんて、クラスの女の子に後からどんな風に言われるか分からない。香水やドレス、アクセサリーとかの流行を教える時は複数人で話すのが貴族女性のマナーだ。それよりも先ずは私の毒舌が改善されたこと、そしてみんなと仲良くしたいことを一人一人に伝えていかないと。


私が毒舌で性格が悪いから、みんなの前で話すと相手が迷惑になるとミーシャ様が教えてくれた。みんなに迷惑にならないよう、目立たないところにいる時に一人ずつ私の思いを伝えていこう。


「そうですわね、ミーシャ様。ご忠告ありがとうございます」


そうお礼を言った後に、本音と口にした言葉が丸っ切り同じであると気づく。これなら大丈夫だ!


私は自信がついて、その日の内にクラスの女子生徒に挨拶と、今までのお詫び、そしてこれから仲良くして欲しいことを一人一人に説明した。勿論、目立たない場所にいる時にだ。みんな私が話しかけるとびっくりするが、説明した後は顔を赤く染める程歓迎してくれた。みんな最後には「メリア様と、私との関係はまだ秘密ですわ」と、みんなに話が着くまで待ってくれるようだった。本当にみんな話を聞いてくれて、優しい。小さい頃は私がお姫様役をやりたいと言っても、メリア様は王子様役だから駄目って全然話を聞いてくれなかったのに。


そうしてクラスの女子生徒全員に一人一人話ができた。ケイニー様にももう一度話すことが出来た。ケイニー様は「ファンクラブ……断罪……」と最後に呟いていたけど、周りからはもう私と話して断罪されることはないだろう。だって私はもうクラスの女子生徒みんなと友達なんだから。


最初は本音とは少し違う言い回しになってしまうことが多かったけど、段々と自分の本音を違わず言えるようになってきた。


次は男子生徒一人一人に今までのお詫びと、仲良くして欲しいことを伝えよう。一番最初に話す相手は決めている。婚約者のグラジオだ。正直、グラジオと話すのは怖い。グラジオが私と嫌いになった理由を知らなければ、私とグラジオとの距離は戻らないだろう。今までは私が周りに毒舌を振りまいても、いつも味方でいて、私が周りと馴染むのを助けてくれたのに。


放課後、グラジオを体育館裏に呼び出す。


「メリア、珍しいね、君から呼ぶなんて」


「大事な話をしたくて。まずは入学して少ししてから、グラジオにも悪口を吐くことがあったわよね。ごめんなさい」


グラジオは驚いた様子だ。ああ、私の毒舌癖が治ったことを知らないんだな。そういえば最近グラジオと話していなかった。呼び出しも手紙だったし。


「謝るのは僕の方だよ、メリア。君が本当は優しいこと、慣れるまでは本音ではないことを言ってしまうから、他の人を傷つけないようにしようと頑張っているのを知っていたのに。婚約者として君を守るべきだったのに、できなかった」


「グラジオはどうして私との距離をとったの?こんな面倒な婚約者に呆れたの?」


私は今までずっとグラジオに聞きたかった、でも怖くて聞けなかったことを尋ねる。


「呆れてない!君は凄く優しいし、純粋だって知っている。」


「私といることで誰かに嫌がらせを受けているとか?」


「いや、嫌がらせは受けていないよ」


何度質問しても、はぐらかすグラジオに段々とイライラしてきたと同時に不安になってきた。グラジオはとても優しい。言わないということは、私が傷つく内容だということだ。


「私に嫌なところがあるなら、ちゃんと言ってよ。毒舌癖じゃないならなんなの。私に嫌なところがあったから距離を置いたんでしょう? 私はそれを確認して、直したくて、怖いけどグラジオに聞いてるんだよ……」


最近は落ち込んでもそんなことは無かったのに、ほろほろと涙が落ちてきてしまっている。グラジオは、そうじゃない、そうじゃないんだと、背中をさするってくれる。懐かしいな、この感じ、小さい頃は仲間外れにされてよく泣いた私をグラジオが慰めてくれた。優しいグラジオのままだな。落ち着いてきたのと同時に私の涙は止まってきた。もう大丈夫という意味も込めて顔をあげる。ただ、きっと目は真っ赤だろうな。その顔をみて、今度はグラジオが悲しそうな顔をする。グラジオが何か言おうと口を開くが、すぐに閉じた。


何故なら、体育館裏の茂みから、木の影から、体育館の中から、果ては窓からクラスの女子生徒達が出てきたからだ。まだ距離があるけど、彼女達の気持ちが荒ぶっているのをひしひしと感じる。ケイニー様が近づいてきた。びしぃ、とグラジオを指差す。


「グラジオ様! これはどういうことですの!?」


グラジオは顔が真っ青だ。


あれ、彼女達とは仲良くなれたと思っていたのに。と思ってケイニー様を見つめると、両手を頬に当てて、私に向けてにこりと微笑む。ああ、グラジオが私に何かしたと思ってるのか、私泣いてたもんね。


ケイニー様は大きく息を吸い込んで


「ああ、でも、メリア様の泣き顔なんて、そんな、そんな」


「「「尊すぎますわーーーー!!」」」


そして、膝から崩れ落ちた。ケイニー様が負けたのかな。勝敗のつけ方が分からない。


周りにいた女子生徒も各々、尊い!尊い!と叫んでいる。これは新手の断罪方法なのかな。


グラジオは


「台無しだよ……」


と夕暮れの空を見つめていた。





ケイニー様をはじめとするクラスの女子生徒は、グラジオが追い払おうとしたが全くその場から動こうとしなかった。最終的には声は聞こえないけど、姿は見える距離で女子生徒に私とグラジオが囲まれる位置で和解した。


「本音を隠しているのは僕の方だったね。君をそんなに追い込んでいたなんて、自分のことで精一杯で気づかなかった」


「言い訳になってしまうけど、メリアに話したくなかったのはケイニー様達がメリアのことを影で私の王子様って言っていて、それを隠したかったんだ。昔それで嫌がらせを受けたりもしていたし、何より聞いたら傷つくと思ったんだ」


「距離を置いたのは、メリアが僕とだけ仲良くしているのは抜け駆けに当たるっていわれて。婚約者なんだから当然じゃないかって反論したんだけど」


「僕より自分たちの方が可愛いって。婚約者になるのはこの私だって、クラスの女子達がよく分からない理屈で喧嘩始めちゃって」


「こんな理由で喧嘩してクラスの雰囲気が悪くなったらメリアが馴染めるものも馴染めないと思ったんだ。それで距離を置いたんだ。本当にごめん」


「あと、貴族の同性同年齢なんて、お茶会とかそういうので結構顔を合わせてるから、もともとメリアの毒舌癖は知ってたみたい」


「……本当はメリアは王子様みたいにかっこいいじゃなくて、お姫様みたいに綺麗なのに」


グラジオは全て教えてくれた。最後はごにょごにょ言ってて聞き取れなかったけど。また今度聞いてみよう。今はそれどころじゃない。


周りで様子を見ているクラスの女子生徒達をぐるっと見渡して


「そんな風に思ってたんですかあ!」


「「「怒った顔も素敵です!」」」


「話を聞いてください……」


でも、グラジオもみんなも好意的な感情を抱いてくれていたことについては、ホッとした。昔と同じだけど、私には天使様の祝福がある。昔は言えなかった私の本音を伝えて、少しずつみんなと仲良くなっていこう。


グラジオは苦笑いしている。私がグラジオを見ているのに気づき、頰を掻く。


「メリアは自分の力で本音を言えるようになったんだね」


「私の力じゃないわ、天使様の力を借りたの」


そう言ってグラジオを見ると、彼は眉を下げて何か考えているようだ。そして、ちょっと確認したいんだけどと前置きをして話す。


「天使様っていうと、この近くだと中央の白い教会のところ? あそこで何人かの職員が聖職者じゃないのに違法な儀式をしていたって、昨日逮捕されたらしいよ。大丈夫だった?」


「その教会だと思うけど。天使様には会えたわよ」


「天使様に……会う?聴くじゃなくて?聖職者の人は祈りを捧げてくれた? 」


「最初にしてくれたわ、その後は自分で祈ったの」


「一緒に祈ってくれてない……?お金は請求されたの?」


「グラジオ。教会にお金を請求されるわけないじゃない、お布施を渡したわ」


その額を教えて、グラジオは額に手を当てる。


「最後の質問、祈りの場には何があったの?」


「大きな鏡とロウソクと、あと煙が沢山出て変な匂いのするお香よ」


それは自己暗示の類じゃないのかな、とグラジオは呟く。グラジオもみんなもよく分からない言葉を使うなぁ。


「メリアはやっぱり自分の力で乗り越えたんだよ。凄いね」


「だから天使様のお陰よ、話を聞いてよグラジオ」


「はいはい。でも結果的に毒舌癖が直ったんだから、感謝してもいいのかな。いや、メリアにとっては偽りでも天使様の祝福だもんな」


グラジオに手を引かれて歩き出す。と思ったら急に速度を上げられる。ケイニー様達は急に走り出した私たちを包囲出来ずに、後ろから追いかけてきた。私は小さい頃に毒舌癖がつく前に友達とやった鬼ごっこを思い出して、可笑しくなってしまった。そうだ、私はいつも王子様役だから、動きやすいブーツを履いていて、お姫様役の女の子達は追いつけなかったんだ。ふふふ、と笑ってしまう。


「追いついてごらんよ、お姫さま達!」


「メリア、それ素でやってたんだね!?」


自分が王子様役を押し付けられるのは嫌だけど、私だけがお姫様役が良いなんて思ってない。だって、私も彼女達もお姫様なのだ。

















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