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第50話 双子の暗殺者

 シド、ライオネル、アーロンへ双子の暗殺者オギュースト、オギュースティーヌが短剣マン・ゴーシュ片手に突進してくる。


 「皆!来るぞ!」


 シドが呼びかけるとライオネル、アーロンも構えの姿勢を取る。


 「突貫波(クラッシュ・ウェーブ)!」


 更にシドは目にも止まらぬ速さでカウンターの刺突を仕掛け、戦いの主導権を握ろうとするが、オギュースト、オギュースティーヌは互いの袖からワイヤーを伸ばすと繋げ、ピンと張り首を刎ね飛ばそうとしてくる。


 「!?」


 シドは間一髪で体を反らし、躱すものの仰向けに転んでしまい、オギュースト、オギュースティーヌに突破されてしまう。


 「ライオネル!アーロン!行ったぞ!」


 双子の暗殺者はワイヤーをしまうとまずオギューストがライオネルに斬りかかった。


 「何の!」


 ライオネルはそれを防ぐもそこへアーロンに襲いかかろうとしていたオギュースティーヌが袖を向けるとワイヤーを放ってきた。


 「ライオネル!避けろ!」


 アーロンのつんざくような叫びにライオネルは後ろを確認する暇もないと感じ、咄嗟に体を横にずらすことでワイヤーを躱した。


 躱されたワイヤーは壁に突き刺さった。


 「ハッ!甘えんだよ!」


 ライオネルは自慢の怪力でオギューストを弾き飛ばすと吐き捨てるように笑った。


 「いや!まだだライオネル!」


 アーロンの警告とともにワイヤーが巻かれ、オギュースティーヌが一気に距離を詰めてくる。


 アーロンはその背後から浮遊する短剣を放ち、串刺しにしようとするもオギュースティーヌはそれを振り返ることもなく叩き落とした。そして、そのままライオネルに刺突を繰り出す。


 「喰らえや!」


 ライオネルは振り返ると同時にオギュースティーヌの攻撃を受け止めるがその隙を突き、オギューストが丸裸の背後から襲いかかってくる。


 「させるか!」


 そこへシドが魔剣によって強化された素早い動きで斬りかかり、その不意打ちを防ぐ。


 「チッ……」


 「兄さん一度下がります!」


 オギュースト、オギュースティーヌはその場から跳躍すると3人から離れた場所に並び立った。


 「2人とも無事だな!」


 「ああ、何とかな」


 「始まって早々怪我とかダサい真似はしねえぜ」


 シドの呼びかけにライオネル、アーロンが応えると3人も集まった。


 「不意打ちからの連携攻撃とは……さすがは兄妹と言うべきか」


 「なら、こっちも連携でいくぜ!鍛錬の成果を見せつけてやるぞ!」


 「目には目を。連携には連携を、だな、」


 アーロンが下り、シドとライオネルが前へ出るのいう陣形(フォーメーション)の形を取った。


 ――しかし、何だ?この違和感は……


 シドは構えを取りつつも先程の戦闘に違和感のようなものを覚えていた。


 オギュースト、オギュースティーヌ兄妹の連携はまさに阿吽の呼吸と呼ぶに相応しく底力を出していない現段階でも着いていくのにやっとと言った状態だ。


 しかし、不自然なほど動きのシンクロ率が高過ぎる。双子だからとか修練の成果とかの一言では済ませれないほどに。


 まるでその時その時に合わせて臨機応変に示し合わせたかのようだ。


 恐らく何か秘密があるに違いない。


 それにアーロンの短剣を見ることもなく叩き落としたのも気にかかるところだ。


 「その程度の陣形(フォーメーション)で我ら兄妹の連携に打ち勝てると思っているなら片腹が痛いわ!なあ?オギュースティーヌ」


 「ええ。我らが兄妹の力、見せてやりましょう」


 オギュースティーヌの返事を聞くとオギューストはその手を取り、大きく一回転すると3人に投げつけた。


 「なっ!」


 投げられたオギュースティーヌはシド、ライオネルを突破し、後方のアーロンに斬りかかった。


 「うおっ!」


 アーロンはそれを咄嗟にガードするも反動で後ろに引き摺られ、そのまま激しい剣戟が始まった。


 アーロンは浮遊した短剣を操作しながら手にも持った短剣を振るい攻撃を仕掛けてゆく。


 短剣の浮遊操作だけでも相当な集中力が必要とされるがアーロンは地道な鍛錬の末にこの同時攻撃を会得した。


 並の相手なら一瞬で決着が着いてしまうがオギュースティーヌは一筋縄ではいかなかった。


 浮遊剣との挟み撃ちの攻撃も死角からの一撃も尽くまるで360°見透かされているかのように次々いなされていく。


 「何だコイツ!?まるでどこから攻撃が来るのか見えているみたいに……」


 その時、オギュースティーヌが首を傾け、その横を通り過ぎワイヤーがアーロンに向かって飛んできた。


 ワイヤーはシド、ライオネルと交戦しているオギューストから放たれた物でアーロンが気付いた時にはそれは眼前にまで迫っていた。


 そこへシドが神速の足で駆けつけて押し出したことでアーロンは難を逃がれ、ワイヤーは壁へ刺さった。


 「シド!助かった!」


 「いや、まだだ!」


 オギューストはワイヤーを巻き上げながらライオネルの一撃を逃がれるとオギュースティーヌと共に2人へ同時の斬撃を繰り出してきた。


 「「双斬(ツイン・スラッシュ)!」」


 放たれたクロス状の斬撃は2人に回避の(いとま)すら与えず体から血潮を迸らせた。


 「シド!アーロン!」


 両膝を着いた2人へ駆けつけようとするライオネルに双子は互いの手を取り合い、まるで独楽のように高速回転するとその勢いのまま連続で斬りつけた。


 「ぐあああっ!」


 吹き飛ばされ、床に叩きつけられたライオネルは傷の状態を確認する。


 一つ一つの傷は大したことがないもののその数は多く、下手に手傷を増やしてまえば致命傷にも繋がり得る。


 ここからは慎重に動かなければとライオネルは認識した。


 そこへ立ち上がったシドが双子が回転を止めた瞬間を狙い、素早い動きで斬りかかるも2人は言葉を交わすこともなく息の合った連携で防ぐ。


 そして、オギューストがシドの剣を上に振り上げ、ガラ空きになった胴へすかさずオギュースティーヌがマン・ゴーシュを突き出す。


 しかし、オギュースティーヌがマン・ゴーシュを突き刺さす寸前で動きを体を後ろへ反らすと目の前をアーロンの短剣が通過した。


 「これでも仕留めきれないだと!?」


 驚愕した様子のアーロンに対し、シドは何かに気付いたように目を見開いた。


 「そういうことか……」


 そう呟き、距離を取ろうとするとオギュースティーヌはワイヤーをシド目掛けて放つ。


 するとシドはそのワイヤーを避けるのではなく掴み取り、勢いよく引っ張るとオギュースティーヌを自らの元へ引き寄せ、剣で斬りつけようとする。


 「オギュースティーヌ!」


 しかし、オギュースティーヌは斬られる直前に自分の前にマン・ゴーシュを翳し、シドの剣を防いだ。


 ホッとするオギューストだったが妹に気を取られている隙に背後からライオネルの打撃を喰らい飛ばされる。


 「ぐっ……」


 「やっと一発喰らわせてやったぜ……」


 「オギュースト!」


 兄の元へ駆けつけようとするオギュースティーヌだったが袖から伸びたワイヤーをシドが掴んで離さないため、向かうことが出来ない。


 「貴様……!」


 「お前達の連携は事前に作られたものではなく、まるで直前に作られたかのように俺達の動きに対応していた。そんなことはお互いの考えが分からなければ出来ないことだ。しかし、お前達が戦闘中言葉を交わしている様子はなかった」


 「……何が言いたい?」


 「お前達はテレパシーのような能力を持っているんだろ?それで常に意思疎通が取れ、高速連携を可能としていた。お前が死角からの攻撃を避けれたのもその様子を見ていたオギューストが伝えてたからだろう」


 「ようやく理解したか。我らの異能力共鳴(レゾナンス)に。だが、それが分かったところで我々兄妹に勝てるとでも思ったか!」


 オギュースティーヌはそう叫ぶと同時にマン・ゴーシュをシドの顔面に向けて振るった。


 しかし、シドはそれを躱すと膝で腹を蹴り上げ、握ったワイヤーを振るうとオギュースティーヌを壁に叩きつけた。


 「か……は……っ!」


 「お前達兄妹を引き離せば連携は出来ないはずだ!」


 シドはオギュースティーヌがめり込んだ壁に向かって剣を縦に構えた。


 「オギュースティーヌ!」


 立ち上がったオギューストが妹に駆け寄ろうとするもその前にライオネルが立ちはだかる。


 「そう言うことなら行かせるわけには行かねえなっ!」


 ライオネルはアーロンの短剣の援護の下、連続の打撃をオギューストに繰り出す。


 「ぐああああああああああ!」


 「止めだ!」


 ライオネルが拳を大きく振りかぶる。


 それと同時にシドもオギュースティーヌに疾駆の刺突を繰り出した。


 「衝拳(ブレイク・フィスト)!」


 「突貫波(クラッシュ・ウェーブ)!」


 2人の攻撃がそれぞれの相手に炸裂した。


 そして、敵が死んだことを確認すると3人は軽く互いの拳をぶつけると気を抜くことなく次の戦場へ向かった。

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