第41話-3 休日③
その後、一同は昼食を摂るべく店を出た。
向かったのは最近、巷で人気の喫茶店だった。
今までの喫茶店とは一線を画すシオン王国由来の奇抜な料理が名物で常連客の中には貴族や有名人もいると言う。
ちなみにこの店を選んだのはマリアンヌの要望である。
「フフフフフ。こういう所、来たことがないからとても楽しみね」
マリアンヌが楽しそうに言った。
ちなみに席は前列と後列の面子で分かれて座っている。
「ええ、ここは私もよく来るのですがスフレオムライスというものがお薦めですよ」
グレイシアがそう笑うとディオンが少々驚いた様子を見せた。
「意外だな。富豪貴族であるお前がどちらかと言うと庶民向けのこの店へ来るとは」
「ずっと美食では飽きがくるからな。たまにはこういう店の味も食べたくなるものだ」
「なるほどな……」
そうしている間にウェイターが来て各々を注文してゆく。
ちなみにグレイシアは他の者がスフレオムライスのみを注文する中、それに加え、ハンバーグプレートとチョコレートパフェも頼んでいた。
「そんなに食べれるのか?」
量を不安視するディオンだったが、エデとアリスは何ら心配のない顔をしていた。
「伯爵様はいつも家ではこのくらいは食べてますわよ?」
エデの言葉にアリスも同意するように首を縦に振った。
「やはり殿方というのは食べるものなのでしょうか?」
「皆が私のようかは分かりませんが、少なくともあの5人は食べる方だと思いますよ」
グレイシアは後ろの5人に目をやると笑った。
そうこうしている間に注文した料理が届いた。
名物のスフレオムライスは鶏肉と玉ねぎと米をケチャップで炒めたものをメレンゲを泡立て、卵黄と混ぜて焼いたフワフワの卵で包んだ料理だ。ちなみに味付けはデミグラスソースである。
「美味しそう……」
その見たことのない美しいフォルムにアリスが思わず洩らす。
グレイシアはいの一番にスプーンを手に取るとオムライスに差し込んだ。
差し込んだ玉子から湯気と風味の良い匂いが漏れ出し、食欲をそそらせる。
そして、デミグラスソースかかった玉子とケチャップライスを口に運ぶ。
「……うん!」
グレイシアは静かに頷いた。口元も心なしか綻んでいるように見えた。
それに続いて女子4人もオムライスを食べる。
「……美味しい!」
マリアンヌが目を見開いた言った。
トロトロの玉子がケチャップライスをマイルドにし、そこにデミグラスソースが加わることにより、濃厚なハーモニーを奏でている。
食べたことない味であったが大変美味であった。
「……!」
「美味しいですわ!」
「うん!」
4人とも気に入ったようで満足げにオムライスを楽しみ、あっという間に完食した。
そして、グレイシアのみが食後に届いた大きなチョコレートパフェを食べているとその様子をアリスが物欲しそうに眺めていた。
「食べるか?」
そのことに気付いたグレイシアが声をかけるとアリスが調子外れな声を出した。
「へっ!?何でですか?」
「何って……見てたから食べたいのかなと」
「いえ!そういうわけではなく……甘いものが好きなのかなと……」
アリスの誤魔化しにグレイシアは首肯した。
「ああ、そうだな。特にチョコレートが好きでな、最近はアンにチョコレートを仕入れたもらったりしているぞ」
それを聞いたアリスは最近、革命軍で補給部隊がチョコレートを運んでいた光景を思い浮かべた。
「お前も食べてみるか?」
「えっ?」
「はい、あーん」
グレイシアがパフェを掬ったスプーンをアリスに口元に持ってくる。
アリスは「これって間接キス!?」などと様々な考えを頭の中で駆け巡らせたものの最終的にグレイシアに口の中に突っ込まれる形でパフェを食していた。
「どうだ?美味だろう?」
「はい……美味しいです……」
そう言ったがアリスは顔から湯気を出すほどに照れ、味覚もロクに感じれていなかった。
「あっ!ズルイです!伯爵様、私にも"あーん"して下さい!」
そこへエデが口を尖らせてグレイシアの腕に縋り付いてくる。
「お前の目的はパフェではなくそっちか……まあいいぞ。はい、あーん」
「あーん」
グレイシアはアリスと違い餌を親鳥から貰う雛のように口を開けるエデにパフェを入れる。
「美味しいです!」
その光景をアリスは絶望に満ちた表情でディオンは生気を失った表情でマリアンヌはいつもと変わらずニコニコした表情で見ていた。
………………………………………
腹を満たした一同は次の目的地であるパリシイ国立公園へ向かった。
公園と言っても子供が遊具で遊ぶようなものではなく、庭園に咲く花や噴水を楽しむ観光地ような場所だ。
「綺麗なところですね〜」
「そうでしょう?私がパリシイでも最も好きな場所の一つですわ。そもそもこの公園が作られた経緯はあの神帝レイ1世にあって……」
エデが公園の風景に魅入る様子にマリアンヌは自分のことのように喜び、一同にこの公園が出来た歴史や観光ポイントを語り始める。
グレイシアはマリアンヌの解説に耳を貸しながらも隣のディオンに声をかける。
「気付いているか?」
「無論だ。尾けられていたのは喫茶店を出たあたりか?」
2人の注意はマリアンヌの解説ではなく、背後を尾けてくる何者かに向けられていた。
「人数は5人ほどか?前より増やしたがそれでも少ないな」
「仕方あるまい。尾行というのは数が多ければ多いほどバレやすい。バレないギリギリの瀬戸際を攻めたのだろうな」
ディオンは続けて「だが、私達の目は盗まなかったがな」と揶揄するように言った。
「どうする?ここでやるか?」
「そうしたいところだが、ここは他の目も多い。やるならこの後の歌劇場でやった方がいい」
「……!随分と思い切ったことをやるんだな。だが、お前が言うからには心配要らんのだろうな」
ディオンが笑みを浮かべるとグレイシアもそれに応えるように口を三日月型に歪めた。
「あれ!?あんなものもあるんですね!」
シドが驚いたように指差す方向には最近フランソワ王国で流行り始めたシオン王国発のスポーツであるバスケットボールのコートとゴールポストがあった。
「あれって何ですか?」
どうやらアリスはバスケットボールを知らないようだ。
「あれはバスケットボールと言って分かりやすく言えばあのゴールにシュートを決めて点を競い合うスポーツだ」
グレイシアが説明しているもライオネルがこちらを向いて笑った。
「どうせなら少しやっていかね?」
「いいですわね!私もバスケットボールをしているところを見たいです!」
ライオネルの提案にマリアンヌが嬉しそうに手を合わせた。
マリアンヌが言うのならばやらない理由はない。
グレイシア達はバスケットコートに向かった。
コートにはボールが常備されているため、手ぶらでもバスケットボールを楽しめるのがいいところだ。
チームはグレイシア、ジョナサン、グレンとシドとライオネル、アーロンの3人ずつに分かれてプレーすることになった。
本来は5対5でするスポーツだが3人同士でも出来ないことはないだろう。
ちなみに男扱いのディオンだが、ルールを知らないという理由でマリアンヌ達女性陣と観戦することにした。
「よーし!やってやるぜ!」
セッターに就いたライオネルが拳を掌にぶつけた。
対するはグレイシアだがその身長差は20cmはあり、ライオネルの優位性は明白であった。
そして、双方が対峙するコートの中央でディオンがボールを投げ、試合が始まった。




