第41話-2 休日②
ディオンはドレスに着替え始めた。
着替え方は一応分かるのでグレイシアのヘルプを求めるような必要はなかった。
ちなみにこの部屋にはカーテンがないためグレイシアはディオンに背を向けている。
「……出来たぞ」
ディオンが背後から声をかけてくる。その声には先程の「惚れるなよ?」の勢いは何処へやら緊張の色が浮かんでいた。
グレイシアが振り返るとそこには白色のフリルをあしらったドレスを纏ったディオンがこちらを恥ずかしげに見ていた。
「……どうだ?」
「似合ってると思う」
グレイシアの率直な感想にディオンは恥ずかしそうに目を伏せながらも口元を綻ばせた。
「少しジッとしてくれるか?」
そう言うとグレイシアはおもむろにディオンに近づくと顔に向かって手を伸ばした。
「ちょ……何をし……!」
グレイシアの手はディオンの髪へ触れると器用に編み始めた。
そして、グレイシアの手によってディオンはマリアンヌそっくりの淑女らしい髪型に変身した。
「どうだ?これでよりよくなったんじゃないか?」
仕上げにグレイシアはディオンの首に手を回し、ネックレスを着けると肩を掴み、鏡に向き直らせた。
「これが……私なのか?」
ディオンは瞬きをし、感極まったように洩らした。
自分でそう言ってしまうほどにディオンの姿は美しかった。
「いいじゃないか。今のお前はマリアンヌ様に負けなくらい綺麗だ」
そう言われてディオンは自分とグレイシアがとても近い距離にいることに気付いた。
そのことに加え、今さっきグレイシアに言われた言葉を心中で反芻するとはにかんた表情を一瞬見せたものの「ありがとう」と淡い笑みを浮かべた。
「持ってきたドレスはまだある。他も着てみるか?」
「……ああ!」
………………………………………
そうしてディオンの試着が続いた。
試着している間のディオンはとても生き生きとしていてグレイシアも何故だか嬉しい気分になった。
そして、持ってきたドレスを全て着終わると2人は隠し試着室を出た。
「楽しめたか?」
「勿論だ」
ディオンは満足そうに頷いた。
そこへ普通の試着室からリサ、シルヴァーナ、エデ、マリアンヌが揃って出てきた。
どうやら彼女達もかなり長い時間、試着に興じていたようだ。
「あら、ごめんなさい。随分と待たせてしまったかしら?」
「いえ、大丈夫ですよ」
マリアンヌの詫びにディオンは柔らかな雰囲気で言った。
その様子と腕に持たれているドレスにマリアンヌは何かを察したのか嬉しそうに微笑んだ。
「あら?どうしてディオン様はドレスを持っていらっしゃるのですか?」
しかし、事情を知らない者からすれば当然の疑問だ。
エデは首を傾げた。
「それは俺とディオンでお前達に良さげなドレスを探していたからだよ」
それに対し、グレイシアは慌てるなことなく咄嗟の嘘で誤魔化すとディオンもそれに合わせて頷いた。
「あら、そうでしたの!ありがとうございます伯爵様!」
エデはそれに対し、疑うことなく嬉しそうな様子を見せた。
「ああ、それはそうと3人はお気に入りの服を見つけれたのか?」
「はい!」
アリスが嬉しそうに微笑んだ。
そこへ店の扉が開けられる音が店内に響くと出かけていた男子5人が満足げに帰ってきた。
「帰ってきたぜ〜。そっちはどうなんだ〜?」
「お前達丁度いいタイミングで帰ってきたな。こちらも終わったところだ。ところで何も持ってないように見えるが買い物はしなかったのか?」
「いや、ジョナサンの異空間に閉まってあるだけでちゃんと買ってきたぜ」
ライオネルの言葉にグレイシアは合点がいき、頷いた。
何を買ったかは後に聞くとしよう。
「じゃあ、こちらも買おうか」
グレイシアがそう言うと女子勢も服をレジに持っていき、会計を済ませた。
ディオンもマリアンヌの物という名目でドレスを一着購入した。
購入したのは試着したドレスの中でも特にグレイシアが褒めていた青色のドレスだった。




