第36話-1 彼岸の死神vs光の御子①
「オレの……ハー……レム……ぎゃああああああああ!」
ぼろぼろのスカルミリオーネに剣が突き刺され、悲鳴とともに消失する。
「気持ち悪い奴め……」
メーヴがスカルミリオーネの倒れていた場所をヒールでジリジリと踏みつける。
「ねえ!やつらはどこへ行ったの!?」
悪の爪12体を全滅させたメーヴが女騎士にヒステリックに訊いた。
「はい……ただ今、追跡していますが恐らくはもう……」
二回りも小柄な相手に慄きながら言う女騎士。
それに対し、メーヴは手をブンブン振り、地団駄を踏んだ。
「何でなのよー!大体話を聞くなんて言ったあなたたちのせいじゃないの!?」
メーヴは青薔薇の面々に詰め寄り、上目遣いで睨み付ける。
「そう言うアンタだってあいつの話に聞き入ってたじゃねえか!」
言い返したのは青薔薇の騎士第七席ラモラック・ミティリーニ。
武勇に優れ実力は第四席であるトリスタンに次ぐが、諍いを起こし易い性格でかつては青薔薇内でも仲の悪い面子が多かった問題児である。
「なんですって!」
高低差のある目線で火花を散らす2人にラモラックには弟であり、従騎士を務めているトーとアグロヴァルが、メーヴを女騎士達が必死に止めている。
そんな中、ケイとベディヴィアは先程の彼岸の死神の話を思い出していた。
「ケイさん、ベディヴィア君」
そこへ2人へトリスタンが声をかける。
「先程の話ですが……あまり考えない方がよろしいかと」
「そうね。奴の戯い言の可能性も否定出来ないしね」
ケイの言葉にベディヴィアも神妙な面持ちで頷いた。
「あと、この件には緘口令出します。変な噂が立ってはいけませんから」
その言葉に2人は頷くも肝心のトリスタンはまるで疑る自分に言い聞かせるように言っていた。
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一方の革命軍は見事逃げおおせ、海軍部隊の船に乗っていた。
そして、船上で任務を終えたグレイシアは1人物憂げな表情で波風に当たっていた。
その様子をセタンタと遊撃部隊隊員達は離れた場所から見ていた。
「セタンタさん……あの話本当なんでしょうか……?」
「う〜ん……どうだろうね?グレイシアくん、自分のこと話さないからなんとも言えないけど……あまり詮索しない方がいいかもね」
心配げに尋ねるアリスにセタンタは皆にも呼びかけるように言った。
「例えあれが嘘だったとしてもあいつの王国を滅ぼしたいって気持ちはホントだろ。なら、何の心配も要らねえよ」
ライオネルの言葉に皆、納得したような様子を見せるもその根底にはそこはかとなくセタンタの前で格好付けたいという下心を遊撃部隊の6人は感じ取っていた。
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リベリオン島に到着してもグレイシアはどこか心あらずと言った様子だった。
どうしたというのだろうか?
あの話が本当だとしたらアレクサンダーとの辛い別れを思い出してしまったということが考えられるだろうが真偽は本人にしか分からない。
しかし、あまり良い状態ではないことは確かである。
その様子を見かねたセタンタはグレイシアの前へ立ちはだかった。
「どうした?」
しかしそこは彼岸の死神。惚けていても目の前の障害物にはすぐ気付いた。
「どうしたも何もグレイシアくん、帰ってきてから様子がおかしいでしょ」
「……そうか?」
どうやら自覚がなかったらしい。
セタンタは呆れたように溜息をついた。
「グレイシアくん、一回私と戦って」
「……何でそうなる?」
今度はグレイシアが呆れたように言った。
「グレイシアくんの気を晴らすため!あと、私も不完全燃焼だったし」
要するにセタンタも戦いたいだけではないのか?
7人の頭にそんな考えが浮かんだ。
「……まあいいだろう。やってやる」
そう言うとグレイシアはセタンタの横を通り過ぎ、草原へ向かっていった。
「あ!ちょっと待ってよグレイシアくーん!」
そんなグレイシアの背中をセタンタは追いかけた。
そして、遊撃部隊の7人も「どうしてこうなったのだろう?」という戸惑いと再度隊長同士の戦いを見れることに胸を躍らせていた。




